3人に1人の子供が持つ 「胎内記憶」とは

3人に1人の子供が持つ 「胎内記憶」とは

  一昨年の4月に引き続きロサンゼルスで講演を行うのは、これで2度目です。第1回目では初の講演会とドキュメンタリー映画『かみさまとのやくそく~胎内記憶を語る子どもたち~』を上映し、大きな反響をいただきました。「胎内記憶」とは造語で、お母さんのお腹の中にいた時の記憶を指します。私は1999年頃から胎内記憶について調査を始めました。2002年から2003年にかけては、長野県の諏訪市と塩尻市で、合計3601組の親子を対象に大規模調査を行ったのですが、1620件のアンケートを回収したところ、3人に1人の子供に胎内記憶があることが判ったのです。子供が親に初めて胎内記憶について話した時期を聞いてみると、2~3歳が最も多く、4歳から少なくなっていました。その後、小学生2校74名、中学生6校827名の聞き取り調査の結果、年齢が上がるにつれ胎内記憶保有率も下がっていました。なお、長野県の大規模調査の際、園児の保護者にも調査を行いましたが、成人の胎内記憶保有率はわずか1%に過ぎませんでした。

  基本的にアンケートには、幼児は直接答えることができませんので、両親による聞き取り調査になります。子供が話す胎内記憶には「あったかかった」、「およいでた」といった子宮の中を単純に説明したものもあれば、次のように子宮の外の様子が伺えるものもあります。ある助産師さんが話してくれたケースでは、3番目の子供を妊娠している時、ふとそのお腹を見て2番目の3歳になるお子さんが、自分がお腹の中にいた時期に、お父さんとお母さんが喧嘩するたびに、お腹を内側から蹴っていたと話し始めたのです。蹴ると喧嘩が止むので、事あるごとに蹴っていたけれど、ある日、お母さんが痛いと言ったのでそれ以来、ぴたっと止めたとか。お母さんはそれを聞いて、妊娠7カ月頃に夫婦喧嘩をした時から胎動がなくなったのを思い出したそうです。

  中学生ぐらいになると、同じ夫婦喧嘩の胎内記憶であっても、客観的に捉えることが多くなるようです。両親が喧嘩していたのはどちらにも原因があるとか、公平に判断するところは、なかなか哲学的ですよね。そして成人の胎内記憶保有者は、子供に比べると少ないのですが、調査を始めた頃、80歳近くの男性から、戦時中にマラリアで熱にうなされている時に、母親の産道を通ってきたことを思い出した、というお手紙をいただいたことがあります。これは陣痛が始まってから生まれる前までの「誕生記憶」に当たるケースですが、赤ちゃんにとってお産というのは熱いらしいです。マラリアの熱と結びつき、記憶が蘇ったようですね。

雲の上から地上への世界へ 「子供が親を選んでくる」

雲の上から地上への世界へ 「子供が親を選んでくる」

日本国内はもとより、近年はアメリカやヨーロッパでも講演を精力的に行っている


 私が胎内記憶という言葉を知ったのは、元福島大学経済学部教授の飯田史彦さんが執筆した『生きがいの創造―〝生まれ変わりの科学〟が人生を変える―』(1999年 PHP研究所)という著書を読んだのがきっかけでした。退行催眠をかけると、お母さんのお腹の中にいた話をする人がいると書かれており、当時私は、胎児や新生児に感情や意志があるとは考えたこともなかったのでびっくりしたのです。そこで知り合いの助産師さんに「赤ちゃんはお腹の中にいる時から記憶があるらしいよ」と言ったら「うちの甥っ子、お腹の中は暗くてあったかかったと言っている」と返ってきたのです。さらに私のクリニックの看護助手さんは「孫が学校で作文に変なことを書いて、親が先生に呼ばれた」と言うんです。その作文を見せていただいたのですが、そこにはお母さんのお腹にいる時に包丁が刺さって、白い服を着た人に足を掴まれ引きずり出されたとありました。さらにお腹から出た後も鼻や口にゴムを通されて苦しくて泣いていたと続き、お母さんに聞いたら夢だと否定されたのだけど違うと思う、と結ばれていたのです。聞くところによると、お孫さんは逆子で帝王切開で生まれたそうです。逆子だったことは、お孫さんはもちろん、お母さんやおばあちゃんも知らなかったというのですから驚くばかりです。

 すっかり胎内記憶に興味を持った私は、2000年8月から12月にかけて、クリニックの患者さんや助産師さんたちに協力してもらい79人にアンケートを配布しました。そうすると胎内記憶に関する話がどんどん出てきたのです。その後、子供たちの記憶をまとめ、本を出版したり講演を行うようになりましたが、胎内記憶という言葉は知らなくても、なかには昔から赤ちゃんに感情や意志があるということをわかっているおばあちゃんもいて「あなたは産婦人科医なのに、今頃そんなことを言ってるの?」なんて呆れられたこともありました(笑)。

 また、色々と調査を進めるうちに、胎内記憶の他にも、出生前後の記憶には様々な種類があることがわかり「誕生記憶」、「新生児・乳児記憶」、「受精(受胎)記憶」、「中間生記憶」、「過去世記憶」などいくつか分類することにしました。なかでも、お腹の中に入る前の記憶である「中間生記憶」というのは非常に興味深く、子供たちの話を聞いていると、子供は親を選んで生まれてくることがわかります。

 私が最も印象に残っているのは、調査を始めて間もない頃に出会った母娘のケースです。あまりにも引っ込み思案な性格の娘さんなので、お母さんは非常に心配し、同時にイライラすることもあったらしいのですが、娘さんが4~5歳の頃、突然テレビに出たいと言い始め、オーディションを受けて子供番組に出演するようになると、見違えるように明るく快活になったのです。娘さんは「私はずっと女優になりたいと思っていたから、雲の上からお母さんを見た時、こんなキレイなお母さんを選んだら、夢が叶うかもしれないと思った」と言ったそうです。

 これまでの調査でも、多くの子供たちが、生まれる前は「雲の上」で神様のような存在と一緒に暮らし、地上を見ながら、生まれるタイミングやお母さんを決めてきたと言っています。ちなみに人気の高いお母さんは、第1位が「優しそうなお母さん」で、第2位は「悲しそうなお母さん」だそうです。優しそうなお母さんはわかるけれど、悲しそうなお母さんとはどういうことでしょうか。子供たちに理由を聞くと「ママに笑ってほしかったから」と答えます。

 また流産することも、病気や障害を持つことも、そして虐待をする親のもとに生まれることも、実は子供たちが選ぶのだと言います。1人のお母さんには、1万人ぐらいの子供たちが列を作って待っているそうです。つまり選ばれた子供しか地上に来ることはできない。受精の時から空に帰るまでの経験をどれだけするかが最終目標だから、たとえ流産や死産でも非常に価値があるということです。1週間と日帰りの旅行は質が違うだけで、どちらが良い悪いではないですよね。また障害や虐待は、魂を輝かせてくれる試練で、子供たちの人生の大きな目的の一つ。魂とは人間の本質で光のようなもの。善悪もなくただ存在するものです。喜びも苦しみも楽しむとは、ある意味、子供は生まれた時から人生の達人だと言えるかもしれません。

反論や批判は承知の上 データをもとに伝える事実

反論や批判は承知の上 データをもとに伝える事実

産婦人科医として今も、日々多くの出産現場に立ち会っている池川先生


 私の胎内記憶講演は、日本全国で年間120~130回にも及びます。と言っても、普段は横浜にあるクリニックで産婦人科医として働いていますので、通常は日帰りで行けるところに限定しています。ところが3年前に、サンフランシスコでアメリカで初めての講演を行ってから、海外に足を延ばす機会が増えました。一昨年9月には、エストニアで整体法を教えている日本の方から声を掛けてもらい、通訳を交えて講演を行ったのです。参加者の多くがエストニア人で、なかにはフィンランド人も混じっていましたが、ここでも胎内記憶のある方は4人ほどいらっしゃいました。興味深いことに、やはり内容は日本と同じで、お腹の中は赤黒かったとか、雲の上から滑り台を滑って地上に来たとか、神様のような人と暮らしていたという体験を話してくれました。この神様のような存在は、時として杖をついたおじいさんだったり、イエス様だったり、大仏だったりすることもあります。本当は大きな光のようですが、現世で信じている宗教や、個人の解釈でその形態を言葉にしているようです。

 私が胎内記憶の研究をスタートしてから15年以上が経ちますが、始めたばかりの頃、お話をしてくれるお母さんたちは、皆「変なことなんですが」とか「信じられないことですが」と、必ず前置きしていました。胎内記憶を話すことで、嘘つきと言われたりする子供たちもいましたし、大人の場合は、自分の記憶がおかしいとか、親や友達に否定されて口を閉ざしてしまう人もいました。

 私も研究の成果を発表する度に、たくさんの方から好意的な反響をいただく一方で、批判されることも多々あります。特に医者や科学者からは、医学の常識では胎児や新生児に感情や意志、ましてや記憶があるなどあり得ないと言われました。私自身も、学校でそんなことを習ったこともなかったし、何よりも医学の常識である「赤ちゃんには何もわからない」という説を長い間信じていたのですから、当然と言えば当然かもしれません。正直に言うと、胎内記憶が存在するのかどうかなんて誰にもわからないのです。特に大人の場合は、胎内記憶ではなく〝汚染された記憶〟とも言われます。確かに、記憶は作り上げられていくもの。しかも自分の解釈によってねじ曲げられることもあり、事実と異なる場合もあるので、立証するのはとても難しいのです。

 また胎内記憶は、占いやスピリチュアルなものと誤解されることもあります。この手の話が嫌いな人には、真っ向から否定されることも日常茶飯事なので、皆が皆、喜んで私の話を聞いてくれているとはまったく思っていません。ただ私には15年間にわたる調査から得た、統計学としても胸を張れる強固なデータがある。だから絶対の自信と確信があるし、何を言われても平気なんですよ(笑)。私は単に、たくさんの人が「胎内記憶があると言っている」という事実を伝えているだけですから。信じるか信じないかはその人の感性に任せています。

「天命」を目指し「運命」を辿る 今ある幸せに気付く

「天命」を目指し「運命」を辿る 今ある幸せに気付く

2015年9月24日、ロサンゼルス講演の様子。子連れの来場者の姿も多く見られた


 エストニアでの講演では、これまでの研究の成果を認められたと肌で感じ、非常に勇気をもらいました。台湾では既に私の胎内記憶の翻訳本が出版されていますが、今後は英語圏の国でも胎内記憶について伝えるチャンスが増えるといいですね。キリスト教の国では、流産に対する考えなど、理解を求めるのは難しいところもあるのですが、たとえ私が生きてるうちにできなくても、誰かが伝えてくれれば良いと思っています。

 現代の医学や科学では、胎児や新生児に感情や意志があるということは、まだまだ認められていませんし、基本的には言葉にして伝えるということが、必要不可欠であるとされています。しかし、そもそも問診は本人の主張を基に行っているのです。例えば患者さんに痛みがいつ頃からあるかと聞いて、1週間前からと答えたとしても、そこに確証はありません。子供たちの胎内記憶についての言葉が、真実であるかどうかがわからないのと同じで、大人たちの言葉も、いつも真実であるとは限らないのです。しかし医学の世界でも、10年前に唱えられていた説が、10年後まったく変わることもある。良いとされていたことが悪いことかもしれないし、その反対もありますよね。もし赤ちゃんは感情があるのに、言葉で伝えられないだけだという観念が世界に広がれば、お腹にいる時から治療や処置の仕方は変わってくるでしょう。そして言葉にして伝えられないという点では、意識のない患者さんや、ご老人で寝たきりの方にも応用できるかもしれませんね。

 人間は「天命」、「運命」、「宿命」、「使命」という4つの命を持っていると言われます。これはサッカーに例えるとわかりやすいのですが、「宿命」は生まれた時代、場所、時間など変えることができないもの。キックオフはセンターサークルから始まり、例外はありませんよね。そして「運命」は、試合でどう動いて、誰にパスを渡してゴールを目指すかという〝プレー〟です。これは自分の意志で容易に変えられます。「天命」はゴールで、試合の本来の目的ですね。最後に「使命」ですが、これは「運命(プレー)」を「天命(ゴール)」に繋げるものです。つまり人は「宿命」から目的である「天命」に向かって、色んな「運命」を辿っていくのです。

 胎内記憶を語る子供たちに「何のために生まれてくるのか?」と聞くと「人の役に立つため」と口を揃えて言います。ということは、人は皆、必ず誰かの役に立っているはずです。私は胎内記憶とはつまるところ、幸せに気付くための道標だと思っています。子育てで悩みを抱えている親御さんはたくさんいらっしゃると思いますが、魂を輝かせるために、楽しみや苦しみをはらんだ「運命」を辿りながら「天命」つまりゴールに向かっていることを、いつも忘れないでいただきたいと思っています。

池川明氏 著書 ・映画情報

池川明氏 著書 ・映画情報

(左)生まれた意味を知れば、 人は一瞬で変われる
出版:中央公論新社
発売日::2015年8月6日
値段:1,400円(税抜き)

「胎内記憶」、「中間生記憶」、「前世記憶」を研究した結果得た「人生を幸せにスイッチ」できるメソッド

人間の記憶がいかにいい加減なもので、しかしそれに支配されているか、そして「過去の間違った記憶」を書き換えられれば、人生は一瞬にして変えられるというメカニズムを、多くの実例を交え、わかりやすく解説する。子どもは親を選んで生まれてくる。あなたも自分の人生を選んで誕生してきたのです。つまり、すべての人が望まれて生まれてきているのです。この二つを実感できれば、どんな人生にも希望が見出せることを伝える一冊。


(中央)なぜ、あなたは 生まれてきたのか
出版:青春出版社
発売日: 2012年9月1日
値段:1,333円(税抜き)

人生でぶつかることは天から与えられた課題です。病気、トラブル、親子関係…生き辛さを抱える人が心救われる、〝生まれる前の記憶〟調査からわかった生きるヒントとは?

第1章:人生でぶつかること、すべてに意味がある
第2章:その親子関係こそ大きな学びのチャンス
第3章:だれでも「人の役に立つ」ために生まれてくる
第4章:あなたは何度でも生まれ変われる


(右)ドキュメンタリー映画

『かみさまとのやくそく 〜胎内記憶を語る子どもたち〜』


上映時間:1時間54分
初公開: 2013年12月3日
発製作・撮影・編集・監督:荻久保則男
制作:「かみさまとのやくそく」実行委員会

人はなぜ生まれてくるのか…。答えは子供たちの証言の中にあった。悩みを抱える人、過去に傷を持つ人、親との関係がうまくいかない人など、迷う大人たちが心から癒され、涙する、子供たちの優しい言葉の数々。

医学博士 池川明


Akira Ikegawa■1954年東京都生まれ。帝京大学医学部卒・同大学院修了。医学博士。上尾中央総合病院婦人科部長を経て、1989年横浜市に池川クリニックを開設。「胎内記憶」の研究発表がマスコミで紹介され話題に。その成果を医療現場に生かし、母と子の立場に立ったお産と医療を目指している。「おぼえているよ。ママのおなかにいたときのこと」(二見書房)、「子どもは親を選んで生まれてくる」(日本教文社)など著書多数。最新刊に「生まれた意味を知れば、人は一瞬で変われる」(中央公論新社)がある


文 = 砂岡 いずみ
2016年1月号掲載