子どもの表現について

子どもの表現について

 親が子どもに「今日は幼稚園で何をしたの?」と聞いても、「何もしていない」、「誰とも遊んでない」と答える場合がありますよね。これは本当に何もしていないわけではありません。たくさんの活動をしたなかから、どれを話したらいいのか、すぐに言葉が出てこないからです。お母さんからすると幼稚園で「1人でポツンとしてるのでは…」と不安に感じるかもしれませんが、普段の会話のなかから子どもが発した事柄をキャッチして、無理なくその日の様子を引き出すということが重要です。

 幼少期の子どもは、見たことや聞いたことを頭の中できちんと整理して言葉にするのがまだ難しい年頃です。特に時間の概念が定かではない時期なので、起こった出来事が1日前だったのか、直前だったのか、頭の中で時間は漠然としています。もちろん記憶力はあるので、色んなことを覚えています。だからと言って、幼稚園で遊んでいた時には興味があっても、今はそうでもなかったとしたら話したい気分ではないのです。幼少期の発育過程としても大切な時期ですので、自発的に子どもから会話ができる状態をお母さんは常に保ってあげてください。

言語の違いにも注意

 アメリカで子育てをしていく上で、言語の違いにも注意が必要です。例えば、幼稚園で参加した行事に英語の先生が関わった内容の場合、親が日本語で「今日どうだった?」と聞いても、なかなか返答してこないことがありませんか?子どもは英語環境でその体験をしたわけですから、その場合、英語で質問をしてあげる方が、子どもにとっては自然に返答しやすいのです。この様に発達段階において言語能力に合わせての会話を必要とする場面もあるので、現地校に通う子どもがいるお母さんは、英語で質問することで、以前よりも会話がスムーズになるかもしれません。ぜひ、試してみてください。

心配しすぎないこと

 子どもに「誰と遊んだの?」と訊ねた時に「誰とも遊ばなかった」という返事だと、つい気になりませんか?子どもの表現は私たちが理解している意味とは違って、曖昧な表現の場合があります。例えば〝一緒に遊ぶ〟の意味合いが、楽しく飛び回っていても誰か特定の人とは遊んでいない、という意味だったり、お友達と一緒に行動はしているけれど、遊んだという認識がない場合もあります。子どもは楽しかったことをペラペラ話す子や、まったく話さない子など一人一人性格や発育過程が異なります。話さない子どもの場合は、あまりしつこく聞かずにひと息おいてみましょう。もし、状況を知っておきたい場合は、幼稚園の先生に尋ねるか、あるいは幼稚園に見学に来ていただくことをおすすめしています。

 そして、子どもから話し始めた時は口を挟まずに、ただ聞いてあげましょう。途中で質問してしまうと、頭がこんがらがってしまいうまく話せなくなってしまいます。入浴時などふっとリラックスした時に子どもから話したくなるような雰囲気作りも、親子の関係構築の一環としては大切です。

 また、親は子どもが体験したことを知っておきたいと思うでしょうが、その一部始終を知ることは不可能です。集団行動、集団生活を体験するということは、あらゆる感情も経験することであって、それが社会性を身につけていく過程でもあります。子どもの一挙手一投足を気にすることなく大らかな気持ちで見守りましょう。心配しすぎないことが子どもの成長を促します。

モンテッソーリ国際学園主宰 炭川 純代

 日本でモンテッソーリ教師の資格を取得。 1988年より幼稚園教諭として幼稚園に5年間勤務。 その後、更にモンテッソーリを学ぶために渡米。 American Montessori Society (AMS) 認定の幼および小学部の資格を取得し、Casa Montessori Schoolにて7年間勤務。 2003年にUCLAで心理学学士号取得。セラピストとして、自閉症児を支援し、障害を持つ子どもたちとその兄弟姉妹たちで結成したミュージカル“Miraclecats”のディレクターを務める。 2009年にCollege of St. Catherineにて教育学の修士号取得。 現在は、サンタアナ市に英語と日本語のバイリンガル教育の幼稚園、モンテッソーリ国際学園主宰。公益財団日本モンテッソーリ教育総合研究所実践講師。 Casa Montessori School 役員を務める。


【ウェブサイト】http://www.monteintel.com


2015年9月号掲載