メンタルトレーニングの大切さ

メンタルトレーニングの大切さ

ずらりと並ぶメンタル関連本は何十回も読み込んだものばかり

 今年のスーパーボールではデンバー・ブロンコスとシアトル・シーホークスが対戦しましたが、皆さん見られましたか?試合開始早々に、デンバーはコミュニケーションミスで2点先取されてしまい、そこからボロボロに崩れてしまいました。結果、43―8でシアトルの圧勝となったのですが、「最強オフェンス」と「最強ディフェンス」の対決と言われていた強豪2チームが対戦するので、こんなに差が開いたゲームには驚きました。それは、最初のミスから立ち直ることができなかったメンタル面の弱さが関係していると思います。そこで今回はメンタルトレーニングの大切さとその練習法について話したいと思います。

呼吸法でメンタルを強化する

呼吸法でメンタルを強化する

 メンタルトレーニングで1番大切なのは呼吸法。とにかく、呼吸法さえきちんとマスターすれば、全体的なメンタルトレーニングのコツは掴めると思います。呼吸法の中でも腹式呼吸が大事。普段、私たちは無意識のうちに浅い呼吸をしています。大抵の人は大きく息を吸うとお腹が凹みます。それを、息を吸い込んだ時にできるだけお腹を膨らませるのが腹式呼吸です。最初から体得することは難しいでしょうから、まずは静かな場所で繰り返し練習をすることから始めてみましょう。それが慣れて来たら、どんな場面でも簡単にできるようになります。

 例えば、緊張する場面だと心拍数が高まります。それをゆっくりとした呼吸法を使って徐々に落としていく。逆に呼吸を速くして心拍数を高めることもできます。僕の例で言えば、MLBシーズン中は162試合もあるので、常に緊張感を持って試合に臨むことの方が難しいんです。そんな時は呼吸法を使って心拍数を100から120まで上げたり、そこからゆっくりとした呼吸法を使って少しずつ心拍数を下げていったりしながら、自分に合った状態に仕上げていきます。とにかく呼吸法によって自分の心理状態を試合にベストな状態に持っていくんですね。キーになるのは呼吸法と心拍数。なかなか自分では「緊張している」とか「やる気がない」とかわかりにくい時もあるので、自分のベストな状態の心拍数が1分間にどれくらいなのかを測っておいて、それに近づけるトレーニングを行っておくと良いでしょう。打ったり、投げたりするのに技術が必要なのと同じで、メンタルトレーニングも技術として習得できるもの。そのためには繰り返し修練することが必要となってきます。

 しかし、ウエイトトレーニングと一緒で、闇雲に練習をしても間違った認識をしてしまうので、ちゃんとした先生に指導してもらう、あるいは本を読んで正しいやり方を理解することが基本となります。メンタルトレーニングを今までやったことがない人が始めると、技術面がおろそかになってしまって、パフォーマンスが一時的に落ちてしまうことがあります。そうすると、メンタルトレーニングは技術面に悪影響があると思い込んで止めてしまう人がいます。即効性はないかもしれませんが、一度身に付けると一生使える技術となりますので、早くからトレーニングを始め、修練を積んだ方が良いでしょう。

ストレスとプレッシャーを楽しみに変える

 練習でも会社でも毎日が同じことの繰り返しだとストレスに感じます。そんな時はストレスを楽しみに変えられるような工夫をしてみてはいかがでしょうか。僕が良くやるのは、ただ単にバッティング練習をしてもつまらないから「10回のうち8回打てたら自分の勝ち」などと勝負に置き換えてやってみる。または、ピッチングの練習の時に実在の相手やシチュエーションを想定して投げ方を変えるなど、面白い工夫をこらして練習するなど、方法はたくさんあります。これはプロの世界だけでなく、一般社会でも応用できますよね。例えば、会議での発表やプレゼンテーションを控えているなら、事前に本番さながらの緊張感を持って練習をしてみたり。コツコツと積み重ねていくことで、きっと結果に生きてきますよ。

 金儲けも同じで、世界で株式やビジネスで大成功している人は、純粋に金儲けだけを目的にやり続けている人って少ないと思うんです。やっぱり、そのビジネスが好きで、且つ、ゲームとして楽しんでいる部分があるから続けられているケースも多いと僕は思うんです。ただ金儲けだけを目的にして、その過程を楽しめない人だと案外息が続かないのかもしれません。もちろんストレスは多いでしょうが、それさえも楽しめるようになれば一流です。

 もし、ストレスをゲームなどに置き換えて楽しむことが難しい人は、技術的なことに集中するのもひとつの手です。例えばピッチャーだと足を上げるところだけにすごく集中するとか。ここで抑えないといけないというプレッシャーのある場面で、その部分だけに集中できるようになれば、相手に打たれたらどうしようというプレッシャーを忘れることができ、恐れや焦りを消すことができると思うんです。人間って不思議なもので、ひとつのことに集中しすぎると、他のことを忘れちゃうんですね。だから技術面でひとつだけでも練習で習得できる「これさえすれば」というものを作っておけば、ピンチの場面ではそこだけに集中すればいいんです。

 また、ストレスを辛いだけのものだと捉えていませんか?実は人間ってストレスがある程度ないと生きていけないって知っていましたか?これはある本で読んだ話ですが、戦争で捕虜になった人で「何とかなるさ」と楽観的に捉えた人よりも、それをストレスに感じて「何とかしなきゃ」と真剣に考え、悩んだ人の方が生き残ったそうです。普通、逆だと思いますよね?だから適度なストレスはあった方がいいみたいです。あまりあり過ぎるのも良くないので、その時は先ほどアドバイスしたように、楽しみに変える努力をしてみてください。また、とことんストレスと向き合い、突き詰めていくと、解決した時に自分の中の引き出しがひとつ増えているんです。そうなると、次にストレスに直面した時にはもっと上手く対応できるようになります。

気持ちを上手く切り替えて

 ストレスと向き合うと言っても、ずっとその事ばかり考えてしまうのは精神的に良くありません。考えないようにしても、頭の片隅にずっと残っていたり、余計ストレスをためることって、皆さんも経験ありますよね。僕も試合で打たれた後は家に帰る車の中でずっと考えたりします。でも車を下りた瞬間にパッと頭を切り替えて忘れる。ずっと考えていても新しい発想は生まれてこないし、疲れてしまうだけ。ある程度自分と向き合ったら、一旦休んで、再度向き合うようにすれば、頭も回転しやすくなります。勉強だって同じことです。5〜6時間もずっと同じように集中力が続くなんてことはないでしょう。時にスランプに陥った時などは、上手く発想の転換をすると良いでしょう。

 オン、オフの切り替えが大事って良く言いますが、オン(仕事)に影響が出ない範囲であれば、オフの時には何をやってもいいと思います。オンの時はド真剣に、オフの時はハメを外すくらい遊ぶ。それくらい極端でもいいのかもしれないですね。僕もシーズン中でもゴルフをしたりして気分転換をしていました。イチロー選手みたいに、オンもオフも関係なく野球を心底楽しんでいるというのが、きっと究極なのでしょうね。

メンタル面の育て方

 選手の育成にしても、子育てにしても、アメリカでは褒めて伸ばす、日本では叱って育てるのが一般的ですが、僕は基本的には褒めて育てる方が良いと思います。ただ、子供の場合褒め過ぎると言うことを聞かなくなるので注意が必要ですね。アメとムチではないですが、厳しくするところは厳しくしないといけない。ただ根拠もなく褒めて、「あなたはできる」とできない子供や選手に言い続けるのは無責任です。アメリカ式では褒め過ぎる気がしますし、逆に日本式では極端に褒めることをせず、技術の修得や反復練習ばかりに走りがちになっているように思います。自信を植え付けて、メンタル面の強い選手(子供)を育てるという意味では、褒めることはとても重要です。それが自信に繋がって、ここぞという時に力を発揮できる。今までは、体が大きいとか、身体的な特徴などが資質とされていましたが、今はメンタルが強いというのも優秀な選手としての大切な要素と認識されてきました。トレーニングでメンタル面は比較的簡単に強化することができるので、子供の成長のため、選手の育成のためにもメンタル面の強化が意外に近道なのかもしれません。

長谷川滋利/Shigetoshi Hasegawa

長谷川滋利/Shigetoshi Hasegawa

Shigetoshi Hasegawa■1990年のドラフトでオリックス・ブルーウェーブの1位指名を受け入団。プロ1年目の91年に12勝し最優秀新人賞を獲得。95年には12勝、防御率2.89の好成績を残し、オールスターゲームにも出場。97年1月、アナハイム・エンジェルスに入団、02年1月、シアトル・マリナーズへ移籍。03年はクローザーに起用され、63試合に登板し2勝16セーブ、防御率1.48。オールスターゲームにも出場した。06年1月、引退。現在は野球解説のかたわら、講演や執筆活動、自身のウェブサイト(www.sportskaisetsu.com)にコラムを展開中


●野球専用トレーニング施設
PTC Mazda(トラベルチーム)MAZDA社がスポンサーする18歳以下のトラベルチームを運営中
E-mail: PTCbaseball@msn.com

長谷川滋利さんの公式ウェブサイト: www.SportsKaisetsu.com
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2014年03月号掲載