テレビCMでお茶の間の人気者に

テレビCMでお茶の間の人気者に

Photo by Atsushi "2GO" Miyoshi


2014年2月から放送された瓦割りのテレビCMでブレイクしたと思われている人が多いようですが、それ以前から映画好きな人たちの間では、「アクション女優武田梨奈」の存在は知ってもらっていたと思います。ただ、あのCMが世間一般の人たちに私のことが知られる契機となりました。

 セゾンカードのCMは、もともと制作会社の人がアクションのできる女性を探していたんです。候補者の一人としてプレゼン資料用に映像撮影を行う際、いきなりクッションを渡されて「瓦を割る風にやってみてください」と言われ、その場でエアー瓦割りをしました(笑)。手応えはなく「こんなんでいいのかな?」と不安でしたが、最終的にはその映像が決め手となって私を選んでいただきました。

父の仇を取るために始めた空手

父の仇を取るために始めた空手

2014年2月から放送されたクレディセゾンカードのCMでは、瓦を割った後の仕草が可愛らしいと評判に、一躍話題の人となる

空手を始めたのは10歳の頃。父が出場した空手大会で目の前で父が負ける姿を見て、それがすごく悔しくて、「父の仇を討つ!」と子供心に誓ったのがきっかけでした。それまで父と弟が習っていたのですが、私自身はまったく興味はなく、正直、空手をやろうと思ったことは一度もありませんでした。

 女優になってからは、空手をやっていたことが強みだと感じるようになりましたね。私はスタントも全部自分でこなしますから、例えばアクションシーン一つをとってみても、「高いところから落ちてください」と言われると、女優さんは事務所の意向もあり、スタントを立てて普通自分ではやらないのですが、私は危険なシーンも自らやらせてもらうのが売りなんです。通常はケガをさせては大変だと、製作サイドの方が本人にはやらせたがらないものですが、私の場合、演じる時はいかにリアリティーを追求できるかを意識しているので、敢えて代役を立てずにすべて演じたいんです。最初からアクションを希望してこの世界に入ったので、事務所もその点は理解してくれています。

 空手は10歳からずっと続けているのですが、実は瓦割りはあのCMが初体験。偶然にも、撮影前に指導に来てくれた先生が、私の空手姿を見たことのある師範だったので、瓦割りのテストで「15枚はいけるでしょう」と言われて、実際に初めてやってみたら頭突きで15枚割れました。念のためもう一度試してみると2回目は数枚残りました。この時点で成功の確率は50/50。本番では脳への影響を考えて1日2テイクまでと釘を刺されていたので、プレッシャーたるは相当なものでした。撮影本番、1テイク目は失敗、なんと2テイク目で無事に成功!話題のCMとなりました。

女優は子供の頃からの憧れ

主演デビュー作は2009年の『ハイキック・ガール!』ですが、実は空手を始めるずっと前から、女優になりたくてオーディションを受けていました。表現することがしたくて、女優を夢見るようになったのは5、6歳の頃からです。だから空手と女優のどちらが先っていうことはないんです。デビューした当初はアクション作品に多く出演させていただいたので、逆にアクションシーンのない映画のオーディションに行くと、「なんでいるの?」と思われていましたね。だけど今は、空手と女優業の二足のわらじっていうわけではないですけど、仕事につながっていることが、とても嬉しいです。

 最近はようやく、戦うシーンがなくても呼んでいただけるようになり、色々なジャンルの作品に挑戦させていただいています。私はアクションもお芝居も好きで、その2つは私の中では一緒だと思っています。アクション女優と言われることに特に抵抗はありません。アクション=戦うではないですし、何か物を取ることもアクションだし、飲む仕草もアクションなので、どんなアクションもこなせるような女優になりたいです。

 今でもトレーニングは、ほぼ毎日欠かさずしています。でも、ダンベルをやるとパンパンに筋肉がついちゃうので、筋肉をつけ過ぎないように心がけています。食生活に関しては、とにかく食べることが大好きで、一番食べていた頃はお茶碗に5杯くらいの山盛りご飯を食べてました。ほんと、すごく食べるので、気を抜くと内臓脂肪がすぐについちゃうみたいで。つい最近も健康診断で炭水化物とか脂質の取り過ぎで、内臓脂肪、中性脂肪が多いって病院の先生に怒られちゃいまして(笑)。今はマネージャーさんにも気をつけるよう言われているので、少しは気にしていますが、ロサンゼルスに到着してから食事があまりに美味しくて、いっぱい食べ過ぎちゃってます。ジャンクフードが大好きなので、身体に悪そうな物ばかりが目に入って、しかも必ずコーラかスプライトのLを頼んじゃう。昨日もハードロック・カフェに行って、大きなパフェを全部平らげちゃいました(笑)。

夢はハリウッド映画デビュー

ここ1、2年はありがたいことにアジア作品に出演させていただく機会が多くなってきました。今は女優として片っ端からあらゆる役を演じてみたい。そして色々な国に行って色んな現場を見て、もっと世界に出て行きたいという気持ちが強くなりました。女優になってから、いつかは海外の作品に出てみたいという密かな野望はありましたが、実際に海外の人と仕事をすると、カルチャーショックもありました。海外では映画の撮り方が全然違うし、作品を作っていく空気感も違いますよね。日本では、「きっちりこの時間に始めて、時間がなかったら昼ご飯抜きで」っていうスタンスで皆、動いていますが、海外では良い意味で余裕があるというか、ピリピリ感があまりないんです。朝7時に集合って言われたのに、8時ぐらいにならないと来ないので、当初は戸惑いましたが、そういう空気感で作るのも楽しいなと思えるようになりました。世界には無数の映画があって、無数の作り方があることを実感。さらに海外に出て行きたいという意欲が湧いてきました。

 今回は映画祭に出席するために生まれて初めてロサンゼルスに来ましたが、街を歩いているだけで、映画で観ていた世界があちこちにあるので、すごく興奮しています。ハリウッドでは、ハリウッドサインを見て、「皆これに憧れて来るんだよな」と思いながら一気にテンションが上がりました。

 実は以前ハリウッドのオーディションを受けたことがあるんです。その時は最終審査の3人までに残ったのですが、日本人はどうしても実年齢よりも幼く見えるみたいで結局その役はダメでした。最終的にはアジア人を探していたオーディションだったのに、アメリカ人が選ばれ、目に見えない壁がいくつもあるのだと妙に実感しましたね。

 それと面識はないのですが、私のまったく知らないところで『アベンジャーズ』のジョス・ウェドン監督が、「武田の『ハイキック・ガール!』が好きだ」と言っていただいているようで、そんなことも含めて、やっぱり映画の本場であるここアメリカでいつか映画を撮りたいですね。それが目下、私にとっての大きな夢です。

不器用なまでに役に没頭

不器用なまでに役に没頭

Photo by Atsushi "2GO" Miyoshi

2015年9月27日、Japan Film Festivalの最終日。アラタニ劇場にて舞台挨拶やトークショーにも参加。 今回の参加作品の中から『かぐらめ』で主演女優賞を受賞した武田梨奈さん

今回、ジャパン・フィルム・フェスティバル•ロサンゼルスで上映された『かぐらめ』は、伝統芸能「獅子神楽」を題材にした作品です。ああいった田舎の女の子の役は何度か演じたことがありましたが、今回は神楽を舞わなければいけなかったので、今までで一番難しい役どころでした。最初は獅子を被る前までは私が演じて、その後はスタントでやりましょうということでした。でもそれだけは絶対に嫌だったので、神楽の先生に1カ月前からみっちり教え込んでもらいました。顔が見えない舞を、私がやらなくてもわからなかったのかもしれませんが、常に作品にはリアリティーを出したいという信念で向き合っているので、全部自分で演じきれて良かったです。実際には獅子は重いし、口でくわえて動かさないといけないので、毎日、首がパンパンに張って動かなくなるくらい筋肉痛との戦いでしたね(笑)。

 この作品は伝統芸能の継承を考える物語ですが、私自身も父から空手を受け継ぐような経験をしていたので、この映画に投影できて共感する部分がありました。本来の私は不器用であれもこれもとなると要領よくできず、一つのことに集中しちゃうタイプで、撮影中はずっと役に入り込んじゃうんです。撮影期間は2週間と短かったのですが、この役は今までで一番感情移入した作品になりました。

 お芝居をやっていると楽しいだけじゃなく、精神的に大変な時もありますが、映画祭や劇場でたくさんの人に観ていただけることが一番の幸せですね。観た人から感想を聞いたり、「(作品に)背中を押してもらえた」と言ってくださったりすることで、私自身も救われています。

ジャッキー・チェンが目標

将来一番の目標は、憧れのジャッキー・チェンさんみたいになることです。アクションからすべて自分でこなしているのもそうですが、新たなアクションのジャンルを切り開いたパイオニアでもあるので、私も誰かの真似をするのではなく、今までにないジャンル、そしてアクションの世界を開拓していきたいなと思っています。

 日本人では、武田鉄矢さんに憧れています。小さい頃から武田さん主演の『金八先生』シリーズのドラマや映画を観て育ちました。最近ではコンサートや握手会には一ファンとして行ったりしています。いい意味で人間臭いところが好きなんです。普段ドラマなどを観ていると、「そんなキレイな涙は流さないでしょ」って自分で突っ込んじゃうくらい。だけど、武田さんは泣くシーンで涙よりも鼻水を全力で流していたんです。そう、本来、人間はこういう姿なんだと、現実を見せられた気がしました。そんな人間らしさを表現できる武田さんを見ていると、心底かっこいいなと思います。私も武田さんみたいに、どこか人間臭かったり汚い部分を表現できる役者になりたいです。

 アクションでも、ジャッキーさんみたいなダサかっこ良い役や、キックやパンチで相手を翻弄していく役ではなくて逆にめちゃくちゃにやられる側をやってみたいですね。キックやパンチで戦って女性がスタイリッシュに決める映画はたくさんあると思いますが、女性がボコボコにやられて倒れるアクションシーンは今までにないと思うので、そういうかっこ悪い役や、人間じみた役を極めていきたいです。

 将来の夢はハリウッドの舞台に立つこと。今度はハリウッド映画の出演者としてここに戻ってきたいですね。

武田梨奈 最新情報

主演映画『かぐらめ』
山梨、富士山麓の小さな町の伝統芸能「獅子神楽」を題材に、「伝統芸能の継承」、「高齢化社会問題」、「家族の関係性」などをテーマに描かれた、心温まる感動の物語。 【2015年10月24日公開】

主な出演作品
■映画
『ハイキック•ガール!』 2009年 公開
『デッド寿司』 2013年 公開
『祖谷物語−おくのひと−』 2014年 公開
『原宿デニール』 2015年 公開
『木屋町DARUMA』 2015年 公開

■テレビ
連続ドラマ『ワカコ酒 Season2』
2016年1月8日放送スタート/BSジャパン

■【オフィシャルブログ】 りなの「黙りな」日記 http://ameblo.jp/rina615/
■【2016年カレンダー】発売中 http://www.sma.co.jp/artist/profile/index/147


武田梨奈 Rina Takeda

1991年6月15日生まれ。神奈川県横浜市出身。10歳の時に空手大会に出場した父の負ける姿を目の当たりにし、「父の仇を取る」と一大決心して空手道場に入門。2003年に第35回全関東空手選手権大会小学6年生の部で優勝するなどすぐに頭角を現し、現在は琉球少林寺流空手道月心会の黒帯2段。得意の空手を生かして2014年2月から放送されているセゾンカードのテレビCMで、頭突きによる瓦割りを披露。主演デビューは2009年にオーディションで主役を勝ち取った映画『ハイキック・ガール!』。dTVオリジナルドラマ『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN 反撃の狼煙』の第3話において、再びリル役を熱演。10月には映画『TOKYO CITY GIRL』、『木屋町DARUMA』、『かぐらめ』が相次いで公開され、幅広い役柄を好演し人気を博している。2013年に日本俳優連合主催の第1回ジャパンアクションアワードで最優秀ベストアクション女優賞を受賞


2015年11月号掲載