フランス直輸入のグッズで埋め尽くされている店内

フランス直輸入のグッズで埋め尽くされている店内

 ニューポートビーチにあるフレンチカフェ・ビストロ「Moulin」は、至る所にオーナーのこだわりが感じられるお店。店名はフランス語で「風車」を意味する。エントランス前には、パリの街角にありそうな古びた自転車などが飾られており、店内にはスイーツ、ブレッド、チーズなどがズラリと並ぶ。商品から内装、家具、ナプキンやフォークに至るまで、すべてフランスから直接取り寄せたものばかり。そのため店内に入った瞬間にパリに迷い込んでしまったかのようだ。

「店はパリのカフェそのもの。フランスの音楽を聴きながらゆっくり過ごしてほしい」とロホンさん

「店はパリのカフェそのもの。フランスの音楽を聴きながらゆっくり過ごしてほしい」とロホンさん

 オーナーのロホンさんは、パリ出身。約30年前、18歳の時にアメリカにやって来た。スノーボードや時計のビジネスなどを次々と成功させたが、ずっと気がかりだったのが、アメリカには自分が幼い頃に通っていたようなフレンチカフェがないこと。生まれ育ったパリの街のそこかしこにあるような普通のカフェが作りたいと、昨年9月にこのお店をオープンした。「これがパリのビストロ。ここではフランスという国の雰囲気も感じて欲しいんだ」とロホンさんは笑う。お店のスタッフもほとんどがフランス人。パティシエは、オープンの際、フランスからわざわざ呼び寄せたというこだわりぶり。

 普段はパティスリー、ベーカリー、デリで平日の営業時間は夜7時までだが、火曜日と木曜日だけは、ビストロとしてディナータイムもオープン。火曜日は、定員50名、完全予約制の3コースディナー(25ドル)、木曜日は、リブアイステーキにフレンチフライ食べ放題とサラダが付いたディナー(25ドル)を用意。こちらは夜6時から8時までで、特に予約の必要はない。

 火曜日のディナーに行ってみると、7時過ぎからお客さんが「ボンソワール」と挨拶をしながら入ってくる。お店のスタッフもお客さんと一言二言フランス語で会話を交わし、席に案内する。皆、顔馴染みのようで、どこかのお宅のディナーに招待されたかのような親しみやすい和やかな雰囲気だ。

 コースメニューは1種類のみ。内容はその週に手に入る食材によって変わり、フランスでは誰もがいつも家庭で味わっている伝統的なものが提供される。

アペタイザーの「ラパン・ア・ラ・ムルタルド」。ナイフを入れようとすると、ちょっと押し返されるほどの弾力性

アペタイザーの「ラパン・ア・ラ・ムルタルド」。ナイフを入れようとすると、ちょっと押し返されるほどの弾力性

 アペタイザーは、「ラパン・ア・ラ・ムルタルド」。これは、ウサギ肉のマスタード焼きでサラダが添えられている。ウサギ肉は日本人には馴染みがないかもしれないが、フランスでは一般に食されている。肉をスライスしてロール状にした後にローストしてあり、見た目は鶏肉のようだが、より弾力がある。癖がなくあっさりした淡白な味が特徴だ。そのためサラダとの相性も良く、互いの旨味が上手に引き出されている。

 フランス料理というとお皿やテーブルクロスも豪華なものを使っているイメージだが、このお店ではチェックのテーブルクロスと飾りのない白い皿を使用している。ナイフもフォークも至ってシンプルだが、お皿もナイフもフォークも、とても重厚感がある。説明されて気が付いたが、これがフランス人家庭のスタイルなのだそうだ。「フランスでは食器が重いのが当たり前。これで食事をするから美味しいんだ!」とロホンさんは嬉しそうに語る。

メインの「カナール・ア・ロランジュ(鴨肉のオレンジソース掛け)」は、ソースのオレンジとポテトの黄色が目を引く、鮮やかな一品

メインの「カナール・ア・ロランジュ(鴨肉のオレンジソース掛け)」は、ソースのオレンジとポテトの黄色が目を引く、鮮やかな一品

 メインは、「カナール・ア・ロランジュ(鴨肉のオレンジソース掛け)で、そら豆とソテーされたジャガイモが添えられている。グリルされた鴨肉は皮はカリカリだが中は肉汁が溢れるほどジューシー。先程のウサギの淡白な味に比べると、より濃厚でしっかりとした肉の味と油が口の中で広がる。そこに爽やかな酸味と香りを加えてくれるのがオレンジソース。濃厚さと爽やかさのバランスが絶妙で、料理人の腕が光る。

デザートの「タルト・ポム・アンディーヌ(アーモンドタルト)」は、アメリカではあまり見かけない繊細な甘さのスイーツ

デザートの「タルト・ポム・アンディーヌ(アーモンドタルト)」は、アメリカではあまり見かけない繊細な甘さのスイーツ

 デザートは、「タルト・ポム・アンディーヌ」。薄いシンプルなタルトは、日本人にとっては甘さ控えめで、好ましい風味と味わいだ。

 ロホンさんはほぼ毎日お店に出て、お客さんとの交流を欠かさない。「会話を楽しみながら、ゆっくり時間を過ごしてほしい。友達がいなければ、隣の人に話しかければ良い。だって、ここはパリの街角なんだから」。

 昼間はカフェ、火曜と木曜の夜だけはフランスの家庭料理が味わえるフレンチビストロとして営業している「ムーラン」。フランスから輸入したこだわりのインテリアと飛び交うフランス語の会話。着飾らず出かけて、「日常」という空間を存分に楽しんでほしい。

Moulin

Moulin

住所: 1000 N. Bristol St., Newport Beach, CA 92660
Tel: 949-474-0920
時間: 7:00am〜7:00pm(月〜土)
   8:00am〜3:00pm(日)
Web: moulinbistro.com


取材・文=芦刈いづみ/撮影 = Tak S. Itomi

2015年5月号掲載