秋の特選インタビュー|ものまねアーティスト/シンガーソングライター 青木隆治氏

秋の特選インタビュー|ものまねアーティスト/シンガーソングライター 青木隆治氏

聴く者を感動させる「奇跡のものまね」と称され、近年はものまねアーティストだけでなく、Face名義でミュージシャンとしても活動している。小東京でのライブ直後に近況を伺った。

子供の頃から歌手になるのが夢

 もともと子供の頃から歌手になるのが夢で、小、中、高の卒業文集には「歌手になりたい」といつも書いてたくらい憧れていました。高校を卒業して。歌手を目指しながら、アルバイト生活を送っていた時に、たまたま番組プロデューサーに「テレビに出てみない?他人様に顔を覚えていただける機会になるから」と、声を掛けていただいて軽いノリでものまね番組に出たのが始まりでした。それが24歳の時です。

 父親のツートン青木は、ダンプカーの運転手をしながらものまねをしていたのですが、僕が高校生の時にものまねタレントとして一本立ちしました。でも当時はいきなり本業を辞めて、そんなことを言われても「ちょっと待って生活どうするの?」って感じで正直納得いきませんでした。ちょうどその頃、思春期の僕は、鏡の前で古畑任三郎の真似をしている父を見ては、「ふざけてるな、この親父」と思っていましたね。学校から帰ってきて、家にそんな父親がいたら誰でも本当にキレますよ(笑)。特にうちは父子家庭で、6つ年下の妹の授業参観には僕が行くような家庭だったので、なおさらだったのかもしれません。それからは、父のことを毛嫌いするようになったんです。「歌ってると言っても、所詮人の真似でしょ。自分の声で勝負してないじゃない」と、当時は呆れていました。

 だけど父はそんな僕のことをわかってくれていたので、「こっち(ものまねの道)には来るな。お前は俺と違うから、歌だけやってればいい」と言われて育ったので、大学受験や就職はまったく頭にはありませんでした。ましてやものまねをやろうなんて…夢にも思っていませんでした。

 高校の頃、一度全部が嫌になって、ちょっとグレた時期があったんです。自分の力ではまだ稼げないし、家を出て行けと言われたら終わりだし、何も言えないなかでツッパってたんでしょうね。小さな抵抗で家に帰らなかったりして、他人に迷惑をかけたこともありました。今となっては若気の至りでしたね。

きっかけは、ものまね番組出演

きっかけは、ものまね番組出演

ライブ後のインタビューで、「生まれて初めてのロサンゼルスでしたが、気候はいいし、人が温かいですよね。また、来たいですね」と語る
Photo by Atsushi "2GO" Miyoshi

 2005年に初めてものまね番組に出場させていただきました。ポルノグラフィティの『サウダージ』という曲をものまねで歌わないといけなかったのに、ものまねをしないでそのまま自分の声で歌ったんです。僕としてはただテレビに出て顔を覚えてもらえたらそれで十分だったし、ものまね自体をちょっと小馬鹿にしていた部分もあったんでしょうね。だからスタジオに入る時もスーツケースを引っ張ってタンクトップに短パン、サングラスって恰好でろくに挨拶もせず、挙句の果てにものまねもしないで帰るみたいな、とても生意気で最悪な態度でしたね。

 ところが、その番組のトリでコロッケさんのものまねを生で見た時に、衝撃が走りました。本物のエンターテインメントを目の当たりにして、ゾクゾクっと鳥肌がたったんです。それが契機となって、ものまねを真剣にやってみようと腹をくくりました。コロッケさんと出会っていなかったら、間違いなく今日まで続けてこれなかったでしょうね。

コロッケさんとの出会いが転機に

 コロッケさんとは初めて番組で共演した時からずっと10年くらい公私共にお付き合いさせていただいていますが、本当にすごい先輩なんです。よくわからない若造が、突然楽屋を訪ねて行って、初対面でいきなり「飯連れてってください」って言ったんですよ。普通の人だったら怒るんでしょうけど、コロッケさんは優しく「行こうか」って答えてくれました。そして、ものまね番組なのにものまねをしなかった生意気な自分に、「お前は実力を持っているんだから、挨拶と身なりはキチンとしなさい」と諭してくれたんです。あの時、真剣にコロッケさんの言葉を聞けていなかったら、僕はきっとダメ人間になっていたでしょうね。その瞬間、僕の中でコロッケさんに対する気持ちが「すごい」から「尊敬」に変わりました。その出来事が、僕の人生が一変した大きな転機となりました。


ものまねアーティスト/シンガーソングライター、青木隆治氏

Ryuji Aoki■1981年1月29日生まれ。神奈川県横浜市出身。16歳の時に『NHKのど自慢』でチャンピオンとなり、翌1998年3月14日に開催された同番組のチャンピオン大会に出場して優秀賞を受賞。20代半ばからものまねを始め、2010年に美空ひばりのものまねでブレイク。その歌唱は「奇跡の歌声」と称される。2010年に「Face」名義で歌手デビュー。2013年1月29日、ものまね界初の日本武道館でのコンサート開催。ものまねレパートリーは100以上あり、和田アキ子、布施明、TUBE、尾崎豊、渡辺真知子など幅広い。2016年1月より「Face First Tour 2016」を敢行
【公式ブログ】http://ameblo.jp/aoki-ryuji/


コロッケさんとの出会いで人生が一変〜その2〜へ


2015年11月号掲載