私は現在、H-1Bビザにてある設計事務所で働いています。最近、同業種のB社からお誘いを受け、私としてはこのB社の方が条件も良く学べることも多いと思い、転職を考えています。B社からは、できるだけ早く来てほしいと言われていますが、どのように進めていけば良いでしょうか?

 あなたの場合、新しい雇用主(※B社)に早く動けることを優先するか、あるいは、ステータス(米国での滞在資格)を保持できることを優先するかで、手続きの進め方が変わります。

 まず、H-1Bビザは専門職ビザと呼ばれるもので、その申請を行うには、4年制大学を卒業しているか、それに相当する職務経験が必須とされます。また、職務内容が4年制大学を卒業しているか、それに相当する職務経験がなければできない複雑かつ専門的であり、4年制大学、あるいはそれに相当する職務経験を生かすことができる職務である必要があります。

 移民法上の解釈における「専門職」とは、高度で特別な知識の理論的、なおかつ実質的な適用、応用が要求される職種で、例えば建築、エンジニアリング、数学、物理学、社会学、医療関係、ビジネス関係、会計、法律、翻訳家、技術などの分野であり、その職種に就くにはアメリカにおいて通常、学士号あるいはそれ以上の学歴、またはそれに値する経験を必須とする職種とされています。これらの職種を遂行するにあたって必須とされる学歴あるいは職歴を保持し、スポンサーとなる会社がその職種を必要としているのであれば、H-1Bビザ申請の条件を満たします。

 あなたの場合、B社での合法的な就労資格を得るには、H-1Bビザのトランスファーの手続きが必要です。これは、B社が申請者となって移民局に申請書を提出することになります。この場合、毎年4月に行われているH-1Bビザの抽選の対象には入りません。申請書を提出した後、約3カ月程で認可、あるいは追加資料の請求が来ます。追加資料の請求が来た場合には、請求された資料を提出した後、約1〜2カ月で認可、もしくは却下の通知が来る流れになります。

 ここで、いつからB社で勤務できるのか?ということが問題になります。まず法的には、この申請書を移民局が受け取った時点で、働き始めることができるとされています。ただしこの場合、万一、申請書が却下された場合は、B社で働くことができなくなるだけでなく、現在の雇用主のもとに戻ることもできなくなり、却下通知に記載されている日より1カ月以内にアメリカを出国しなければならなくなります。従って、現在のステータスを維持する安全性を優先するのならば、結果がわかるまで、現在の雇用主のもとで働き続けるのが得策と言えるでしょう。そうすることで申請が却下された場合でも、現在の雇用主のもとで働き続けることに問題はなく、また、事情が許す限り、再度申請書を提出するという選択肢も残されます。結果を待たずしてB社で働き始め却下された場合は、この再申請の間、日本などの米国外で待つことになります。この場合、Premium Processing (通常の申請料に加えて1225ドルを余分に支払う)を使って申請すれば、上記の審査期間をそれぞれ15日以下に縮めることができます。

 このトランスファー(雇用主の変更)の手続きは、必ずしも同じ業種の会社間で行う必要はなく、申請者が大学で学んだ内容(専攻)が、その会社で生かすことができる役職であれば、異業種の会社間でも可能です。また、トランスファーが完了した後は、前の会社でのビザ(パスポートに貼られているH-1Bビザ)が有効な限り、B社のもとでの移民局からの認可証と前雇用主のもとでのH-1Bビザによりアメリカの出入国も可能で、日本のアメリカ大使館・領事館で面接を受けて新たにH-1Bビザを取得する必要はありません。

 H-1Bビザの最大延長可能年数は6年で、この間であれば雇用主の変更は構いません。厳密には変更後の会社で1カ月以上働いた時点で、次の雇用主への変更が可能です。

 雇用主変更の申請は、B社との兼ね合いもありますが、あなた自身のステータスを維持するということの双方をバランスよく考慮し進められることをおすすめします。


2016年6月号掲載