「友達親子」に潜む危険性

「友達親子」に潜む危険性

 1990年代半ば以降、友達のような親子関係、つまり親が子どもに対して友達のように接しながら子育てをする傾向が顕著になってきました。親子がフランクに会話をしたり接することは一見良いことのように思いますが、近年の友達親子に見る子育てを危惧しています。

 この「友達のような親子関係」というのは、思春期を過ぎて成人に近づき、様々なことを話し合える関係にまで成長したということであれば、とても有効的かもしれませんが、セルフイメージを作る多感な幼少期においては、子どもの自立や成長の弊害になる恐れがあります。良いセルフイメージを持つことはもちろん大事なことですが、では、何が必要かというと人間が生きていくための基礎力です。それは社会性とも言い換えられますが、まずは家庭内での親子、兄弟、親戚関係などから他人との接し方や上下関係といったような疑似体験を通じて学びます。子どもにとって一番身近な家族と接することが社会性を磨く予行練習となり、親の目を通じて社会という世の中のシステムを知るのです。

親は導く存在であるべき

 子どもにとって親が相談しやすい存在であることを決して否定しているわけではありませんが、かと言って対等な友達関係ではありません。子どもを立派な成人として社会に送り出すまでの責任を果たすには、親として人として社会の秩序や道理を身をもって説いていかなければ、躾にはなりません。精神性や人格形成を養うための成長段階のモデルとして親は、そういった友達親子になってしまっては何かと示しがつきません。

 残念なことに友達親子のような関係で幼少期を過ごしたために、親を目上の存在ではなく対等な立場と認識してしまい、親を軽んじるような発言をしたり、親の言うことを聞かない、逆に何もかも親に判断を委ねる子どもたちが日本では増加傾向だそうです。

 また、近年、キレやすい子どもが話題に上りますが、これは幼児期に叱るという躾がなされていない子どもに見られがちです。何か起こった時に「怒り」の感情が顔や態度にすぐ表れてしまい、キレやすく、自分の感情をコントロールできなくなっているのです。

 昔も今も思い通りにならなかったからといって怒ったりイライラする子どもは当然いました。しかし、昨今では社会性が乏しく人間関係も希薄なため、先輩から注意されたり上司に叱られたりするだけで、自分を否定されてしまったと思い込み、それがきっかけで会社を辞めてしまう若者も少なくありません。これらが友達親子に潜む、社会のみなのかもしれません。

 現代の親子関係のあり方を考えると同時に、いつの世も親の務めとして人間教育の基礎(躾)を導く存在が、あるべき姿ではないでしょうか。

バランスを保つコツとは

 何もかも正論で親の立場から「ああしなさい、こうしなさい」と頭ごなしに言うだけでは、特に反抗期などは子どもの反発も大きくなりがちです。親が安易に同調したり、親の意見だけを主張してしまうと、子どもは何が自分の判断なのかわからなくなってしまいます。子どもがつまずいたり、失敗することは当たり前のことで、重要なのはそこから何を学ぶかということです。現代社会はインターネットや無数の教育本など、想像以上の過度な情報に、親自身が翻弄されてしまいがちです。見えない不安を募らせるよりも、子どもをどういう人間に育てたいかという明確な目標に沿って、親としての自信と誇りを持って子どもの未来を育んでほしいと思います。

モンテッソーリ国際学園主宰 炭川 純代

 日本でモンテッソーリ教師の資格を取得。 1988年より幼稚園教諭として幼稚園に5年間勤務。 その後、更にモンテッソーリを学ぶために渡米。 American Montessori Society (AMS) 認定の幼および小学部の資格を取得し、Casa Montessori Schoolにて7年間勤務。 2003年にUCLAで心理学学士号取得。セラピストとして、自閉症児を支援し、障害を持つ子どもたちとその兄弟姉妹たちで結成したミュージカル“Miraclecats”のディレクターを務める。 2009年にCollege of St. Catherineにて教育学の修士号取得。 現在は、サンタアナ市に英語と日本語のバイリンガル教育の幼稚園、モンテッソーリ国際学園主宰。公益財団日本モンテッソーリ教育総合研究所実践講師。 Casa Montessori School 役員を務める。


【ウェブサイト】http://www.monteintel.com


2016年1月号掲載