新しいデザートを発案

新しいデザートを発案
© Gene Shibuya

 今までにない進化したデザートを作りたくて、2007年にスノーラを立ち上げました。現在アメリカではロサンゼルスのファーマーズマーケットを中心に展開しており、日本では銀座の三越や京都の路面店で販売しています。アイスクリームでもシャーベットでもジェラートでもないロサンゼルスで生まれた「天使の雪」というイメージのデザートを、添加物を一切使わずオーガニックの材料だけで作る。“美味しいけれど太らない”、身体の内側から健康で美しくなるようなデザートを作りたいという夢を追って、7年間続けてきました。

 自分が安心して食べられるもの、大切な友人に自信を持ってすすめられる商品以外作りたくなかったので、材料にも徹底的にこだわっています。手間暇もコストもかかるのですが、栄養価の高い低温殺菌の牛乳を使い、加える乳酸菌も自分が納得できるものを厳選しています。最近、詳しく解明されてきたのですが、乳酸菌には老化を防いだり、ガンを抑制したりする効果があるんですね。600種類もある乳酸菌の中から、健康促進の効用を持つものを専門家に相談しながら選び抜きました。

人生を変えたアメリカ留学

人生を変えたアメリカ留学

2013年1月24日、ホールフーズ・マーケットの共同創業者兼共同CEOのジョン・マッキー氏の著書『Conscious Capitalism』の出版記念パーティにて。お祝いに駆けつけた時の1枚

 父が海外に出張に行ったりと、子供の頃から外国を比較的身近に感じていましたが、具体的に海外に出たいと思ったのは、中学生の時に読んだ『パパとママの娘』(能勢まさ子著)という一冊の本がきっかけでした。アメリカへ留学した高校生の女の子が書いた著書で、大変な刺激を受けましたね。アメリカに留学したいと母に話したら大賛成で、具体的にどうすれば良いか一緒に考えてくれて、やりたいことを追求できる環境を作ってくれました。日本が高度成長に沸いていましたが、女性の社会進出はほど遠い時代。今思えば、母は夢を追って社会に出て行けるような娘に育って欲しいと願ってくれたのかなと思います。

 高校に進学後、具体的な留学方法を探して見つかったのが、文部省管轄のAFS(公益財団法人AFS日本協会)という国際教育交流団体が主催している高校生交換留学制度でした。当時はまだ1ドル360円の時代ですから、海外に出るというのが大変な時代だったんです。当然、この団体からの留学も人気が高く、試験や面接に合格しなければならないシステムでした。元々、やると決めたらまっしぐらな性格で、留学に目標を定め、学校の試験や行事には目もくれずにひたすら試験対策の勉強に取り組みました。今でも覚えているのが、当時の校長先生に「アメリカに留学するには、どうしたらいいか」といきなり校長室に質問に行ったこと。留学自体が珍しかったこともあってか校長先生も快く協力してくださって、ついに2年生の時に試験に合格しました。一心不乱に努力した分、本当に嬉しかったですね。頑張れば夢は叶うのだと実感しました。

人口1361人の小さな街で

人口1361人の小さな街で

2013年、AFS留学時にお世話になったHeusinkveld家とは今も交流が。ホストファミリーのパパとママを偲んで2人が新婚旅行に行った思い出の地(Lake Arrowhead)を巡る家族旅行にて

 せっかく留学するのだから、日本とはまったく違う経験ができる地域がいいと思って中西部を希望した結果、団体から指定された留学先はアイオワ州にある人口1361人のPaullinaという小さな街。まだ高校生でしたからカルチャーショックよりは興味の方が勝って、見るもの聞くものすべてが新鮮で刺激的だったのを覚えています。初めてバスで街に降り立った時、ジーンズのつなぎを来た中年男性が目の前に立っているのを見て、まさにアメリカだと感激したり、アイスクリーム屋さんに連れて行ってもらって、目の前のカウンターに並べられたアイスクリームの種類に圧倒されたり。

 ホストファミリーには本当によくしてもらって、英語も含め、アメリカでの生活や文化を一から教えてもらいました。ホストファミリーの思いやりを通して見るアメリカは成熟した文化を持つ素晴らしいところで、人種差別のような体験をすることもなく、学校が終わったらアメリカの農村らしい生活を楽しむような1年でした。ホストファミリーとは今でも親しくお付き合いをしていて、私にとって大切な第2の家族です。

 1年間アメリカの文化に囲まれ、ほとんど日本語に接することなく過ごしたので、帰国後は多少、逆カルチャーギャップのようなものを感じましたね。日本の学校の堅苦しさや自由のなさが目についてしまったり。大学紛争の真っ直中だったこともあり、大学の在り方にも疑問を持ったりもして、結局、一番自由があり国際的だった国際基督教大学(ICU)に入学しました。自由な校風の中で、少人数のクラスで先生と膝を突き合わせるようにして勉強をした毎日。試験に追われ、毎週課題のペーパーを提出し、卒業論文は英語で書きました。既成概念にとらわれず、クリエイティブ、ポジティブである大切さを知った学生生活。人生の友ができたのもこの頃でした。ICUで学んだこととICU精神が私が辿ってきたキャリアのすべてに大きな影響を与えてくれています。今、ロサンゼルスで同窓会の幹事をさせていただいていますが、大先輩たちと一緒に母校との繋がりを持てるのは大きな喜びです。

プロモーターから食の世界へ

プロモーターから食の世界へ

2007年9月、スノーラBeverly Hills店のグランドオープニング・レセプションでビジネスパートナーのAEG社長兼CEOのランディー・フィリップス氏と共に

 大学卒業後の初仕事は、国際海洋博覧会。卒業後すぐの開催で時期もちょうど良かったので、海外からの来賓の通訳・アテンドとして半年間働きました。まさに異文化間のコミュニケーションを実践する職場でした。さらに、私の人生に大きな影響を与えてくれた故遠藤周作先生との出会いもありました。海外担当の秘書として働かないかと誘っていただき、亡くなられるまで仕事をさせていただきました。私は海外案件のお手伝いだけだったので、時間がある時は他の通訳のエージェンシーとも契約して、来日するアーティストの通訳もするようになり、他のプロジェクトにも色々と関わりましたが、先生と仕事を供にさせていただいた経験は、今でも人生の宝物です。

 通訳の仕事では、ジュネーブの国際労働機関(ILO)の会議場で通訳する機会を得たり、世界各国の著作権団体との会議に参加したり、貴重な経験をたくさんしました。アーティストの著作権保護に関してはこの時に強い関心を持ち、その後カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)でパラリーガルの資格を取得しました。創作活動に関わる人の権利を守るという、熱意に溢れた仕事には今でもやり甲斐を感じています。

身体に良くて美味しい商品へのこだわり

身体に良くて美味しい商品へのこだわり

2011年秋、スローフードのキャンペーンに参加。スローフード・ロサンジェルス支部長リサ・ルーカスさんとのツーショット

 プロモーションの仕事では、ロッド・スチュワートやジョン・デンバー、トニー・ベネット、ジェームズ・ブラウン、スティービー・ワンダー、プリンスなど世界的なスターの日本公演を数多く担当させていただきました。特に、コンサートツアーなどは大変でしたが、楽しい思い出ばかりです。

 2006年にローリング・ストーンズの来日公演を手掛けたのですが、大物アーティストの公演はやはり想像以上に大変な仕事だったので、成功に終わった後、せっかくの経験を他の分野でも活かせないかと考えました。それでどうしてフローズンヨーグルト?と疑問に思われることでしょうが(笑)、ツアーで旅が多いミュージシャンたちが、甘いけど身体に良いものが食べたいね、という会話をしていたのがきっかけです。甘くてヘルシーで低カロリーなもの…、フローズンヨーグルトだ!という、しごく単純な発想で(笑)。決心したら徹底的にやってしまう性格なので、結局、本格的に取り組むことに。どうせやるのなら、既存にはない質の高いものをと考え、スタンフォード大学のフードラボに依頼して幾度となく試作を重ね、時間をかけて納得できる味を作り上げました。フレーバーにも天然果汁を使い、トッピングソースを含め、材料はすべて天然素材。自分が納得できる商品がついに出来上がりました。ラッキーにもエンターテインメント界のトップである、AEGのCEOランディー・フィリップス氏がビジネスパートナーになってくれたのは大変心強かったですね。食とエンターテインメントの世界には、どうやったらお客様に満足していただけるのか、という共通のテーマがあるので、彼のアドバイスを通じて、プロモーターとしての自分の経験が活かせるようになりました。

 ファーマーズマーケットが全米でフード革命と言われるほどの大ブームとなったのは、オーガニックが前提となり、サステイナブル農業を支持しているからです。品質と味が良く、健康に良い商品の重要性が消費者にも広まってきているのでしょう。カリフォルニアで一番権威のあるサンタモニカのファーマーズマーケットは、行政の審査を通らなければ出店できないシステムなのですが、フローズンヨーグルトでは弊社が唯一認可を受けています。オーガニック食材だけでなく、器やスプーンもすべてエコ容器のみにこだわったことも行政に認められた要因です。目の前で小さな子供たちが美味しそうにスノーラを頬張っているのを見るのが、私にとっては何よりのご褒美ですね。

 今後の展開としては、アメリカではホールフーズやオーガニック系スーパーでの店頭販売、日本ではギリシャヨーグルトを自社で開発製造し、乳酸菌ブームの先駆けになりたいと計画しています。

 高校時代の留学から始まって自分の興味のあることを追求し続け、今は美味しくて身体に良い商品をお客様にお届けすることに手応えを感じています。この仕事をきっかけに、エコやスローフード、食育の運動にも関われるようになりました。お客様に満足していただく、という共通項の下、今後もスノーラとエンターテインメントとのコラボレーションを進めていくつもりで、本当に時間が足りないくらいやりたいことがいっぱいです。仕事を通じて、素晴らしい経験をたくさんさせてもらったことを糧に、これからもアメリカ、日本だけでなく、地球環境と食育を通じて人のためになるような取り組みに力を入れていきたいと思っています。

~信条~

~信条~

ざくろとチョコレートフレーバーのスノーラ。容器にもこだわり、地球環境に優しい素材を使用

Treat the earth well. We do not inherit the earth from our ancestors, we borrow it from our children.

地球は祖先から受け継いだのではなくて、未来の子供たちから借りているだけ。だから大切にしましょう。 (Native American Proverb)









Snola, Inc. CEO 川島正子さん

Masako Kawashima■兵庫県芦屋生まれ。AFS留学生として高校時代にアイオワ州に1年間留学。国際基督教大学(ICU)では異文化間コミュニケーション専攻。UCLA でパラリーガルのライセンスを取得。著作権、エンターテインメント業界からキャリアをスタートし、ローリング・ストーンズ、スティービー・ワンダーなどのコンサート・プロモーターとして企画招聘運営に関わる。2007年にSnola, Inc.を立ち上げ、オーガニックで無脂肪の乳製品を取り扱う一方、精製した砂糖を使わないフローズンヨーグルトの製造・販売に携わる

会社概要

社名: Snola, Inc.
本社所在地: 100 S. Doheny Drive, Los Angeles, CA 90048
事業内容: フローズンヨーグルトの製造販売
資本金: 500,000ドル
従業員数: 60名(日米含む)
創立: 2007年2月
Web: www.snolayogurt.com
    www.snola.co.jp


文 = 中村洋子

2014年12月号掲載