「料理の鉄人」プロデュースのレストラン

 かつて米国版「料理の鉄人」の一人として活躍したイタリアンの巨匠、マリオ•バタリがプロデュースするレストランは、アメリカのみならず東京にもあるが、ピザ専門店として人気のピッツェリア•モッツァが2011年にニューポートビーチにも2号店をオープンした。最高のピザドウを作るためにマリオがタッグを組んだのは、日本でも翻訳本が出ている「La Brea Bakery」の創始者、ナンシー•シルバートンだ。

 マリーナを横目にPCH(Pacific Coast Highway)を走ると、青い空の下、店のロゴマーク「M」のオレンジの旗が目に飛び込んでくる。重厚な趣のLA店に比べるとビーチが近いせいか開放的な雰囲気が漂う。明るいパティオもあり、店内どの位置からもオープンキッチンの大きな窯の火が目に入る。客層はローカルのアメリカ人が多く、カップルからファミリーまで幅広い。

笑顔が爽やかなフロアマネージャーのリッキーさん。 後ろの棚は天井近くまでワインがぎっしり

笑顔が爽やかなフロアマネージャーのリッキーさん。 後ろの棚は天井近くまでワインがぎっしり

「まずはワインでもいかがですか?」とおすすめされたのが、ハウスの赤ワイン。少し酸味のある軽いキャンティは食前酒としては最適で食欲をそそる。  店内にはフルバーのカウンターがあり、65度に保たれたワインルームでは常時100種ほどのワインが貯蔵されている。イタリアワインが多いが、「場所柄カリフォルニアワインも置いてありますよ」と、気さくなフロアマネージャーのリッキーさん。

Prawns with corn & celery (12ドル) 一番人気のアペタイザー。ゴージャスなエビが目を引く

Prawns with corn & celery (12ドル) 一番人気のアペタイザー。ゴージャスなエビが目を引く

 特筆すべきはアペタイザーの充実。チョイスに困るほど魅力的なものがメニューに並ぶ。比較的小皿で2〜3人でシェアしてちょうどいい量である。まずは75%のお客さんがオーダーするという、Prawns with corn & celery (12ドル)。きれいにグリルされた尾頭付のエビは絶妙な塩加減。そのエビの下に盛られたコーンとトマトと刻んだセロリは丁寧にマリネされ、スキッとした酸味がエビの甘さを際立たせる。

Bone marrow al forno (12ドル)。バゲットのバターがふわっと香る。骨髄の肉汁は一滴も残したくないくらいの美味しさ

Bone marrow al forno (12ドル)。バゲットのバターがふわっと香る。骨髄の肉汁は一滴も残したくないくらいの美味しさ

 ここに来たらこれを食べようと必ず思うのが、Bone marrow al forno (12ドル)。直訳すればオーブンで焼き上げた骨髄。長さ15センチくらいの骨が縦半分にカットしてあり、軽く塩コショウだけを振ってオーブンで数分焼いて出される。サイドにはオリーブ油で煮た丸ごとニンニクと、粒の粗い岩塩が添えられている。そしてこれも主役級の存在感を放つ黄金色の焼きたてのバゲット。パン職人の腕が光る。食べ方を聞くと、まずバゲットにニンニクを潰しながらバターのように塗る、その上にコラーゲンたっぷりのトロトロの骨髄をすくって載せ、刻んだセロリとお好みで岩塩を少し。「さあ、どうぞ」と言われてがぶっといくと、彼はにやっと笑う。あまりのハーモニーの良さに瞬間的にコメントが出ないのを知っているようだ。シンプル•イズ•ベストと言ってしまえばそれまでだが、十分メインを張れるくらいの美味しさと見た目である。少し濃いめの味なので、ワイン好きの人ならワインが進むはず。

Bianca (19ドル) トロリと溶けたチーズの融合が絶妙なバランス。耳まで美味しく食べ切れるさすがのクラスト

Bianca (19ドル) トロリと溶けたチーズの融合が絶妙なバランス。耳まで美味しく食べ切れるさすがのクラスト

 アペタイザーに夢中になっていると、にこやかな顔のサーバーが窯から出してすぐの熱々のピザを運んできた。この大きな窯のお蔭で10分もかからず焼き上がるピザのサイズは20センチくらい。今日のチョイスはBianca (19ドル)。北イタリアの峡谷で〝山のチーズ〟と称される白いチーズのフォンティナを中心にモッツァレラと併せて使い、上に香り高いセージの葉が散らされている。決して薄すぎず、かと言ってぼてっとした生地でもない。トマトソースを使わないピザなのでとろりとした癖のないチーズの味と生地の味が口の中に広がっていく。見た目のシンプルさにそぐわず、素材との組み合わせが光る逸品である。

Butterscotch Budino(12ドル)。少し甘味の強いバタースカッチにはブラックのコーヒーがベストマッチ

Butterscotch Budino(12ドル)。少し甘味の強いバタースカッチにはブラックのコーヒーがベストマッチ

デザートの一番人気はバタースカッチ。一見するとプリンのように見えるかわいい盛り付けで、ローズマリーと松の実を載せた小さなクッキーが添えられてくる。イタリアンジェラート、アイスクリームは希望の味を3種、盛り合わせ。旬の季節の果物を使ったシャーベットは、もうしばらくは人気のハイビスカス•ジンジャーが楽しめるとのこと。色鮮やかでさっぱりとした口当たりが人気だとか。

 たかがピザ、されどピザ。アメリカンのカジュアルなピザとは違う本格派のピザ。十分におもてなしにもなる逸品の数々と心地良いサービス。気軽に恋人や友達と連れ立ったり、ゲストの接待のお店としても覚えておきたいレストランだ。

Pizzeria Mozza

Pizzeria Mozza

住所: 800 W. Coast Hwy,Newport Beach, CA 92663
Tel: 949-945-1126
時間: ランチ :11:30am〜2:00pm(月〜木)
    ディナ-:5:00pm〜10:00pm(月〜木、日)
         11:30am〜11:00pm(金、土)
Web: http://pizzeriamozza.com/


取材・文=村山 房子
LA在住15年。会社員、フィットネスインストラクターと多忙な毎日でも自炊は欠かさず。
Foodieな日系人のだんなと猫2匹の明るいLAライフ。
撮影 = 保坂 恵美

2015年10月号掲載