限界まで我慢しないこと 健康維持は自己管理から

限界まで我慢しないこと 健康維持は自己管理から

アメリカのスーパー・マーケットで販売されているコールドパックを使うだけで、日頃のメインテナンスに役立ちます


 今年も春キャンプの時期になりました。日米の球界では迎え来るシーズンに向けて選手たちが身体作りをするために日々トレーニングに励んでいます。そのためにキャンプで体力作りを行ったり、最終調整をするのは当然なのですが、やはり大切なのは身体のメインテナンスです。日頃から意識して行っていないと、せっかくのトレーニングが無駄になってしまうだけでなく故障の原因にも繋がります。今号は私が現役時代から今も実践している身体のメインテナンス方法について紹介したいと思います。

 私たちプロフェッショナルは自分自身の身体のことをよく知っているので、ケガをする前にどう防止するかが常に念頭にあります。一般的にはアスリートでもない限り、自分の身体の異変に気づかず、ギリギリまで痛みを我慢してぎっくり腰になったり、肩が回らなくなって初めて病院に駆け込んでその状態を知ることになります。私たちの場合、それだと手遅れになってしまいます。風邪をひいたり、ゴルフのボールが当たって骨折したり、デッドボールを受けてケガをするというような突発的なアクシデントは仕方がありませんが、例えば身体に負担をかけ過ぎてケガに繋がるような慢性的なことは、日頃から気を付けていれば、ある程度防げたり練習やトレーニングで克服できるものです。

 私が現役時代から今でも継続して行っているのがアイシング。私はゴルフをすると首がすぐ凝ってしまうんです。それをほったらかしにしておくのではなく、夜寝る前に必ずアイシングしています。現役時代は投げ終わった直後にすぐ行っていましたから、精神状態を落ち着かせる上でもとても有効的でした。一般の人でも運動やトレーニングをした日の夜には自宅でアイシングをしたり、その後、湿布を貼ったりすると効果的だと思います。例えば半身浴をする前にアイシングをしておいて、半身浴後に再度行うと血行もグンと良くなるので身体がほぐれます。毎日のメインテナンスが理想ですが、慣れないうちは「絶対、毎日するんだ!」と気負うのではなく、日常生活に取り入れやすい軽いものから始めると続けやすくなると思います。

 アイシングのやり方として効果的なのは、袋にクラッシュアイスを詰めて空気を抜いて使うのが一番ですが、そこまで本格的でなくてもWalmartやTargetで販売されている冷却剤でも代用できます。これらは冷えが15分くらいしか持続しないのですが十分に活用できます。また、冷却剤は冷凍側(表)がよく冷えますが、裏側だと凍傷にはならないので、心配な方はそちら側を使用されると良いでしょう。

 必ず運動前には温めて、運動後には15分〜20分を目安にアイシングをすることを心がけてください。運動前に温めるのは、ホットパックを使用するのが一番適していますが、それがない場合は代用案として熱めのシャワーを腰や足、肩などに当てて集中的に温めたり、ストレッチなどのウォームアップをしてから身体を動かし始めます。とにかく、動く前は身体を温めて運動後には冷やす、単純なことですがこれを実行するだけで、身体にかかる負担も、そして回復力も格段に違ってきます。

 ここでのポイントは、不調を感じてから慌てて処置をするのではなく、常日頃から身体のメインテナンスをルーティーンの一部にしておくということです。

セルフコンディショニングが鍵 インナーマッスルを鍛える

セルフコンディショニングが鍵 インナーマッスルを鍛える

ファシリティ内にパターの練習場やトレーニングマシーンを完備している

 以前は、筋肉トレーニングといえばアウターマッスルという身体の外側にある筋肉を集中して鍛えるのが主流でしたが、実は身体を守るために本当に必要なのは内側にあるインナーマッスルなのです。アウターマッスルは荷物を持ったり、重い物を持ち上げたりといった動きで日常的に使われているため、知らぬ間にトレーニングされているので特別に意識しなくても生活に支障をきたすことはありません。しかし、中高年になってくると四十肩や五十肩といった老化によって肩関節が硬くなり、炎症を起こして顕著に症状として表れます。これはもとを正せば、インナーマッスルとアウターマッスルのバランスが悪くなっていることが原因として挙げられます。自転車にもたまに油をさしてあげないと車輪の滑りが良くならないように、小さな筋肉もエクササイズをしないと一気に衰えてしまうのです。アスリートでこのような状態になる人はほとんどいないのは、若い頃からインナーマッスルとアウターマッスルを同時に鍛えているので、均整の取れたいい状態に筋肉を保つことができているからと言えるでしょう。

 アウターマッスルというのは身体全体の動きを支えている筋肉ですが、本当に身体をコントロールしているのはインナーマッスルなのです。また筋肉には大きな筋肉と小さな筋肉があって、筋肉は大きければ大きいほどエネルギーを多く消耗します。大きな筋肉は誰もが日常的に使っているものなので、日頃から必要な筋肉として備わっていますが、比較的小さい筋肉は使わなければ退化 していきます。特に肩は、肩関節周辺の大きな筋肉に比べると、小さい筋肉を動かしているようで十分な動きではないので、身体に負荷をかけすぎず日常的にどこででもできる筋肉エクササイズがおすすめです。

 肘を90°に曲げて、500mlのペットボトルを持っている手を内から外、外から内へ動かします。それを10回×2セット繰り返す簡単なエクササイズですが、四十肩、五十肩の予防にもなり、肩こりの解消にも役立ちます。

 筋肉に適度に負荷を加えて、収縮させるトレーニング方法を普段の生活の一部として取り入れ、効率良くエネルギーを使い身体を鍛錬しましょう。セルフコンディショニングの意識を高めることで、野球やゴルフでピッチングが良くなったり、飛距離が伸びてきたりするかもしれません。

日常生活の動作も トレーニングに変わる

日常生活の動作も トレーニングに変わる

長谷川氏のオフィスで毎週火曜日に治療を施す浅野吉隆, D.C.L.Ac.は、ロサンゼルス・ギャラクシーで鍼灸師のトレーナーとしても活躍。アーバインで浅野カイロプラクティック&鍼灸院を開業している

 アスリートとしてゴルフをやっていない時でも、普段から意識してこまめに身体は動かしています。30〜45分くらい早めに歩くスピードでウォーキングをしたり、軽くランニングしています。景色を見ながらジョギングをしたり、トレッドミルで少し傾斜をつけて歩くのも有酸素運動になりますよね。脈拍は個人差はありますが、110〜120/分くらいが目安でしょうか。10〜15分くらい運動してじわっと汗が出るくらいがちょうど良いペースだと思います。走って2〜3分で汗が出てくるのはちょっとやり過ぎで、そのペースで20〜30分も続けていくと人によっては脱水状態になる恐れもあるので注意してください。無理することなく週3回くらいのペースで継続することが健康にはプラスに作用します。

 毎日の散歩が日課になっている人は、意識して歩くのとそうでないのでは消費カロリーが実際に違ってきます。ペースを上げて汗をかくくらいの運動になれば、普段の散歩でもトレーニングになりえます。私自身もゴルフのラウンドではカートに乗らず歩いているので、1回のラウンドで約1万3000歩は歩いています。特にゴルフの場合、芝の上を歩くし、コースにアップダウンがあるのでちょっとした運動になりますよね。それと、ストレッチはウォーミングアップやクールダウンなど状況によって目的も変わってきますが、欠かさず行っています。

 また、ストレッチは真剣にやると汗をかくくらいの運動量になるので、きちんとウォーミングアップするだけで、ケガ予防になります。ウォーミングアップもなしに全力で身体を動かすと故障の原因になるので、徐々に身体を慣らして、それから少しずつペースを上げながら心身共にマックスに持っていくようにしてください。ウォーミングアップをやり過ぎて本番前に疲れてしまっては元も子もありませんから、最終的に「ここ」というタイミングで力を出し切れる状態がベストです。

 まずは「予防」という観点から、健康の土台となる身体、気力、体力作りをしっかりと固めていなければ何も始まりませんので、日常の生活やスポーツにおいて、身体のメインテナンスを怠らないことが生活の質を向上させることに繋がります。ぜひ、実践してみてください。

長谷川滋利/Shigetoshi Hasegawa

長谷川滋利/Shigetoshi Hasegawa

Shigetoshi Hasegawa■1990年のドラフトでオリックス・ブルーウェーブの1位指名を受け入団。プロ1年目の91年に12勝し最優秀新人賞を獲得。95年には12勝、防御率2.89の好成績を残し、オールスターゲームにも出場。97年1月、アナハイム・エンジェルスに入団、02年1月、シアトル・マリナーズへ移籍。03年はクローザーに起用され、63試合に登板し2勝16セーブ、防御率1.48。オールスターゲームにも出場した。06年1月、引退。現在は野球解説のかたわら、講演や執筆活動、自身のウェブサイト(www.sportskaisetsu.com)にコラムを展開中


●野球専用トレーニング施設
PTC Mazda(トラベルチーム)MAZDA社がスポンサーする18歳以下のトラベルチームを運営中
E-mail: PTCbaseball@msn.com

長谷川滋利さんの公式ウェブサイト: www.SportsKaisetsu.com
メジャーリーグ、日本のプロ野球など野球全般から、ゴルフ、ビジネス、自己啓発コラムまで盛りだくさん


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2016年3月号掲載