投手陣の活躍と来季の展望

投手陣の活躍と来季の展望

9月17日、マリナーズを5対0で破って5年振りの西地区優勝に湧くエンジェルス・スタジアム

Photo: ©Courtesy of Angels Baseball

 今号が出る頃はプレーオフ真っ盛り。エンジェルスの5年振りのプレーオフ進出は特に嬉しいニュースです。ポストシーズンが楽しみですね。

 さて、今季の日本人投手の活躍を総括してみましょう。まず、今季3年目のダルビッシュ有投手(10勝7敗/奪三振182)ですが、十分実力を発揮したと思います。中盤から故障者リスト入りしていますが、チームが優勝争いに関わっていないので、ゆっくり調整して来季に備えてほしいですね。

 マリナーズで今季2年目の岩隈久志投手(14勝9敗)も大健闘しました。エンジェルスに打たれた後遺症が残っているかもしれませんが、調子自体は悪くないですから、あまりそこだけを意識してほしくないですね。もうちょっと気楽に構えてもいいかと。メジャーリーグは優勝争いがとても重要だから、きっと責任を強く感じてしまうのでしょう。プレーオフになると相手も強いので、色々と背負い過ぎるとピッチングで試合をドミネートできないんですね。僕も現役時代はそれで失敗したので、良く理解できるのですが、プレーオフまで行くチームは勢いがある証拠なので、自分で背負うよりもチームが支えてくれるという気持ちで、戦った方がいいと僕は思います。

 レッドソックスの上原浩治投手(6勝5敗26S)と田澤純一投手(4勝3敗)も、今季は良く頑張りました。特に田澤投手は若いですから、オフではあまり今季のことを引きずらず、来季をイメージすることが大事です。彼の場合は今季セットアッパーですけど、クローザーと先発の間なので、今後はどちらかを目指してやって行く方が、長い目で見ると良い結果に繋がると思います。既に上原投手がいるポジションですから、やりにくい部分もあると思いますが、個人的にはクローザー向きだと思います。来年はセットアッパーをやりつつ、クローザーを視野に入れることが大事かもしれませんね。そういう時期に差し掛かって来ていると思いますよ。

 上原投手は年齢が上になってきたので、一日一日を大事にやっていくしかないですね。去年から好成績を残しているので、将来のことを考えるよりも今がピークだと思ってやって行く方が結果が残せると思います。

 ヤンキースの田中将大投手は、右肘靱帯の部分断裂から今期復帰できたのが良かった。9月21日のブルージェイズ戦で、75日振りの先発出場なのにいきなり13勝目(4敗)の白星を飾れたのは、時間をかけてゆっくり復帰したからでしょう。焦ってすぐに復帰しても、きっと上手く行かず厳しかったと思いますよ。今、完治して戻って来ていると思うのでちょっと安心ですね。今季中に戻っておくと来年以降のステップが全然違いますからね。

 あとは、ベテランの黒田博樹投手(11勝9敗)。この先どうするのかというところに興味がありますね。黒田投手はロサンゼルスが好きなので、最後はドジャースでやりたいのかもしれません。戻ってくる可能性もあると思います。来季ヤンキースに残ることは考えにくいけれど、どこか絶対に獲得してくれるチームはあると思います。複数年契約となると、年齢的に難しいものがありますが、黒田投手は一年更新ですからね。彼自身がもうそんなに長く続けたくないような雰囲気だから、彼にとっては一年一年判断ができていいと思います。

 しかし残念なことに今季はヤンキース然り、日本人が所属しているチームはほとんど負けてしまいましたよね。日本人選手には来季に期待して、注目して参りましょう!

イチローが今季良かったこと

 イチロー選手は何でヤンキースで補欠でもやるのかって、みんな思っていますよね。でも、彼は彼なりの考えがあってのこと。いずれにせよ、2、3年後には、どのチームに所属していても今のような状況が訪れるわけですよ。その時に力を出さなければならない。仮に数年後に移籍しても、こういうプレースタイルがあるってわかったことは、彼にとって今季の収穫でしょう。後半はずっと出場していましたし、いざという時にはチームを助ける底力はありますから重宝されていると思います。移籍すればレギュラーで活躍できるチームもまだあるし、現役をまだまだ続行できるだろうということは、今季の状況を見てわかりました。どんな状況下においても力を発揮できるのが彼の最大の強みです。本物の一流は落ち目でもスっと消えずに、何か役割を残して消えて行きますから。彼は常に強靭な肉体と精神をキープしている一流選手です。個人的には、イチロー選手を獲得したいチームなんてたくさんあると思うので、ヤンキースを出て、違うチームでレギュラーとして出場して欲しいですね、もう一度。

ビックネーム引退の年は優勝できない?

 デレク・ジーターが今季で引退ですね。彼の凄さは、メジャーリーグで、しかも同じチームで19年間活躍したことです。ヤンキースのキャプテンというよりも球界のリーダーでした。彼の素晴らしいところはスピーチ。インタビューでもしっかりと喋れますから、若い時から大人でしたね。今もその部分は全く変わりませんし、たまに会うだけの僕のこともちゃんと覚えていてくれて。頭も良くって、選手としても人間としても逸材ですよね。

 そんなジーターも40歳。なぜシーズンが始まる前から今季で最後だと発表するのか知っていますか?それは球団が決めるんですよ。ジーターのようなスター選手の引退は、球団側としては、観客動員の最高の話題として発表せずにはいられないのです。それによって観客数の大幅増員に繋がることをビジター球場もわかっているから、当人も発表を拒否できないんです。ジーターが最後だってことを最初に宣言することは、メジャーリーグ全体の利益に繋がるのです。だから何処の球場でも毎試合スタンディング・オベーションが沸き起こりますよね。エンジェルスなんてジーターに車をプレゼントしたなんて話も聞きました。記録はバリー・ボンズよりは落ちますが、人格が素晴らしい選手としてずっと名前は残ると思います。プライベートでも数々の噂はありましたけど、ずっと独身貴族を通していましたよね。だけど、結婚して離婚するよりもいいんじゃない。彼はそういった部分でも秀逸過ぎるスター選手でしたね。

プレーオフの展望LA対決の可能性は

 アメリカンリーグの残り1枠は、デトロイト・タイガースの確率が高いと思います。タイガースは実力がありますよ。打線も凄いしピッチャーもいい。デビッド・プライス投手を筆頭にエース級の投手が2、3人いるんですよ。17年振りに東地区を制したボルチモア・オリオールズも非常にパワーがあるチームだし、ベテランのバック・ショーウォルター監督の采配も的確です。

 エンジェルスに勝ってほしいけど、心配なのは後半戦から故障者が多いのと、久々のプレーオフ進出なので大舞台の場数を踏んだ選手が少ないこと。また投手陣の中で試合をドミネートできるようなピッチャーがいないのが課題ですね。CJ・ウィルソン投手が力を発揮してくれれば最強なんでしょうが、今年はそんなに調子がいいとは言えないですし、ジェレット・ウィーバー投手の状態もまだはっきりとわからない。期待の新人マット・シューメイカー投手も未知数ですし、もう一人、新人でギャレット・リチャーズ投手がいたんですけど、膝を骨折して故障者リストに入ってしまいました。

 前回はワイルドカードで出場して、そのまま勝っちゃったけど、今年はどうでしょう。実力で言ったらタイガースの方が上ですかね。オリオールズは球場が小さく、変形で凄くやりにくいため対戦相手はそれだけで不利になる。押さえ込める切り札となるピッチャーがいないのがプレーオフに先駆けてエンジェルスの気になるウィークポイントです。

 ナショナルリーグは、東地区から2年振りの優勝を飾ったワシントン・ナショナルズと西地区からドジャース、中地区はセントルイス・カージナルスが手堅いとこでしょう。ドジャースは2年連続の地区優勝を達成しましたね。ほとんどのカードが出揃った感はありますが、すべてのカードが決定するのは9月末。

 ア・リーグは西地区の優勝を決めたエンジェルスと東地区のオリオーズ。中地区で現在首位のタイガースは攻守共に揃ったチームでかなりの強豪です。今季のエンジェルスはスタートダッシュで負けが先行。怪我人も続出して早々にヤバいかなって思っていたのに、中盤から急に勝ち星を確実に重ねていったので、野球って本当にわからない。今季は09年以来5年振りに、西地区から両チームがプレーオフに進出しますから、カリフォルニアの人たちは盛り上がりますね。最終的にはドジャースとエンジェルスのLA対決になればなお最高ですよね。

長谷川滋利/Shigetoshi Hasegawa

長谷川滋利/Shigetoshi Hasegawa

Shigetoshi Hasegawa■1990年のドラフトでオリックス・ブルーウェーブの1位指名を受け入団。プロ1年目の91年に12勝し最優秀新人賞を獲得。95年には12勝、防御率2.89の好成績を残し、オールスターゲームにも出場。97年1月、アナハイム・エンジェルスに入団、02年1月、シアトル・マリナーズへ移籍。03年はクローザーに起用され、63試合に登板し2勝16セーブ、防御率1.48。オールスターゲームにも出場した。06年1月、引退。現在は野球解説のかたわら、講演や執筆活動、自身のウェブサイト(www.sportskaisetsu.com)にコラムを展開中


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2014年10月号掲載