ゴルフはルールよりもマナーが大切

ゴルフはルールよりもマナーが大切

5月17日、所属するミッションビエホ・カントリークラブの今年のクラブチャンピオンシップでトップを飾り優勝!フェアプレイの精神の下、2位に4打差をつけての勝利に笑顔がこぼれる

 私たちは、日々、社会のルール(法律、秩序)を意識しながら生活していますが、今回はスポーツにおけるルールの意義とその重要性、そしてスポーツマンシップについてお話ししたいと思います。

 スポーツには個人競技と団体競技がありますが、個人競技のひとつであるゴルフは、「紳士のスポーツ」と呼ばれています。なぜそう呼ばれるのでしょうか。ゴルフのルールは簡単で“あるがままに打つ”が基本原則です。数あるスポーツの中でゴルフ競技の大きな特徴の一つは、プレー中にレフェリーが立ち会わないということです。プロトーナメントにおいては競技委員がいますが、通常、我々がプレーする時には、プレイヤーのほかに審判はいないので、すべて自己申告です。それは、ゴルフがフェアプレーを重んじるスポーツであって「ゴルファーは皆誠実であり、故意に不正を冒す者はいない」という、信頼の基本概念があるからです。プレー中、予測できない事態が生じ、適用できるルールに当てはまらない場合、公正の理念に従って解決してきたゴルフの歴史的背景や風土があり、そこにゴルフ規則の本質と精神をうかがい知ることができるのです。また、ゴルファーの心得として、「プレイヤーの一人一人が他のプレイヤーに対しても心配りをし、ゴルフ規則を守ってプレーするというその誠実さに頼っている。プレイヤーは皆、どのように競い合っている時でもそのようなことに関係なく、礼儀正しさとスポーツマンシップを常に示しながら洗練されたマナーで立ち振る舞うべきである」(出典元:JGA/ゴルフ規則)と、ルールよりもマナーを強調しているのです。あくまでルールは競技全体の公平を図る観点から定められたもので、競技者自身が審判であり、自主的にルールに従うのはもちろんのこと、マナーを守る“自律”が非常に重要視されることが「紳士のスポーツ」と言われる所以なのです。

 では、このゴルフというスポーツそのものと基本理念を、子供の教育に置き換えるとどうでしょう。幼児が最初に社会性を身に付ける場は家庭です。家庭のルールが躾となるのです。真のゴルファー(=立派な社会人)になるには自分を律し、周りに気を配り、自然環境(=家庭環境や、家族、自分自身)を大切にし、プレー(=人生)を楽しむ。

 そのためには日頃からボール(=自分)と向き合い心身の鍛錬をする。日々、フォーム作りの試行錯誤を繰り返し、技を磨く努力を重ねなくてはならない。そう考えるとゴルフは紳士のスポーツと言うより、紳士的な精神を養うスポーツと言えるのではないでしょうか。

真のスポーツマンシップとは?

 スポーツマンシップが問われる実例があるので紹介しましょう。あるスカッシュの決勝戦で、接戦の末、A選手が打ったボールがコート内に入ったと判定されA選手の優勝が決まりましたが、A選手は自らボールはコート外にそれていたと申告。その後、判定が覆り、B選手が優勝となりました。もし、A選手が正直に申告しなければ、審判の判定のまま優勝者として名を残せていたでしょう。でもきっと、ボールがコート内に入ったか否かは、近くにいた自分が一番よくわかっていたから、たとえ自分が不利になっても、フェアに試合を戦いたかったのだと思います。どの競技のプレイヤーも、このA選手のように、いかなる時も正々堂々とプレーすることを心がけ、 フェアプレーを守ってほしいものです。

 一方、スポーツのルールの中のひとつにファウルがあります。主にサッカー、バスケットボール、レスリングなどでは反則を意味します。特に、サッカーやバスケットボールでは足を引っ掛けたり、押したりといったように、反則すれすれの線でプレーすることがよく散見されますが、たとえこれが勝つために有効的な戦術だとしても、後に自分が後悔するようであれば、フェアプレーではないのです。競技を愛し、そこに携わる人たちに対しても、誇れるようなプレーを目指してこそ価値があり、真のスポーツマンシップだと言えるのだと僕は思います。

フェアプレー精神を貫く

 当然、スポーツは競技ですから、勝ち負けはもちろん大事。しかし、そういったルールやマナーを度外視してまで勝つべきかというと、僕は違うと思います。故意のファウルプレーの容認は向上心の低下に繋がりかねない。罪悪感を感じない人もいるでしょうが、決して良いことではありません。いつの時代にも平気でズルをする人間はいます。でも、そういう行為をずっと続けていたら人間性さえも疑われようになりますよね。

 フットボールでも某チームは、ダーティーなプレーを売りにしているのですが、そういうチームは人気がありません。正々堂々としたフェアプレーの下、勝利を収めてこそ注目を集めるのです。それは球団ビジネスにも反映し、成功に繋がる原動力にもなるのです。前述のスカッシュの例に戻りますが、大会の優勝者はこれからも毎年輩出されますが、自ら申告をして2位になった選手の話は一生誉れ高い選手として語り継がれますよね。

 トップアスリートと呼ばれる人たちは、日頃から高い運動能力や技術を身に付け、向上していく努力は並大抵のことではありません。しかし、得てしてスポーツマンシップを伴わない選手を尊敬し、勝利を讃えることができたでしょうか。そういう選手を目指してほしいと子供たちに言えるでしょうか。競技なので勝ち負けにこだわることも大前提ですが、フェアプレーの精神を理解し、貫くことが選手の心得です。

Be Good Losers, Good Winners

 僕が友人らとゴルフコースを回った時のことです。CさんのボールがOBになってみんなでボールを探していると、自分でどこからか「ありました!」とコース内に探し当てて来たので、OBにならずにすみました。またある日は、Cさんが打ったボールがホールに入っていたのに、打った本人はそれに気付かず林の中を探しに行って、あるはずのないボールを見つけ出して来たことがありました。その人は仲間内でも常習犯と囁かれていましたが、さすがにその時は手元のボールが2つになってしまってバツが悪そうでした(笑)。悪いことをしているといつかは白日の下にさらされて、良いことも悪いことも自分に返ってくるものです。その瞬間だけを切り取って見ていると姑息なことをしている人があたかも得をしているかのように映るかもしれませんが、長い目でみるとそれは違うのです。

 Good Sportの意味は、文字通り訳すと良いスポーツですが、これは慣用表現として良い仲間、自立した信頼できる人、フェアな勝負をする人などの意味があることをご存知ですか?アメリカではGood Sportな人は、たとえ勝負に負けたとしても、一種の勝者であると評価する人もいます。そういう人の周りには、心の通った者同志が集まってくるのです。ちなみにGood Loserは、潔く負けを認める人という意味ですが、アメリカでは敗者であっても、ルールを遵守し、フェアプレーの精神で、対戦相手を思いやる気持ちを持った人に対して敬意を表する寛容な姿勢があります。それがスポーツを通じて、礼節と相手を尊重できる人間を育てる土壌になっているように思います。競技に勝敗はつきもので基本的には引き分けはありません。だからこそ、勝った時よりも負けた時こそ人間の真価が問われるのです。潔く負けを認め、勝者を称賛することができる人がGood Loserであり、良い敗者こそがGood Sportなのだと思います。

日常で心がけるスポーツマンシップ

 スポーツマンシップはスポーツ競技の場だけに留まりません。些細なことであっても、善悪の判断基準は自分自身や家族に誇れる自分でいることだと考えます。そのためにも日頃から相手や家族を重んじる言動に努めています。例えば、レストランに行った際のチップでも同様に、「なぜこの程度のサービスに◯ドルも支払わなければならないの?」と思っても、後できちんと置いてくれば良かったと悔やむのは嫌ですよね。多く渡し過ぎる必要はないけれど、そのサービスに見合った金額を払えば後悔は残らないのに、その場の感情に流されて行動することで冷静な判断もおざなりになります。特にレストランなどは客あっての商売ですが、互い(サービスをする側、受ける側)を尊重する意味でも気持ちの良い対応を常に心がけています。

 スポーツ同様に世の中にも秩序があって、その解釈は人それぞれだと思います。しかし、どの競技や社会においてもルールを遵守することの重要性やフェアプレーの精神を身をもって経験することで、相手や仲間を思いやる心と健全な体を保つ必要性を学ぶのです。スポーツを通じて人格を磨き、道徳心を高め、礼節を尊重する態度を養う、国家、社会の平和や反映に寄与する人間形成こそが心技体に通じる道なのです。

長谷川滋利/Shigetoshi Hasegawa

長谷川滋利/Shigetoshi Hasegawa

Shigetoshi Hasegawa■1990年のドラフトでオリックス・ブルーウェーブの1位指名を受け入団。プロ1年目の91年に12勝し最優秀新人賞を獲得。95年には12勝、防御率2.89の好成績を残し、オールスターゲームにも出場。97年1月、アナハイム・エンジェルスに入団、02年1月、シアトル・マリナーズへ移籍。03年はクローザーに起用され、63試合に登板し2勝16セーブ、防御率1.48。オールスターゲームにも出場した。06年1月、引退。現在は野球解説のかたわら、講演や執筆活動、自身のウェブサイト(www.sportskaisetsu.com)にコラムを展開中


●野球専用トレーニング施設
PTC Mazda(トラベルチーム)MAZDA社がスポンサーする18歳以下のトラベルチームを運営中
E-mail: PTCbaseball@msn.com

長谷川滋利さんの公式ウェブサイト: www.SportsKaisetsu.com
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2015年6月号掲載