アメリカにおけるエンターテインメントについて

 皆さん、夏休みはいかがでしたか?きっと色々な場所に出掛けて楽しい思い出を作られたのではないでしょうか?私も野外コンサートなどに息子と出掛けて音楽を満喫してきました。今回は今までと志向を変えて、アメリカにおけるエンターテインメントについてお話ししたいと思います。

 コンサートや音楽フェスティバルに行くとアーティスト1人が会場にいる数万人くらいの観客を魅了していますよね。野球は基本1チーム9人の編成で合計18人でプレイする競技ですが、そのメンツで球場にいる3〜5万人の観客を魅了しなくてはなりません。そこにいつも共通点を感じ、観客を熱狂させることを野球でも実践したいと常に考えていました。

 僕からすると野球はコンサートと同様にエンターテインメントの分野に数えられると思っています。野球の場合は脚本があったり実際のプレイを演出することはできませんが、ファン(観客)あってこそのチーム、選手だと考えると、大事になってくるのがファンサービスだと思うんです。僕は現役時代にはファンサービスを率先してやってきました。リップサービスもそのひとつで僕のエンジェルスやマリナーズ時代の入団会見を覚えてくれている人もいるかと思います。テレビカメラを前にしてもインタビュアーに気の利いたジョークを交わしてみたり、野球ボールにサインをする時にも冗談を言ってファンを笑わせたりして。これらも応援してくれるファンへのサービスの一環だと当然思っていました。その頃から、MLBのプレーヤーでありながらパフォーマーでもあると自負していました。

音楽フェスの素晴らしさ

音楽フェスの素晴らしさ

活動を休止していたが、2013年に復活したフォール・アウト・ボーイ(左)。パラモア(右)は2008年、グラミー賞最優秀新人賞にノミネートされた。共に若者に絶大な人気を誇る


 日本に住んでいた当時から実はハードロックが好きで、野球でも自主トレの時や、日頃から空いた時間があれば好んで聴いていました。ハードロックを聴いているとやる気や士気が高まるので比較的時間がある今よりも現役時代の方がむしろ音楽を聴いたり、積極的にコンサートに行ったりして気分を盛り上げていましたね。

 8月にロックバンドのフォール・アウト・ボーイとパラモアのコンサートに行きました。人気が高いバンドだったので満員のファンで熱気に溢れていました。通常ロック・フェスティバルなんかに行くと、お昼の3時くらいから始まって夜の11時過ぎまでぶっ通しなんですね。前半部分はあまり売れていないバンドから演奏するので、それを観ながら飲んだり食べたりしてピクニック気分を味わうんです。前座で演奏するバンドの中に好みのバンドを見つけたりすると、ご機嫌になったりして案外エンジョイできるんですよ。まだあまり売れていないからこそ目の前で見ることができるし、サイン会で握手ができたりもしてね。

 また、自分好みの音楽を選曲してくれる「Rhapsody」というオンラインラジオがあるのですが、そこで現在流行っているアクティブロックのトップ50を定期的にダウンロードして全曲聴くようにしています。ここにランクインしてくるような、まだ知られていないロックバンドが前座で登場したりするとテンションが一気に上がっちゃいますよね(笑)。こういった中からこれから売れるバンドを目ざとく見つけるのがフェスティバルの本当の醍醐味ですよね。そしてロックフェスのラストを飾るのはやはり今売れている新鋭バンドかアルバムを5〜6枚は発売しているようなベテランバンドが登場。会場が総立ちの中、もう若くはないので(笑)、もっぱら最初から最後まで腰を据えて聴くのが好きですね。

 ピクニック気分で飲み食いしながら野外で音楽を堪能できるなんてアメリカならではのまさに“The Entertainment”ですよね。

ラスベガスは大人の遊園地

ラスベガスは大人の遊園地

『We Will Rock You』の一コマ。2002年に初演された、イギリスのロックバンド「Queen」のヒット曲で構成されているジュークボックス・ミュージカル。ロックが禁止された近未来で、若者たちが音楽を取り戻していく様子を描いている

 ラスベガスはカジノの街ですが、シルク・ドゥ・ソレイユを始め一流のエンターテインメントなショーなどがずらりと揃っていますので、ギャンブルをしない人でも充分に楽しめます。僕自身、ギャンブルはあまりしないので、ショーを観に行くことが主な目的ですね。『O』や『KA』、『Mystère』など、何度観ても感動しますし、そこまで有名になっていないオフ・ブロードウェイ的なショーを観るのも面白いですよね。昔観てすごく印象に残っているのが『We Will Rock You』という、ロックバンド「Queen」の曲を使ったジュークボックスミュージカル。その当時は駆け出しで、特に知名度もなかったのでチケットもすんなりと入手できて、何の前情報もなく観に行ったのですが、これが私の中では結構ヒットでしたね。ラスベガスから始まった小さなミュージカルが今では全米で公演されています。

 そして、夜通し遊ぶことができるのもラスベガスの魅力のひとつ。夜にふらっと1人で大通りを歩いたり、その辺りのホテルから聞こえてくるピアノの音色や流しの歌を聴いたりできるのがいい。ラスベガスだと気軽に歩き回れる安心感がありますよね。ただ、物心のついた子供が遊ぶ場所があまりないので、そこだけが難点かな。

 昨今では、グルメを楽しむにも最適な環境ですね。以前から有名店はラスベガスにこぞって出店していましたが、近頃ではその傾向にさらに拍車がかかりました。例えばニューヨークにしかなかったステーキハウスやビバリーヒルズで人気の行列のできるカップケーキ屋が出店したり。ここに来れば世界の選りすぐりのものが何でも手に入りますよというプロモーションの仕方が実に上手く、観光客を飽きさせない。こういったところも人を引き寄せる大きな理由ですよね。

 その他、砂漠のコースでゴルフをプレイするのもおすすめです。日本から来たゲストやロサンゼルスに住んでいる人など、グリーンのコースしか回ったことのない人にはきっと新鮮かもしれません。それにしても、砂漠の夏は高温、冬は盆地のため極端に寒いラスべガスですが1年を通じて、室内外でスポーツやエンターテインメントを存分に味わえる、アメリカを象徴する街のひとつではないでしょうか。

球場をもっと活用したい

 現役時代の中盤から、僕は中継ぎ投手を務めていたので、いつ投げるかわからない。息子がまだ小さかったこともあって、家族はそんなに頻繁には観戦に来れませんでしたが、球場には選手の家族用の子供部屋があったので、嫁さんが試合を観戦している間は息子をそこで遊ばせていました。だから、突然僕の登板が回ってきても、すぐに連れて来て一緒に観ることができたんです。あれはいい環境でしたね。また、試合が終わった後にファミリーデーなどがあって、当時エンジェルスの親会社だったディズニーがキャラクターたちをわざわざ連れて来てくれて一緒に写真を撮ったりね。ほかには子供たちも一緒に草野球をしたり。そういうのって日本にはない家族サービスですよね。日本はどうしても未だに球場は野球のためにあるという固定観念が強いのでしょう。

 僕のオフィスのすぐ近くにThe Verizon Wireless Amphitheatreがあるのですが、普段はほとんど使われていないんですよ。もったいないと思いませんか?同じように球場経営についても考えます。僕が経営するなら球場を“自分の庭”のように活用してほしいと。こういったコンセプトはメジャーリーグの球場で実現するのは難しいのかもしれませんが、マイナーリーグでは、フィールドの上で寝れるスリープオーバーの日があったりと、実際に行われています。そういったイベントを毎月開催したり、砂場や遊園地を併設して、球場に野球を観に行くというより遊びに行く感覚になってもらえたら嬉しいですね。コンサートを開催したり、美味しいレストランを誘致したりして、ラスベガスと同様に、大人も子供も楽しめる環境が作り出せたら最高ですよね。

 マイナーリーグですから、コンサートも一流の人ではなくこれから活躍しそうな新人や若手を呼んで、地域と一緒に育てていくというコンセプトで運営するといいのかもしれません。ローカルバンドが育ちやすい環境を作ってあげて、その場所が彼らの登竜門みたいになるとかね。それから、後に有名になった時に、オーディエンスだった人たちが「人気が出る前から応援していたんだよ」って自慢になるような、地域に特化したイベントや土壌を作ることができたら…。球場で野球をするということにこだわらず、テニスだってサッカーだっていいんですよ。色々な分野のものに触れる機会を提供する場にしてしまえば、コミュニティの活性化、ひいては街の収益にも繋がると思いませんか。

 マイナーリーグを購入するために、まずはスポンサー探しから始めましょうか。あ、また最後はビジネスの話になってしまいました(笑)。

長谷川滋利/Shigetoshi Hasegawa

長谷川滋利/Shigetoshi Hasegawa

Shigetoshi Hasegawa■1990年のドラフトでオリックス・ブルーウェーブの1位指名を受け入団。プロ1年目の91年に12勝し最優秀新人賞を獲得。95年には12勝、防御率2.89の好成績を残し、オールスターゲームにも出場。97年1月、アナハイム・エンジェルスに入団、02年1月、シアトル・マリナーズへ移籍。03年はクローザーに起用され、63試合に登板し2勝16セーブ、防御率1.48。オールスターゲームにも出場した。06年1月、引退。現在は野球解説のかたわら、講演や執筆活動、自身のウェブサイト(www.sportskaisetsu.com)にコラムを展開中


●野球専用トレーニング施設
PTC Mazda(トラベルチーム)MAZDA社がスポンサーする18歳以下のトラベルチームを運営中
E-mail: PTCbaseball@msn.com

長谷川滋利さんの公式ウェブサイト: www.SportsKaisetsu.com
メジャーリーグ、日本のプロ野球など野球全般から、ゴルフ、ビジネス、自己啓発コラムまで盛りだくさん


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2014年9月号掲載