日本人メジャーリーガーの注目株

日本人メジャーリーガーの注目株

自分の特化した部分を武器に、頑張っていってほしいと語る長谷川氏

 さて、今年も野球シーズンが始まりましたね。たくさんの日本人メジャーリーガーがいますが、その中でも1番の注目株は、やはりニューヨーク・ヤンキースの田中将大、イチロー、黒田博樹の3選手でしょう。イチロー選手に関しては色々言われていますが、どこに行ってもまだまだメジャーで活躍できる力がある。40歳になっても第一線で活躍しているので、年齢へのチャレンジが見所ですね。

 昨年ワールドチャンピオンに輝いたボストン・レッドソックスに所属する上原浩治、田澤純一両投手が、先シーズンのような活躍を見せることができるのかも気になるところです。今年は他球団も色々と対処法を考えて来るでしょうから、昨年同様、またそれ以上に活躍するには相当の努力と対策が必要になってくるでしょう。

 メジャーリーグ初挑戦となる田中将大投手には皆さんも注目していらっしゃると思います。7年総額1億5500万ドルという大型契約をしたので、ヤンキースのファンはすぐに答えを求めると思いますが、日本人のファンの皆さんにはぜひ長い目で見てほしいです。周りに何と言われようが、今年は長年にわたって活躍できるようにするための下地作りの年。そのためにはまずはアジャストすること。日本でやってきたことをこちらでそのまま適用するのは難しいでしょうから、同じような力が出せるようにボール、マウンドやバッターなどの違いに少しずつで良いから馴染めるようになっていってほしいです。最初から飛ばし過ぎてすべてを変えようとせずに、マイナーチェンジできるところから徐々にやっていくのが良いでしょう。私生活では、食事面に関してはお金で解決できる部分が多いでしょうから(笑)、休みがない、遠征が遠くて期間も長いなど日本のプロ野球との違いから、精神面で弱ってしまわないようにしてほしいと思います。

 田中投手は先発として起用されることになるでしょう。恐らく3番手から4番手になってほしいと球団からは期待されていると思います。ヤンキースにはCC・サバシアというエース投手と黒田投手がいますから、その次に来てほしいと思っているのではないでしょうか。彼には、あまり期待が重荷にならないように、例えばできるだけローテーションを守るなど「今年はこれだけはやりたい」というポイントを決めてそれだけに集中した方が良いとアドバイスしたいですね。「ああしたい」、「こうしたい」、「期待に応えないといけない」などと考え過ぎると、レベルが高いメジャーリーグで潰れてしまう可能性だってあります。「結果的にこうだった」くらいが丁度いいのではないでしょうか?

気分を上手く切り替えて

 もちろん1年目で必死でしょうから、ずっとオンの状態になるのは仕方がないのですが、その中でも休みの時はきっちりと心身共に休むことが必要。日本のプロ野球では月曜日が休みなのですが、こちらではそれがないから、自分の中でのオフの日を作るといいかもしれませんね。球場には行くけれども気分転換をして気持ちを軽く抜くとか、ニューヨークにはたくさんレストランもありますから、美味しい物を食べるとか(笑)。これは田中選手だけでなく、マイナーリーグからメジャーリーグに挑戦する選手たちにも言えること。早くメジャーに上がりたい気持ちはあるでしょうが、何事も根を詰めてがむしゃらにやればいいということでもないので、適度に気持ちを抜かないと長いシーズンの間、集中力が持ちません。その辺、アメリカ人の選手は気持ちの切り替えが上手ですよね。

気負い過ぎないこと受け入れる姿勢が大切

 田中選手が昨シーズン、日本で24連勝の大記録を作ったことは記憶に新しいですが、ここメジャーリーグでも同じようにやれると思い込まないことも大切です。日本でそれだけの記録があったとしても、アメリカでは「15勝くらい勝てれば御の字だな」と考えられないと、調子が悪い時に気持ちがガタンと落ちて、自ずと成績にも表れてしまいます。実はここ数年のヤンキースがこの状態。常勝軍団だったので、ちょっとでも調子が悪いとガタっと落ちてしまう。そして「こんなはずはない」という気持ちばかりが空回りしてしまって、負のスパイラルに陥ってしまうというパターンです。上を目指して頑張るのはもちろんなのですが、時には現実を受け入れることも必要。完璧に押さえるのが当たり前だと思わずに、打たれて当然だという心構えでいること。

 僕がスランプに陥った時に、コーチが「ここは日本でもメキシコでもスペインでもない。世界一のメジャーリーグなんだということが常に頭にあれば、イライラもしないし悩むことも少なくなる」とアドバイスしてくれたことがありました。世界一の選手たちが集まるメジャーリーグで頑張れているわけですから、トップでないといけないという考え方は捨てた方が気持ちも楽になって精神的にもいいでしょうね。

セールスポイントを分析し、アピールせよ

 一部のトップの選手以外は、自分の得意な分野や技を見つけて、そこに特化して頑張らないとメジャーで長期にわたって活躍することは難しいでしょう。例えば、イチロー選手はホームランは捨ててヒットに集中したので、あれだけの選手になれましたよね。上原投手もフォークボールの技をとことん磨いたので、昨年の活躍があった。僕も本当なら先発として長いイニングを投げたい気持ちがありましたが、無理だと思ったので、短いイニングにシフトチェンジをして、成功を収めました。

 実は、メジャーリーグでは日本のように「ああしろ、こうしろ」と言われることはほとんどありません。だからこそ自分の中で特化した技、セールスポイントを持って意思を強く持っておかないと宙ぶらりんな状態で終ってしまいます。日本だと先発や中継ぎだと言われればずっとそのポジションで、コーチに認められるまではなかなか変えてくれないんですが、アメリカでは逆にある程度自由にさせてくれ、色々なオプションを与えてくれます。ですが、実力社会なので使ってもらえない時はまったく使ってもらえない。メジャーリーグで日本人が活躍できる場所というのは能力的にも身体的にも限りがあると思うので、その中でどうやったら使ってもらえるかを考えてアピールしないといけないですね。

 これは一般社会でも当てはまることで、読者の皆さんも日本から来て言語も文化も違うアメリカで勉強したり仕事をしたりされていると思いますが、自分が得意とするものを見つけてそれを伸ばしアピールしていくことが、色んな人種の中で自分を売り込んでいかなければならないアメリカ生活でのポイントだと思うんです。日本人の得意なものは何か?例えば、忍耐力や努力を惜しまない姿勢、勤勉さなど。その上に自分の個性を磨いて大きな土俵で勝負していってほしいですね。

その他の注目ポイント

 個人的にマイナーリーグで注目しているのは下投げの渡辺俊介投手です。あまり下投げで先発の投手はいないので、彼のような投球がメジャーリーグで通用するのかどうかが楽しみですね。もし彼が活躍すれば、横投げ、下手投げの投手たちにも門戸が広がり、彼らが早くからメジャーに来てくれるかもしれないという点でとても注目しています。

 また、田中投手が得意とするフォークボールをどのように使っていくかも見所です。フォークボールを多投すれば勝てるでしょうが、長くは続かないと思うので、その使い方によって彼の心理状態を想像しながら観戦するのも楽しいかもしれません。

2014年日本人メジャーリーガー一覧表

American League

東地区
黒田博樹..................New York Yankees
田中将大..................New York Yankees
イチロー..................New York Yankees
上原浩治..................Boston Red Sox
田澤純一..................Boston Red Sox

中地区
青木宣親..................Kansas City Royals

西地区
岩隈久志..................Seattle Mariners
ダルビッシュ有.......Texas Rangers

National League

中地区
藤川球児..................Chicago Cubs

マイナー契約
渡辺俊介..................Boston Red Sox
田中賢介..................Texas Rangers
川崎宗則..................Toronto Blue Jays
建山義紀..................New York Yankees
松坂大輔..................New York Mets
和田毅.....................Chicago Cubs
中島裕之..................Oakland Athletics

長谷川滋利/Shigetoshi Hasegawa

長谷川滋利/Shigetoshi Hasegawa

Shigetoshi Hasegawa■1990年のドラフトでオリックス・ブルーウェーブの1位指名を受け入団。プロ1年目の91年に12勝し最優秀新人賞を獲得。95年には12勝、防御率2.89の好成績を残し、オールスターゲームにも出場。97年1月、アナハイム・エンジェルスに入団、02年1月、シアトル・マリナーズへ移籍。03年はクローザーに起用され、63試合に登板し2勝16セーブ、防御率1.48。オールスターゲームにも出場した。06年1月、引退。現在は野球解説のかたわら、講演や執筆活動、自身のウェブサイト(www.sportskaisetsu.com)にコラムを展開中


●野球専用トレーニング施設
PTC Mazda(トラベルチーム)MAZDA社がスポンサーする18歳以下のトラベルチームを運営中
E-mail: PTCbaseball@msn.com

長谷川滋利さんの公式ウェブサイト: www.SportsKaisetsu.com
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2014年04月号掲載