めまぐるしく変化するLAコーヒー事情
コーヒーの新しい楽しみ方満喫してますか?

前回のQOLA コーヒー特集から2年半。今なお白熱するLA コーヒー事情を再びお届けしよう。 あれから「サードウェーブ」の流れはどう変化した?LAのアイコンだったハンサムコーヒーロースターズはどこへ?自宅で飲む美味しいコーヒーの淹れ方を始め、フレーバーの表現方法から、LAのおすすめカフェ情報まで 最新の楽しみ方をとことん知って毎日のコーヒーライフをさらに充実したものにしよう。

もう一度おさらい! 「サードウェーブ」って?

もう一度おさらい! 「サードウェーブ」って?

(左上)同じ産地から来た9種類の豆の品質をカッピング法で同時にチェック

(右上)高品質の豆で世界的評価の高い、エチオピア・イェルガチェフ地区のウォッシングステーション。豆を選別している様子

(左下)トレーニングセンターでは、正しいコーヒーの知識を広めるため、バリスタが定期的に講座を開設している

(右下)エルサルバドルの農園にて。コーヒーの果実をひとつひとつチェックし、熟していない実を取り除く作業をしている様子


 LAのカフェでコーヒーを注文する際、豆の産地や標高、農園名、製法、焙煎所名と焙煎度、フレーバーノートまでが詳細に書かれたメニューを見かけることが多くなったのは7〜8年前のこと。それから今日に至るまで、LAに続々とオープンしているお洒落なコーヒーショップは、一杯のコーヒーにまつわるストーリーを溢れんばかりに提供してくれる。

 これは、90年代中頃からじわじわと沸き起こった「サードウェーブ」というムーブメントによるものだが、知らない人のために、ここでもう一度アメリカのコーヒーの歴史を簡単におさらいしておこう。

 まず「ファーストウェーブ」とは、19世紀後半から1960年代までの、大量生産・大量消費の時代のこと。インスタント・コーヒーも開発され、大手企業による流通が盛んになり、味や品質は重視しない安価なコーヒーが普及していった。次の「セカンドウェーブ」が始まったのは、その流れに疑問を持った焙煎士らが、高品質でこだわりのある独立系カフェをオープンし始めた60年代半ば。1966年バークレーに創業した「ピーツ・コーヒー&ティー」を始め、1971年「スターバックスコーヒー」がシアトルにオープンすると、深煎りエスプレッソとミルクで作るカフェラテなどが大人気となり、シアトル系コーヒーチェーンとしてアメリカ中に拡大した。そしてスターバックスが全米チェーン展開し、日本にも上陸した90年代中頃には、その反動からか、地域密着な店作りをしようという機運が高まり、シカゴの「インテリジェンシアコーヒー」、ポートランドの「スタンプタウン・コーヒー・ロースターズ」、ダーラムの「カウンターカルチャーコーヒー」を筆頭に、産地から新鮮な豆を直接輸入し、豆の特徴に合わせた焙煎と抽出を追求した「サードウェーブ」が始まったのだ。

 サードウェーブの特徴は、単一の産地や農家で生産した「シングルオリジン」の豆を使用すること、中煎りの焙煎が多いこと、抽出は一杯ごとにハンドドリップで淹れること、味は、「苦味」よりも「酸味」が多く語られ、 表現は「マイルド」などから、「明るい」や「フルーティー」など多岐にわたる形容詞が多く使われることなどが挙げられる。1杯の価格は、3・5ドル〜6ドルほど。

 また「カップ・オブ・エクセレンス」などの品評会により、優れた生産者の作る品質の良い豆が正当に評価されるようになり、「Farm to Cup」(農園からカップ1杯まで)が透明化された。こうして「スペシャルティコーヒー」と呼ばれる、香り、口当たり、後味共に最高の1杯が私たちに届くようになったのが今日までの流れである。

ブレンド豆にモッドバー 進化するコーヒートレンド

ブレンド豆にモッドバー 進化するコーヒートレンド

(左)今年9月には業務卸も中止し、直営カフェ拡大に集中する方針のブルーボトルコーヒー。元ハンサムコーヒーの店舗はブルーボトルのロゴに変わった

(右)カウンターカルチャーコーヒーがサンフランシスコ・ベイエリアに今年オープンした焙煎所併設トレーニングセンター。来年にはLA初のトレーニングセンターをオープンする


 サードウェーブ開始から20年近くの月日が流れた今、徐々にそのトレンドも変化している。まずは抽出方法。一時期LAでは、「ハリオV60」で淹れるハンドドリップばかり見かけたが、最近はバリスタや店の嗜好によって様々な抽出方法がとられている。

 カリタ、ボンマック、ケメックス、サイフォン、コレスの他、「ビーハウス」という日本製のドリッパーも登場。また、バリスタを必要とせず、手仕事のクオリティーを期待できるスタイリッシュな自動マシンとして、「Mod bar/モッドバー」に注目が集まっている。

 そして豆は、シングルオリジンだけでなく、ブレンドが改めて見直されている。今年20周年を迎えたカウンターカルチャーコーヒーは、6種類のブレンド豆を展開。特定の時期にしか最高の状態の豆を収穫できないシングルオリジンに比べブレンドは、銘柄ごとに味を定め、その味をキープできるように季節ごとに豆の配合を変えながら、一年中美味しい豆を提供できる。またブレンド独特の新しい味や、香りのユニークさを追求していくという楽しみ方もある。

 あなたの美味しい一杯は、ブレンド豆かシングルオリジンか、ケメックスで淹れた一杯か、モッドバーか、カフェ巡りで体感してみてはいかが?

ボーダーレスな市場は 今や3.5ウェーブ?

ボーダーレスな市場は 今や3.5ウェーブ?

(左)DTLAの人気店「Bestia」のメニューにはスタンプタウンのコーヒー入りパテも

(中央 左)バリスタを必要とせず、10台まで設営可能など、デザイン性と機能性を有した「Modbar」も評価が高い

(中央右)日本製ドリッパー「ビーハウス」で淹れるバリスタ

(右)スターバックスが昨年シアトルに「Starbucks Reserve Roastery and Tasting Room」をオープンした。サードウェーブの仲間入りでは?と話題になった


 今年2月に東京・清澄白河に海外初出店を果たしたことで話題になった、サードウェーブの代表「ブルーボトルコーヒー」は、LAのアイコン的存在だった「ハンサムコーヒーロースターズ」を昨年買収、その場所をブルーボトルLA第1号店として再オープンさせて直営カフェを増やし続けている。反対に、セカンドウェーブの代表「スターバックスコーヒー」は、2014年末シアトルに新施設を作り、スペシャルティコーヒーの豆を少量。ことに焙煎し始めた。こうして、「セカンド」と「サード」はボーダーレスになりつつある。また最近では、レストランやアイスクリームのレシピにもスペシャルティコーヒーが使われる機会が増えた。

 その一方で独自路線を行くのが、カウンターカルチャーコーヒー。彼らは、直営カフェを一切持たず、トレーニングセンターをアメリカ各地に設け、地元レストランやカフェのバリスタや個人客向けの抽出講座などを定期的に開講、コーヒーの普及と共に、コーヒーに関わる人たちを教育しながらクオリティーの維持・向上を目指している。

 今後は、真のコーヒーの素晴らしさをどう正しく広め浸透させていくか、「教育」がひとつのキーワードになりそうだ。


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取材・文・撮影 = たかつなかやこ(Patricia & Co.)
2015年10月号掲載