来シーズンの楽しみ

来シーズンの楽しみ

エンジェルスは球場経営やファンに対するコミュニティサービスにも積極的なので、さらに地元の皆さんに盛り上げてほしいと思います

©Michinari Takagi

 実は来シーズンの春キャンプからエンジェルスの臨時コーチとしてお手伝いすることになりました。毎年声を掛けてもらっていながらも、息子のことで忙しかったので断っていましたが、来年には息子も大学1年生になり少し時間に余裕もできますので、このタイミングでお受けすることにしました。今までもエンジェルス主催のゴルフトーナメントに参加させていただいたりして、良い関係を築いているので、今からとても楽しみです。

 今回は今季のエンジェルスについて、特に中継ぎ投手をポイントにしながら解説したいと思います。

今季は打線上位のチーム

 現在のエンジェルスは打線に重きを置いたチーム編成になっていると思います。2012年にカージナルスから移籍してきたアルバート・プホルズはメジャーリーグ史上最高打者の1人だと賞賛されていますが、移籍後1〜2年は調整に苦しみましたね。彼の場合はナショナル・リーグからの移籍でしたから、最初は対戦したことのないピッチャーばかりで苦戦を強いられたと思います。ナ・リーグ在籍時もインターリーグの試合があったとはいえ、たった年数回の試合のためにリサーチをすることはなかったのでしょう。逆に投手陣からするとプホルズがどれだけすごい選手かを知っているわけですから、こちらは必死で研究して勝負してきますよね。

 同じように、テキサス・レンジャーズから2013年に移籍してきたジョシュ・ハミルトンも最初の1年目は苦しみました。昨年はプホルズとハミルトンの2人が打線の核となってほしいと期待されていたのですが、残念ながらうまく噛み合いませんでしたよね。今年、ハミルトンは左手の親指を負傷して、4月から故障者リスト入りしていましたが、ようやく復帰を果たし、4番に返り咲きました。プホルズの打率は3割に近く、ハミルトンは3割強なのですから強打線が期待できます。そして一番注目されていて、今最も人気の高い選手はマイク・トラウトじゃないでしょうか。この選手は先ほど述べた2選手と違って、2009年のドラフト会議でエンジェルスから1巡目に指名を受けて入団した生え抜きの選手です。2012年のシーズン途中からメジャーに昇格し、月間MVPを何度も獲得、リーグ史上初となる月間MVPと月間新人MVPの同時受賞。また、その年にアメリカン・リーグの新人王に選ばれるなど、その活躍には目を見張るものがあります。まだ22歳の若手ですから今後が大いに楽しみな選手ですね。

気になる投手陣

 守備陣、打陣はあまり心配していないのですが、問題は投手陣です。基本的に先発は揃っていると思いますが、クローザーを含めて中継ぎ投手が毎年全体的に良くないですね。今季は打線が好調なのは好材料ですが、接戦の際には、投手陣、特に中継ぎ投手の働きが重要な役割になってきます。やはり最後は投手陣がしっかりと締めなければなりません。

 メジャーリーグでは、先発投手が6〜7回まで投げて、その後1〜2人中継ぎ投手が継いで、最後にクローザーが締めるパターンが主流です。エンジェルスはまだ各投手の調子を見ながら起用の仕方を見定めているのでしょう。先発にはC・J・ウィルソンやジェレド・ウィーバー、ギャレット・リチャーズという好投手がいますし、クローザーとしても、まだ核とは言わないまでも、アーネスト・フリーリ投手が台頭してきていますから、一番の問題は試合の流れを左右する中継ぎ投手陣が不安定なことでしょう。

中継ぎ投手がポイント

 中継ぎ投手は華やかな先発投手やクローザーなどと違って、活躍してもあまり記録に残りません。先発投手なら○○勝、クローザーなら○○セーブという記録がカウントされますが、中継ぎ投手には残念ながらそういった記録はありませんよね。先発投手と違って、中5日というスケジュールもなく、連投は当たり前、回をまたいでの投球や、前の投手が残した走者を引き継いでの登板など決して簡単な役割ではありません。強靭な肉体に加え、試合を読む力、メンタル面での切り替えと強さも問われる重要なポジションです。

 今のエンジェルスには、中継ぎの核となる投手が見当たらない気がします。誰か1人でもベテランのいい選手を連れて来ると投手陣全体が引き締まってチームの雰囲気も良い意味で変わってくるのではないでしょうか。新人を育てることはもちろん大切ですが、都合よく性急に育ってくれるわけではありません。多少のお金を持ち出してでも任せられる中継ぎ投手を連れてきて投手陣を補強した方がいいのではないでしょうか。僕がエンジェルスからマリナーズに移籍した年に、K―ROD(フランシスコ・ロドリゲス投手)がメジャーリーグに昇格して好投したお蔭で、彼が軸となってその時のエンジェルスの中継ぎはとても安定していました。彼のようにマイナーリーグから誰かいい投手が上がってくればいいのですが、内情はなかなか難しいようです。常時90マイル台の速球を投げるケビン・ジェプセン投手がその候補者だと僕は見ているのですが、メンタル面で弱いところがあるのか、肝心な場面で打たれてしまったりするので、その辺の強化が目下の課題でしょう。僕が在籍時はUCLAからメンタルトレーナーを招集したりしていましたから、もっとメンタル強化に力を入れて取り組んでもよいかもしれません。

 また、マイク・ソーシア監督は中継ぎをしっかり育てたいタイプだと思いますので、打線ばかりにお金を使うのではなく、投手陣、特に中継ぎにもう少し投資してほしいですね。僕が入団したばかりの2002年のマリナーズには佐々木主浩選手、アーサー・ローズ選手、ジェフ・ネルソン選手そして僕という中継ぎ投手が揃っていました。この4人で先発2人分くらいの年俸を貰っていましたから、チームとしては、年俸が抑えられがちな中継ぎ投手に対して、相当な額を費やしていたと思います。だからこそ安定した強さがありましたし、しっかりとしたセットアップができていたと思います。

後半戦の見所

 後は捕手陣が出揃うといいですね。僕が注目しているのは、地元ハンティントン・ビーチ高校時代から強肩の捕手として活躍していたハンク・コンガー。彼は26歳と若手ですが、すごく素直で良い評判を耳にします。今はまだ控えの捕手ですが、レギュラーのクリス・イアンネタ捕手と交代で出場してもっと経験を積ませてはどうかと思います。また、サインもベンチが出すのではなく、自分たちで考えさせるようにクセを付けていくことも必要なのかもしれません。負け試合を作れというわけではないのですが、バッテリーに任せてみて、それで負けたとしたら、それはそれでいい勉強として今後に繋がると思うんですよ。

 先発投手のウィーバー、リチャーズ両選手もこれからきっと調子が上がってくるでしょうし、コンスタントに97マイル(156キロ)くらいの速い球を投げますから、彼らが後半戦どれくらい伸びるのかにも注目です。また、トラウト、プホルズ、ハミルトンの猛打線も引き続き楽しみですね。

 6月半ばの時点で、アメリカン・リーグ西地区で2位、1位のオークランド・アスレチックスとは5ゲーム差なのでいい調子だと思います。勝率は5割を超えていますし、現時点ではワールドカードのトップですからね。西地区では顔ぶれだけでいうとアスレチックスにまったく劣っておらず、エンジェルスが当然優位だと思いますので、このまま突っ走ってリーグ優勝を目指してほしいです。ぜひ皆さんとエンジェルス球場でお会いしましょう!

エンジェルス注目の選手と前半戦の成績表 1

エンジェルス注目の選手と前半戦の成績表 1
Photo: ©Courtesy of Angels Baseball

(左から)
C.J. Wilson(33歳)
投手/背番号 33
■昨年は自己最高の17勝をマーク。安定した投球で現在7勝

Garrett Richards(26歳)
投手/背番号 43
■速球とスライダーを組み合わせた投球スタイル。現在7勝

Jered Weaver(31歳)
投手/背番号 36
■MLB屈指のフライボールピッチャー。防御率3.47

Kevin Jepsen(29歳)
投手/背番号 40
■90マイル台の速球が武器だが、コントロールに課題が残る

エンジェルス注目の選手と前半戦の成績表 2

エンジェルス注目の選手と前半戦の成績表 2
Photo: ©Courtesy of Angels Baseball

(左から)
Albert Pujols(34歳)
内野手/背番号 5
■打撃面で長年にわたって活躍している。打率.255

Mike Trout(22歳)
外野手/背番号 27
■走攻守すべてに優れたルーキー。打率.306

Josh Hamilton(33歳)
外野手/背番号 32
■高校時代から全米で名の知れたエリート選手。打率.317

Hank Conger(26歳)
捕手/背番号 16
■2006年に入団。昨年より2番手捕手に昇格した

チーム順位・成績
●順位2位(アメリカン・ リーグ西地区)
●打率.258(5位) ●本塁打数79(5位)
●打点333(3位) ●防御率3.83(5位)
●勝利数41(3位) ●セーブ数16(10位)
※2014年6月23日現在

長谷川滋利/Shigetoshi Hasegawa

長谷川滋利/Shigetoshi Hasegawa

Shigetoshi Hasegawa■1990年のドラフトでオリックス・ブルーウェーブの1位指名を受け入団。プロ1年目の91年に12勝し最優秀新人賞を獲得。95年には12勝、防御率2.89の好成績を残し、オールスターゲームにも出場。97年1月、アナハイム・エンジェルスに入団、02年1月、シアトル・マリナーズへ移籍。03年はクローザーに起用され、63試合に登板し2勝16セーブ、防御率1.48。オールスターゲームにも出場した。06年1月、引退。現在は野球解説のかたわら、講演や執筆活動、自身のウェブサイト(www.sportskaisetsu.com)にコラムを展開中


●野球専用トレーニング施設
PTC Mazda(トラベルチーム)MAZDA社がスポンサーする18歳以下のトラベルチームを運営中
E-mail: PTCbaseball@msn.com

長谷川滋利さんの公式ウェブサイト: www.SportsKaisetsu.com
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長谷川滋利のマネーピッチ|投手の投球スタイルについて〜vol. 17 〜へ


2014年7月号掲載