大切なのは、成功体験を積み重ねること

大切なのは、成功体験を積み重ねること

 モンテッソーリ教育では、教具に触れて作業することを「お仕事」と呼んでいます。子どもの自立のためには何が必要かを具体的な練習を通して明確に示した教育法です。日常生活の練習を通じて、実際に生活の基礎能力を習得し、感覚器官を磨く感覚教育、さらに言語や数の概念などを知る知的教育、子どもの興味をさらに深める文化教育へと広がります。子どもの自主性を尊重し、個々の個性を伸ばす教育法としても知られています。

 また、ここでは子ども自身がやりたいことを選ぶ「自由」があります。皆さんもご存知のように、子どもは2歳頃から自我が芽生え始め、自分でやりたいという意識や欲求が強くなってきますが、子どもたちが伸び伸びと成長していけるように、彼ら自身に、選ばせ活動する自由を与えています。子どもにとって一番重要なのは、やりたいことを自ら選択すること。そこには必ずみんなが守らなければならないグランドルールというものがあります。それは「人を大事にする、物を大事にする、自分を大事にする」といった内容です。子どもであっても自由の裏側には「責任」があることを自覚してもらい、ルールをキチンと守れることによって自由が得られるのだと、自らのあらゆる体験によって知るのです。これは子どもだけに限らず、成人して社会人になった後も同じですよね。

先生は教える人ではなく「案内人」

 子どもは、自ら進んで体験することで多くのことを学んでいきます。その時に先生は前に出過ぎず、一人一人がちゃんと環境に馴染めているかどうか、自分の楽しいことを見出しているかどうかを注意しながら見守っています。手助けはしますが、その子が軌道に乗ったら、さらに関わることはせず手を引きます。最初から難易度が高いからといって人にサポートされながらやっていたのでは、チャレンジできませんよね。自分がやりたいことを思うように完結することで、想像力や楽しさがさらに増してくるのです。

 つい親としては手助けをしてあげたくなるかもしれませんが、それを見守るのが親の役目です。たとえ難しい作業であっても、まずはその活動に対して、正確なお手本を示してあげてください。例えば掃除であれば、モップ拭きをする時は、どこにモップがあるのか、どうやって使うのか、使い終わったらどこに片付けるのか、といった一連の流れを、お母さんがゆっくりと手ほどきすれば、案外すぐに体得できます。そして子どもが何かをやり始めたら、できるだけ手出しはせず、温かく見守ってあげましょう。最初から自分たちだけで完結できなくても、徐々に子どもができる割合を増やしていくなどの工夫も欠かせません。多少手間はかかりますが、この少しの手間がすごく価値のあることなので、時間を惜しまないようにすることが成長の糧になるのです。

 成功体験には、自身の問題解決能力が問われます。例えば「花の水やり」一つとっても、水道の水をどの角度でじょうろに入れるのか?どのくらいの水の量?など数々の工夫や経験を通して色々な問題をクリアし目標を達成していきます。そして、課題の分析、工夫こそがクリエイティビティーなのです。日々の小さな成功体験を積み重ねることが子どもの自立と共に自信を生むのです。また、安心して取り組める環境を整えてあげることで精神の安定を保ちながらイキイキと元気に、新しいことへチャレンジする意欲となるのです。

モンテッソーリ国際学園主宰 炭川 純代

 日本でモンテッソーリ教師の資格を取得。 1988年より幼稚園教諭として幼稚園に5年間勤務。 その後、更にモンテッソーリを学ぶために渡米。 American Montessori Society (AMS) 認定の幼および小学部の資格を取得し、Casa Montessori Schoolにて7年間勤務。 2003年にUCLAで心理学学士号取得。セラピストとして、自閉症児を支援し、障害を持つ子どもたちとその兄弟姉妹たちで結成したミュージカル“Miraclecats”のディレクターを務める。 2009年にCollege of St. Catherineにて教育学の修士号取得。 現在は、サンタアナ市に英語と日本語のバイリンガル教育の幼稚園、モンテッソーリ国際学園主宰。公益財団日本モンテッソーリ教育総合研究所実践講師。 Casa Montessori School 役員を務める。


【ウェブサイト】http://www.monteintel.com


2015年11月号掲載