エレガントで落ち着く店内

エレガントで落ち着く店内

 京都に生まれ、子供の頃、両親に連れられて行った欧風料理レストランのハンバーグステーキが大好きだった少年は10歳で料理人になろうと決意する。高校卒業後、単身フランスに渡った広瀬陽(アキラ)氏は、ロアール地方のホテルレストランでフランス料理を学び始めた。パリに出てからは有名店のマキシムや日航ホテルで修業を積み、フレンチの神様と呼ばれるジョエル・ロブションのもとで研鑽を積んだ。その後、腕を見込まれアメリカに渡る。ロサンゼルスの有名フランス料理店をいくつか経て、1983年、地元京都に戻り、夢だったフレンチレストランをオープン。7年後にロサンゼルスへ再び戻り、数店でシェフを務めた後、1998年、山が近く雰囲気がヨーロッパに似ていて好きだったパサデナに満を持してレストラン、メゾンアキラをオープンした。早くも18年が過ぎ、今やすっかり本格的フレンチが食べられる店としてロサンゼルスの人々に知られている。

 ワインレッドの絨毯が敷かれた店内は3年ほど前に改装し、明るくすっきりとしたなかにも落ち着いた雰囲気が漂う。サンデーブランチに行くと、クーラーの中で冷やされているシャンパンが客を出迎える。グラスのエッジにさっとストロベリーをあしらってサーブするなど、さらに優雅な気分を上乗せしてくれる。お得なサンデーブランチは、大人42ドル、シニア38ドル、シャンパンなしの場合はそれぞれ3ドルオフ、10歳以下28ドル、3歳以下無料と、キッズ割引やシニア割引もあるためか客層の幅は広く、人種も様々だという。

色鮮やかな冷製アペタイザーの各皿

色鮮やかな冷製アペタイザーの各皿

 道行く人が思わず立ち止まって覗き込むガラス窓から見えるビュッフェテーブルには、見ているだけでワクワクする、季節ごとに変わる色とりどりの料理が所狭しと並べられる。時間制限がないため、のんびりと料理を写真に撮りつつ、目でも楽しみながら皿に盛っていく。

 まずは冷製のアペタイザー。この日は定番のチーズやサラミのほか、水菜や和野菜と合わせたビーフサラダ、カラフルな千切り野菜とのコンビの蕎麦サラダ、サーモンカルパッチョ、ミニ冷奴風ツナ載せ、フレッシュ・モッツァレラチーズに自家製ペストとトマトのサラダ、カリフラワーのミニムース、そしてマグロやサーモン、ナスなど野菜数種の握り寿司に稲荷寿司、太巻き、カリフォルニアロールなどの寿司も並ぶ。

 テーブルに戻ると温かいスープが運ばれる。生クリームは使用していないというミックス・ベジタブルのスープは濃厚なポタージュで、野菜の自然な甘みが優しく身体に染みていく。和風がお好みであれば、ブランチに限り味噌汁もサーブするという。

シグネチャーメニューのラムと並んで大人気の一品、肉汁が流れ出るジューシーなプライムリブ

シグネチャーメニューのラムと並んで大人気の一品、肉汁が流れ出るジューシーなプライムリブ

 2皿目、アキラシェフが自ら肉の塊の前に立ち、お好みの焼き加減、部位の部分を切り分けてくれる。13ポンドほどの豪快なプライムリブ、ターキーブレスト、この店の看板メニューでもあるラムの骨付きローストの3種類。ビーフには特製の濃厚な赤ワインソース、ラムには香り豊かなローズマリーソースが添えられる。「好きなものだけでも、3種類すべてでも、何度でもおかわりに来てください」とアキラシェフが笑顔で皿に載せる肉は、食欲をそそるベストな焼き加減。ビーフは肉汁が滴るくらいの柔らかさ、ターキーもジューシーで、ラムはしっかりとした歯ごたえとラムの風味が口の中に広がっていく。肉好きであれば至福のひとときになるに違いない。

 サイドには温野菜、ポテトグラタン、カニと洋葱(リーク)の洋風ミニ茶碗蒸し、赤味噌でマリネされたローストサーモン、クスクスとラタトゥイユ、2時間ほど赤ワインと仔牛肉の出汁で煮込んだショートリブが並ぶ。ショートリブは箸で切れそうなくらいに柔らかく煮込んである。味噌マリネのサーモンのローストなど、白いご飯に合いそうな品々はサイドと呼ぶにはもったいない存在感。

10種以上が並ぶミニスイーツは、どれも甘すぎない上品な味わい

10種以上が並ぶミニスイーツは、どれも甘すぎない上品な味わい

 ビュッフェで一番先に目に飛び込んでくるデザートのテーブルは、まるで宝石を散りばめたような華やかさを放ち、あれもこれもと気がはやる。一口サイズの各種ミニタルト、フラン、クリームブリュレ、フレッシュベリーの載ったパンナコッタ、きれいに盛り付けされた季節のフルーツ。同店で10年学び、全幅の信頼を置くシェフ・パティシエはエルサルバドル出身の女性。チョコレートは濃厚な重厚感があり、バターの風味豊かなタルトの生地はサクサクとし、繊細かつホッとする甘さ。スイーツ好きなら、ここのテーブルだけでも十分に満足がいく品揃えである。もちろんコーヒーも紅茶もタイミング良くサーブされる。

今もなお夢を持ち続け、自分自身を信じて挑戦を続ける

今もなお夢を持ち続け、自分自身を信じて挑戦を続ける

 週3回の魚市場での仕入れでは、経営者としてではなくシェフの目線で値段を気にせず買い付けてしまうというアキラシェフは、一生現場に出ていたいと言う。「シェフはパニックになったらアカン。経験がすべてである」が信条。志を持ち諦めずに進めば夢は叶うと信じていた10歳の少年は、今もなお夢を持ち続け、自分自身を信じて挑戦を続ける。毎年1年で一番忙しい母の日特別メニューも、現在アイデアが固まりつつあるという。24時間前予約制のハリウッド・ボウル用のお弁当ボックスも人気メニューの一つ。

 敷居が高いと思われがちなフランス料理に和のエッセンスを取り入れ親しみやすくし、店の雰囲気もカジュアルだがエレガント。料理のクオリティーの高さはもちろんであるが、気さくなアキラシェフの人柄もこの店の人気の秘密に違いない。

母の日特別メニュー 一例

<料金:大人$60 (ドリンク別)>

アペタイザー:冷製アスパラガスとブラタモリチーズ (他3種)

スープ:トマトと小エビのガスパッチョスープ

メイン:
●地中海産スズキのソテー
●アンガスビーフステーキとエビのコンビネーション(他1種)

デザート:母大好きの盛り合わせ

Maison Akira/メゾン・アキラ

Maison Akira/メゾン・アキラ

住所: 713 E Green St,. Pasadena, CA 91101
Tel: 626-796-9501
時間: 5:30pm〜9:00pm(火〜木、土)
    11:30am〜2:00pm(金:ランチ)
    5:30pm〜9:30pm(金:ディナー)
    11:00am〜2:00pm(日:ブランチ)
    5:00pm〜8:00pm(日:ディナー)
Web: www.maisonakira.net


取材・文=村山 房子
LA在住15年。会社員、フィットネスインストラクターと多忙な毎日でも自炊は欠かさず。
Foodieな日系人のだんなと猫2匹の明るいLAライフ。
撮影 = Emi Weinsieder
神奈川県茅ヶ崎市出身。取材からライフスタイルフォト(ウェディングやファミリー撮影)まで幅広い経験を持つシルバーレイク在住LA photographer。
ブログ✳ silverlakedays.com
インスタグラム✳ https://instagram.com/geeegu

2016年4月号掲載