AFC社創業30周年

AFC社創業30周年

 1986年に寿司・アジアンフードの持ち帰り専門フランチャイジー事業を行うAFC社を設立し、今年で30周年を迎えました。ここまでよくやってきたなと思うと同時に、まだまだ寿司文化はアメリカに浸透していないと感じています。

 起業した当時は、アメリカのスーパーにも惣菜コーナーが充実し始めた頃で、「ここに大好きな寿司があれば良いな」、「アメリカ人家庭にも、気軽に寿司を食卓で食べてもらいたい」という発想から、スーパーで寿司の実演販売をすることを思い付きました。そして、30年経った今でも寿司はものすごく奥が深い日本食だと思っています。

 これまでアメリカ人のお客様の好みに合わせて、アメリカナイズした商品作りを常に意識してきました。〝ハイブリッド寿司〟と名付けた商品は、トラディショナルな寿司とアメリカで生まれた寿司の融合。様々な色や形のネタを掛け合わせ、美しいプレゼンテーションにこだわった新しい寿司として、我々が開発しました。4、5年前から積極的にそれを商品構成に取り入れてから、平均50%ぐらい売り上げが伸びました。ロサンゼルスは既に寿司マーケットが成熟しきっていると思われるかもしれませんが、寿司は未だ発展途上な市場なんです。30年間で北米に3300店舗を展開するまで事業を拡大した今も、将来の可能性があるビジネスだと確信しています。

 カウンターの中で寿司職人たちがアーティスティックな商品を作り、なおかつショーケースの前にはデモンストレーターがいて、商品を紹介してサンプルを渡す。この全体的な流れが、アメリカ人にはライブシアター的に見えるんですね。要するにライブエンターテインメントと言うか、お客様とのコミュニケーションを重視しているからこそ、皆がうちのカスタマーサービスをすごく気に入ってくれているんです。

 お客様は自分たちが知らない商品にはお金をすぐには出しにくいですよね。でもその場で商品説明をして、試食をしてもらって「美味しい」と思ってもらえれば、そこから第一歩が始まります。こういうポテンシャルのあるお客様は潜在的にまだいっぱいおられます。そういう意味でもデモンストレーションを含めて、対面のカスタマーサービス、カスタマーケアはすごく大切だと思っています。そしてハイブリッド寿司に慣れたお客様が、本格的な寿司はどういうものなのかと好奇心を持ち始める。その時に日本人として「寿司とは実際にはこういうものなんだよ」と、本来の魅力を伝えられるように、究極はその段階まで持っていけたら本望ですね。

スミソニアン博物館で展示

スミソニアン博物館で展示

2015年6月25日、スミソニアン博物館でAmerican Enterprise展のオープンハウスおよびオープニングパーティに参加。同館に展示されたのは今回で2回目

 2004年にスミソニアンの国立アメリカ歴史博物館内で、我が社が紹介されました。「American on the Move」というコーナーで、全米展開する企業として商品などが展示されました。昨年は新たに始まった「American Enterprise」というアメリカに貢献した企業家を紹介する展示に選ばれました。この展示は1776年のアメリカ建国から現在に至るまでを4つの時代に分け、それぞれの時代ごとに、名を残した起業家の写真とどのような貢献をしたのかがパネルで展示されています。

 私は、1980年〜2010年の「グローバル・エラ」で、アジア人として唯一選ばれました。17人の起業家のなかには、マイクロソフト社の創業者兼会長のビル・ゲイツ氏やアップル社の創業者、故スティーブ・ジョブズ氏、投資家のウォーレン・バフェット氏、ウォルマート創業者のサム・ウォルトン氏、ナイキ創業者のフィル・ナイト氏、テレビ番組の司会者でお馴染みのオプラ・ウィンフリーさんらそうそうたる起業家が名を連ねており、今後20年間にわたって展示が続くそうです。このように超一流の方々と一緒に紹介されるというのは、改めて身の引き締まる思いがします。

 起業した当初は組合に加入していない外部の人間がスーパーマーケットでビジネスをするなんて考えられない時代でした。でも、そこを我々が突破したからこそ、日本の寿司文化が異国の地で新たな食文化として全米に広まっていったわけです。30年経った今、どんな田舎に行っても当社の商品が販売されており、そういった功績が認められたことを大変嬉しく思います。

 我々が考案したハイブリッド寿司を、今では他社も販売するようになり、最近は日本にも逆輸入され、似通った商品が出始めています。AFCはパイオニアであると同時に、この業界をリードしてきた会社でもあります。これからも先駆者としての自負を持って、その役割を担い続けていきたいと思います。

オーストラリアにも進出

オーストラリアにも進出

2011年12月にオーストラリアに進出。スーパー最大手であるウールワースマーケット内にオープンした寿司バー。オーストラリアでは初の試みとして注目を集めた。現在では170店舗まで拡大している

 2011年12月にオーストラリアに進出し、ウールワースという現地で最大手のスーパーマーケット内に現在170店舗ほど展開しています。5年程前にアメリカに寿司市場のリサーチに来たウールワース社の関係者の人たちが、AFCの店舗や商品構成、販売法などを見て、ぜひオーストラリアでやってほしいというオファーをいただきました。

 オーストラリアの寿司の歴史は実はアメリカよりも長いのですが、巻き寿司など古いスタイルが主流。同地で寿司がスーパーマーケットに参入したのはAFCが最初です。オープン当初はハイブリッド寿司を販売していたのに、2回目に視察に行った時には以前の古い商品構成に戻っていたので、軌道修正をしてまたハイブリッド寿司に戻したら、すぐ売り上げが上がってきました。ハイブリッド寿司はテクニックも時間も掛かるし、非効率的かもしれないけど、他と同じような商品構成であればわざわざオーストラリアでの展開はしたくないので、そこはとことんこだわっていかないといけません。


Advanced Fresh Concepts Corp. President 石井龍二

Ryuji Ishii■1952年1月生まれ、静岡県出身。 1982年、カリフォルニア州立大学ドミンゲスヒルズ校卒業。公認会計士事務所、食品会社を経て、1986年にAdvanced Fresh Concepts Corporation(AFC)を設立。寿司の実演販売でVONSを始め、全米のスーパーマーケット内に持ち帰り専門フランチャイズ展開し、現在、全米50州に3300店舗出店。2010年には日本食の普及貢献で農林水産大臣賞を受賞。2011年12月よりオーストラリアへ進出し現在シドニーに170店舗展開


文 = 千歳香奈子

「大好きな寿司を広めたい」情熱を傾け30年〜その2〜へ


2016年1月号掲載