Godzilla

Godzilla

キャスト: 渡辺謙、アーロン・テイラー=ジョンソン他
監督: ギャレス・エドワーズ
上映時間: 123分
Rating: PG-13(MPAA)
公開日:2014年5月16日全国ロードショー
配給会社: Warner Bros. Pictures

ゴジラ誕生の起源

ゴジラ誕生の起源
©Warner Bros. Pictures

 ゴジラがアメリカを襲っている!公開週末に9300万ドルの興行収入をあげ、アメリカのボックス・オフィスは大揺れに揺れた。9000万ドル以上の週末興行収入をあげたのは2014年前半ではこれが2作目。トップは『キャプテン・アメリカ:ウィンター・ソルジャー』で9500万ドル(現在の総興行収入は7億300万ドル)。

 日本生まれのゴジラは世界中のモンスターファンの間では既に王者の風格を持っていたが、今回の大ヒットはモンスター好きの枠を乗り越えて、ブロックバスターの最強アメコミ映画に迫っている。1998年のハリウッド版『GODZILLAゴジラ』(『インデペンダデス・デイ』のローランド・エメリッヒ監督)はあまり暴れずに大人しく消えていってしまったので、今回もハリウッドはゴジラの真髄をわかっているのか?という不安が囁かれていた。

 今回のギャレス・エドワーズ監督は古くからのゴジラファンとCGI満載のモンスター映画やSFアクション娯楽作品を好む若い世代の両方を獲得し、思いもよらないパワーで映画ファンを魅了した。この『ゴジラ』が観る人の心を掴んだ最大の理由は、ゴジラ誕生の起源、つまり原爆投下という残酷な人間の選択の結果として生まれたモンスターの背景をうまく織り込んだからだろう。エドワーズ監督は「ゴジラのオリジナルが作られた1954年はまだ敗戦国日本が核を公に批判することが許されていなかったから、ゴジラという怪物を誕生させて反核、反戦のテーマを織り込んだと聞いている。1954年の『ゴジラ』は映画史上初の本格的反核映画だったことは事実」と言う。

オリジナルの深いテーマを忘れていない

オリジナルの深いテーマを忘れていない
©Warner Bros. Pictures

 イギリス出身で38歳のエドワーズ監督は娯楽大作未経験の新人で、過去に手がけた長編映画は『モンスターズ/地球外生命体』(2010)という低予算怪獣映画を1本しか作っていない。ゴジラが主演なら監督は誰でもいいと言う人もいるが、怪獣オタクのエドワーズ監督ならではの成功だと思う。子供の頃からゴジラに魅せられていて、「僕とゴジラとの関係はあくまでもプラトニックで友達付き合いを越えてないが(笑)、ゴジラへの愛の深さは並大抵ではなかった」という言葉からも監督の情熱がうかがえる。

 科学者芹沢博士役の渡辺謙も「ゴジラ映画出演のオファーが来た時は『えっ』と言う感じがした。子供の頃観た『ゴジラ』はただの怪獣映画と思ったが、大人になってから観た時はこの映画が持っている反核、反戦のテーマを理解し、そういう映画だったのかとその深さに感動した。だから今回の『ゴジラ』が、ただの怪獣映画ではなく、オリジナルの深いテーマを忘れていないと言うことがエドワーズ監督との話合いでわかった時に『それなら』と出演を決めた」と言う。そして「ギャレス(エドワーズ監督)の才能はクリストファー・ノーラン監督に匹敵する」と続ける。

 エドワーズ監督は「ゴジラの映画というとオファーを受けた俳優は皆、『えっ?それはちょっと』と一歩後退する感じだった(笑)。馬鹿らしい怪獣映画だろうと思われるからだ。僕はこの映画をただの怪獣映画としてキャスティングする気はなかった。テロリストやハリケーンの映画のように人間ドラマが絡むストーリーとしてキャスティングをした」と言う。「ケン(渡辺謙)の役は1954年のオリジナルとの繋がりを示唆してるもので、あの時は芹沢大助博士(今回は芹沢イシロー)として登場してる。ケンの素晴らしさは彼の表情が台詞なしでも色々なことを告げる力を持っていることだ」と言う。

 他には主役のアメリカ軍人のフォード・ブローディ大佐にイギリス出身のアーロン・テイラー=ジョンソン(『アンナ・カレーニナ』)、彼の父親にブライアン・クランストン(TVシリーズ『ブレイキング・バッド』)と話題の演技派アクターが出演している。

 『ゴジラ』については核の破壊力を避けては語れない。背景に登場する原発崩壊のイメージは福島の大惨事を思い起こす。エドワーズ監督は「それについては東宝とも随分と話し合った。ゴジラを主演にして核を登場させない訳にはいかない。福島の大惨事が起こった時は『ゴジラ』のプリプロダクションも既に進んでいた。背景に日本を登場させるのを止めようか?とか、ストーリーを変える話さえ出た。東宝側は『あくまでも品格のある、核の恐ろしさが伝わるシーンにしてほしい』とアドバイスしてくれた」と言う。

 渡辺謙は「確かに福島の大惨事を思い起こさせる部分がある。これは核の恐ろしさを忘れてはならないという警告として観てほしい。原発賛成、反対と両サイドの意見があるが、人間の未来や地球の未来を考えたら何をすべきかは明白だと思う。役者としては政治的なことを口で語るより、何らかのメッセージを持った映画に出演することで僕が何を伝えたいかわかってもらえると思う」と語っている。

 映画のスタートの背景はフィリピン。「当初はシベリアの凍てついた大自然でスタートしようと思っていたんだけど『マン・オブ・スティール』で同じような背景を使うと聞いて即刻フィリピンに変えたんだ。でも撮影はハワイだった(笑)」と監督が教えてくれる。そこで恐竜の痕跡が見られる大洞窟が登場するが、そのセットの建設費は何と90万ドル。監督は「『モンスターズ』の総製作費が50万ドル。私財も投じ、四苦八苦してかき集めた資金で作った。初めてセットを目の前にした時は90万ドルのセットの中で映画を作っているのだ、というショックから立ち直るのに時間がかかった」と言う。ちなみに『ゴジラ』の製作費は1億6000万ドル。エドワーズ監督の幸運を物語っている。早くも『ゴジラ』がシリーズ化(全3部作)される可能性が囁かれている。


中島由紀子

Yukiko Nakajima■ロサンゼルス在住の映画ジャーナリスト。ハリウッド外国人記者クラブのメンバーとして、20年以上に渡り、世界中でスターの取材を続けている。ゴールデン・グローブ賞への投票権を持つ、3人の日本人のうちの1人


2014年06月号掲載