色とりどりの教育思想

色とりどりの教育思想

イマージョン、モンテッソーリ、シュタイナー、
コンストラクティブ・ラーニング……。
個性豊かな子供たち。
色とりどりの教育思想。
選択肢と向かい合う親たち。
何がスゴイの? 何が違うの? どうしてココを選んだの?
未来を見つめる親子の想いが反映される
小学校選びについて、楽しく熱くままトーク!

ママたちの紹介 1

ママたちの紹介 1

(左)仁熊正子/Masako Nikuma
2003年渡米、05年結婚、07年長女出産/グレンデール在住
コンストラクティブ・ラーニング教育のチャーター・スクールに通うユウミちゃんの憧れは、動物のお医者さん。最近の流行は「妖怪ウォッチ」とテニス、フラダンス
★コンストラクティブ・ラーニング★
複数の教育思想のエッセンスを抽出した学び方。コンストラクティブ・ラーニングでは、暗記よりも自分で考え学んでいくことを重視する。

(右)小林真理/Mari Kobayashi
2004年渡米・結婚/07年長女、09年長男出産/カルバーシティ在住
イマ-ジョン教育のランゲージ・スクールに通うリカちゃんは、ベイビードクターを夢見て、お医者さんごっこで、レイくんはロケットのパイロットを目指して、レゴで予行練習中
★イマ-ジョン★
1960年代にカナダで始まった言語学習法。未習得の言語環境で他教科を学ぶことにより、その言語に浸りきった状態での言語習得や文化理解を促すもの。

ママたちの紹介 2

ママたちの紹介 2

(左)ミランダ頼子/Yoriko Miranda
2001年渡米、07年結婚、07年長女出産/ロサンゼルス在住
モンテッソーリ教育の小学校に通うサアヤちゃんは、お父さんの影響もあって建築方面に興味津々。ガラクタなどで何でも組み立ててしまう、アーキテクトの卵
★モンテッソーリ★
20世紀初頭に、イタリアのマリア・モンテッソーリによって考案された教育メソッド。五感を使い、暗記でなく経験に基づく学びが基本となっている。

(右)妹尾朋子/Tomoko Seo
1992年渡米、2007年結婚、08年長女、11年次女、13年長男出産/ガーデナ在住
シュタイナー教育のチャーター・スクールに通うカリナちゃんの夢は、お医者さんになること。最近は、絵を描いたり、ストーリーを書いたり、アート&クラフトに熱中
★シュタイナー★
20世紀初頭に、オーストリアの思想家ルドルフ・シュタイナーが提唱した教育メソッド。芸術を重要視し、宇宙や自然と人間の結びつきを大切にする学び。

QOLA: 小学校選びにあたり、一番、重視したことは何ですか?

QOLA: 小学校選びにあたり、一番、重視したことは何ですか?

(左)真理さんと、イマ-ジョン教育のランゲージ・スクールに通うリカちゃん、レイくん。
それぞれ、ベイビードクターとロケットのパイロットになるのが夢

(右)正子さんと、コンストラクティブ・ラーニング教育のチャーター・スクールに通うユウミちゃん。
最近のブームは、「妖怪ウォッチ」にテニス、フラダンス


真理: うちは娘も息子もイマージョン教育のランゲージ・スクールに通っています。毎日通う学校で、日本語を常に使わなくてはならない環境に身を置くことを重視しました。自分が今後、何年も子供たちの支えになることを考えた時に、彼らがこれから経験していく悩みや困難、喜び、悲しみなどを、自分の母国語で支えていきたいと思ったのです。そのために子供たちにバイリンガルでいてほしいと強く願ったことが、学校選びに繋がりましたね。私自身、ボランティアや学校行事に参加するにあたって同じような環境のお子さんが多く、日本語で手助けができるような学校の方が、より心地よく積極的に行動できると考えました。

正子: うちは、娘が今、コンストラクティブ・ラーニングという方式を取り入れたチャーター・スクールに通っています。繰り返しの暗記より、自分で考え答えを見つけ出すことによって、知識を定着させようという学び方です。小学校は子供が一番長くいる社会の入り口なので、学校選びにはものすごく力を入れて、時間もかけましたね。娘が3歳ぐらいの時から様々な学校を見学する中で、「学校によって雰囲気がこんなに違うものなんだ!」と驚きました。うちの娘は活発で自由な方なので、今のカラフルなチャーター・スクールが合っていると思います。チョイスにあたっては、既にその学校に通っている親や子供の考え方など、色々な条件を考慮。一番重視したのは、環境と友達ですね。人種がごちゃ混ぜで、食生活や情操教育にも理解がある雰囲気が、親の私たちにとっても楽なんです。

朋子: うちは娘がシュタイナー教育のチャーター・スクールに通っていますが、最初からシュタイナーと決めていました。私自身が10歳の時にアメリカに移住したのですが、当時、通っていた学校区内の学校が、自分にはまったく合わなかったんです。高校生の頃にシュタイナーのことを知って、こういう学びをしたいなぁと。でも、その頃にあったシュタイナーの学校は、場所がとても遠く、授業料も高い私立しかなかったので断念。自分に子供ができたら、シュタイナーのように自由な学びをさせる学校に行かせてあげたいと思っていました。特に、うちの娘はスロー・スターターで、ある程度までマスターすれば、そこからは早いのに、その“ある程度”に行くまでが大変。公立の学校だと毎日宿題があって、授業の流れに本人がついていけてなかったとしたら、自分が何を理解できていないかを知る前に、そこからポロポロと落ちてしまい、いつしかキャッチアップできなくなってしまう。そういうスピード感より、シュタイナーの自由さが合っているのかなと。今の学校は、アートや食育、家庭環境などを重視するところも魅力的。方針がはっきりしているという点で、もしシュタイナーの学校に入れなくても、チャーターに入れたいという気持ちがありましたね。

頼子: うちは娘がモンテッソーリ教育のプリスクールを経験し、今はそのまま同様の小学校に通っています。恐らくモンテッソーリのプリスクールに行かせるご家庭は多くても、そのまま小中学校と続ける方はそれほど多くないと思います。うちは、たまたま尊敬できる担任の先生がいらして、この先生にお世話になれるのであれば、後々、娘が何か問題を起こしたり、悩んだりした時に、良い方向に導いてくれると確信して続けることにしました。モンテッソーリでは、先生が全てを教えるのではなく、子供の興味を引き出し、子供がやってみたいと思った事柄を自分で調べ学んでいけるよう導いてくれます。私が日本で、一夜漬け暗記のような勉強の仕方で大きくなってしまったのとは反対に、娘には、もっと深い理解、自分で考える力を養ってほしいなと思いますね。

QOLA: 各メソッドのユニークなカリキュラム例は?

QOLA: 各メソッドのユニークなカリキュラム例は?

(左)朋子さんと、シュタイナー教育のチャーター・スクールに通うカリナちゃん。
絵やストーリーを生み出すアート&クラフトが大好き。夢はお医者さんになること

(右)頼子さんと、モンテッソーリ教育の小学校に通うサアヤちゃん。
建築方面に興味津々で、ガラクタなどで何でも作ってしまうというアーキテクトの卵


真理: 娘が通う日本語イマージョンでは、最初の頃は9割、日本語で加州スタンダードのカリキュラムを教えます。小学校の最後には、日本語と英語の割合が五分五分に。日本語がまったくわからない英語ネイティブの子も、入学1日目から「おはようございます」「さようなら」と言ってお辞儀することなどを教えられる。先生方は日本語の時間は徹底して日本語を使い、日本の慣習を踏襲するんです。そういう習慣を通して、「この言葉や動作はどういう意味なんだろう?」と想像する力が養われるのだと思います。他文化をメディアなどで見るだけではなく、経験して感じられれば、リスペクトできるようにもなりますよね。

正子: コンストラクティブ・ラーニング教育の一般例というよりは、娘が通う学校の特徴になりますが、ヘルシーフード・ポリシーというのがあって、給食も全部オーガニックなんです。もちろん、お弁当を持参する選択肢もあり。また、ガーデニングやクッキングのクラスがあって、学校の裏庭で育てた食材を調理して食べたりします。お蔭で娘は、日本の柿が食べられるようになりました(笑)。毎週金曜日には、全校集会が行われます。音楽の学校のピアノ伴奏に合わせて親も参加して歌を歌い、時には生徒の学習発表や、ゲストのパフォーマンスなども。親が学校行事に参加することで、一緒にコミュニュティを作り上げていて、とても家族的な雰囲気です。

朋子: シュタイナーは幼児期をすごく大切にするメソッドで、いかに安心して、親が考えた愛情のあるものを食べさせるか、ということが大事。うちの娘は毎日、曲げわっぱのお弁当箱に入れたお弁当を持っていきます。寒い日には、先生が野菜いっぱいのスープを作って待っていてくれることも。娘のキンダーのクラスでは、毎週金曜日にお誕生日会があったのですが、厳かに1本のロウソクを立てて、その子が生まれた時から今の年になるまで、どういう想い出があるかという話を、両親にしてもらうんです。子供は、いかに自分が大事にされてきたかということを知って、とても印象に残るみたい。教室にはオーブンやストーブがあり、先生がグルテンフリーでアレルギー対応のケーキを焼いてくれます。
 学びの面では、キンダーでは文字を一切書かず、1年生の今はカーブや丸だけを書いています。シュタイナーの子供たちは皆、筆記体で文字を書くのですが、カーブや丸の練習がきれいな筆記体に繋がっていくんですよね。勉強させるのではなく、導き促していく感じです。メディアフリーを推奨していて、テレビも見せません。ガチガチに禁止するものではないけれど、子供がテレビやキャラクターに感化されるという例があるので、子供が自分で判断できる年齢になるまでは、親がリードしていきたいと思っています。

頼子: モンテッソーリは縦割り教育なので、娘が通う学校では1年生から5年生までの24人で1クラスを構成しています。クラス一斉の科目別の時間割はなく、個人がそれぞれのプロジェクトに取り組みます。学びにおいては、キンダーの頃から分数の足し算や割り算などを習いますが、紙上の計算や暗記ではなく、ビーズや木でできたモンテッソーリ独自の教具を使っています。ビーズを並べたり分類することで、自分の肌で触って感じて、どれだけ重いか、大きいかなどといった物の性質を理解することを促しています。

QOLA: 特殊な教育メソッドを選ぶにあたり、悩んだり迷ったりしたことは?

真理: 私は、他にも魅力的な学校がたくさんあるなかで、言語だけを重要視して学校選びをしていいのか、子供たちの適性を考えなくていいのか、とかなり迷いました。イマージョンのような特殊な環境ではなく、小さい頃から普通の現地校に行かせた方がいいのでは、とも。でも日本人としてのアイデンティティ、や自尊心を育むにあたって、日本語や日本人、日本文化を、英語やアメリカ文化と同等にリスペクトを持って扱い、差別や偏見なく多様文化を受け入れるという校風を優先することにしました。

正子: うちの娘の学校では、例えば、海について考えるなかで、海にまつわる単語や数学に触れていくという学び方なので、スペルを集中的に学んだりすることがないんです。友達とプレイデートしている時に、その子が、たくさんの計算問題やスペリングの宿題をやっているのを見ると、不安になることも。他の子はこんなにやっているのに、うちの子は遊んでるよ、大丈夫かなと。でも学校では、低学年のうちは、正しいスペルやきれいな字を書くことよりも、書こうとする意欲が大事なんだと言われています。

朋子: うちも、日本の両親が娘のことを、「毎日ターザンみたいなことをしていて、大丈夫なのか?」と心配しています(笑)。でも泥だらけ、傷だらけになって、色々なことを発散して帰ってくる娘は、とても楽しいみたい。と同時に、子供を入れた学校だけを信じていてもダメなんだなと。親がサポートして補っていかないと、自分が最初にそのメソッドに委ねた理由と期待に反したことにもなり得ると、常に思っています。だから、日本語補習校に通わせたり右脳を発達させる七田式も取り入れています。

頼子: モンテッソーリは縦割りなので、娘と同い年のお子さんは、ほんの数人。最初は、娘が年上の子たちばかりの中に入り、お友達はできるのだろうか? 社交的にどうなのだろう?と思うこともありましたが、先輩ママたちに「社会に出たら、会社に上司や部下がいるように、色々な年齢の人がいる。この子たちは、社会の仕組みを小さい頃から身に付けられるんだ」と言われて、なるほどって。特にうちの娘は一人っ子なので、違う年齢の子たちとの関わりも貴重だと思っています。また、やりたい放題な娘の、協調性に欠ける姿を見ると、これはモンテッソーリのせいなのかな?と否定的に考えたり、普通の学校で大勢の子供たちと過ごした方が良いのかなと思うことも。でも、日々新しいことを吸収しているので、良い時も悪い時も、とにかく温かく見守っていきたいと思っています。

QOLA: チョイスがあるからこそ、迷いも出るんですよね。

QOLA: チョイスがあるからこそ、迷いも出るんですよね。

正子: 小学校をたくさん調べていた時、日本の友達から「そんなにいっぱい見たら迷わない?」と言われましたね。でも、私が日本で通っていた小学校に、越境入学している子がいたんです。わざわざバスに乗って通学する姿が印象的で、今思うと、親は教育熱心だったんだなぁと。こちらのチャーターなどは、どんなに希望しても抽選で漏れてしまうこともありますよね。うちはラッキーなことに希望する学校に入れたのですが、これ以上できないというほど、小学校選びにベストを尽くしたので、神様が「はい、ではこの学校を」と差し出してくれたのかなぁ、なんて思ったり(笑)。

真理: 自分の選択に、すごく自信を持っている人は少ないのではないでしょうか。私自身、こうやって色々なメソッドの話を聞くと、あれもいいな、これもいいなと思ったり。でも自分の決断を信じるしかないし、まだ結果が出ていないので最後までわからないですよね。学校選びは、子供の適正と、親がこういう子になってほしいというディレクションのせめぎ合いかなと。学校に行き始めてからも、子供がその学校が嫌だと言い出したとして、それを尊重するのが良いことなのか? 今は嫌でも頑張るんだっていうことを教えるいい機会と考えるか? チョイスに終わりはないですよね。

頼子: 私は、親に「お前がフラフラしちゃいけない。お前が信念を持っていないとダメだ」って言われたことを思い出します。今こうして聞いていると、学校は違えど、本当に皆さん、それぞれ子供のことを考えて、悩み、葛藤し、決断し、喜んで、そして、また悩み……。子供を通じて、色々なことを逆に体験させてもらっていることに感謝の気持ちでいっぱいになります。

朋子: 自由なアメリカだからこそ、ホームスクールから公立、私立、チャーター、越境システムなど様々なチョイスがあって、学校選びが面倒と感じる人には苦痛なバラエティかもしれません。でも私は、何かに縛られることなく、自分の道を行けるということが、とても素晴らしいことだと思います。その反面、はき違えた〝自由〟というのも存在しています。「良いエリア」とされていて、一見、学校区も素晴らしいところ…と思っていたら、実はドラッグの問題が深刻だったり。そういうことが、どのような地域でもあり得るなかで、「自分にはそんなものは必要ないし、興味もない」「自分に本当に必要なものは、フォーカスすべきものは何か?」を、しっかり自分で考えられる芯のある子になってもらいたい。そのためには、勉強も大事だけれど、やっぱり人間力がもっと大切で、それを育てる環境=学校選びも重要なんだと思います。
 うちの娘も、まだ6歳。親の選択が果たして正解だったのか、その答えはまだまだ遠くて、今はただ模索しながら、微調整しながら、どうかな? 合っているのかな?と毎日を進んでいる状況です。でも迷って悩んだからこそ、自分たちがどうしてこの学校を選んだのか、その想いをちゃんと子供に説明してあげられる。それが大事なことなのかなと思っています。

QOLAコメント

QOLAコメント

★モデレーター★ 町田雪/Yuki Machida
QOLAで「ままずプレイデート」を連載中のライター。
来年キンダー入学予定の5歳の息子、1歳の娘の母。

 ここには書ききれないほど、たくさんの貴重なトークが交わされた座談会でした。教育メソッドや学校は違えど、共通するのは、価値観や考え方の異なる日米という2つ(または、それ以上)の文化や慣習の中で育つ子供たちだからこそ、親が「良いとこ取り」のバランスで導いていけたら、という想い。他人へのリスペクトを大切にしながら、自分らしい道を歩いてほしいという気持ち。子供たちを信じて、これからも一緒に悩み迷い、寄り道していきましょうね!






撮影: Gene Shibuya
会場協力: Taka Hair Salon ウエストウッド店
取材・文 = 町田雪

2014年11月号掲載