X-Men: Apocalypse

X-Men: Apocalypse
©20th Century Fox

キャスト: ジェームズ・マカヴォイ、マイケル・ファスベンダー他
監督: ブラアン・シンガー
上映時間: 144分
Rating: PG13(MPAA)
公開日:2016年5月27日全米ロードショー
配給会社: 20th Century Fox

X-Men史上最強のミュータントが降臨

X-Men史上最強のミュータントが降臨
©20th Century Fox


 X-Men:Apocalypse』は2011年にスタートしたX-Men3部作の2作目『X-men:Days of Future Past』(2014年)を大ヒットさせたブラアン・シンガー監督が再び手掛けている。『X-Men:Days of Future Past』は世界総計興行収入が6億1千万ドルに達した作品。トリロジー最後の『X-Men:Apocalypse』について、シンガー監督自身が「今までよりすべての面でパワーアップかつスケールアップしている。何しろ破壊するのが地球の一部ではなく地球丸ごとだからね」と言う。

 今回はX-Menユニバースのなかで最も古く最もパワフルなミュータント〝エン・サバー・ヌール〟、別名アポカリプスが長い長い眠りから覚醒して登場する。アポカリプスは時速800キロメートルのスピードで移動し、超人ハルク顔負けの怪力を持ち、ミュータントのなかでも最強と言われている。今まで人間と共存しようと人々を助け、一緒に闘いながら生きてきたX-Men(ミュータント)たちを否定し、彼らが築き上げたすべてを破壊、自らの尊大で排他的な信念を基に世界再創生を企んでいる。「未来を見抜くことができない盲目的なリーダーに導かれて創り上げられたあらゆるものを消滅させることのみが、ミュータントの輝ける未来に繋がる」としてX-Menたちを敵視する。

 エジプトの地下深くで眠り続けていたこの神のような存在のアポカリプスが『X-Men:Days of Future Past』の10年後、1983年に何千年あるいは何万年の眠りから目覚めたのだ。この悪夢のようなアポカリプスを演じるのは、オスカー・アイザック。彼は『Star Wars:The Force Awakens』(2015年)でレジスタンスのエースパイロット、ポー・ダメロンを演じた躍進中の俳優だ。2014年、コーエン兄弟の名作『Inside Llewyn Davis』の主役を演じてオスカーにもノミネートされ、突然ハリウッドの最も輝くスターの一人に踊り出た彼が名演している。

 「自分の顔が見えなくなる程ヘビーなメイクアップ、甲冑のように動きが限定される硬いコスチュームの中でいかにパワフルな悪漢アポカリプスを迫力を持って演じるかが最大のチャレンジだった。そこで思いついたのが歌舞伎の舞台。真っ白に塗った顔、眼を強調したメイクアップ。元々の顔は見えないし、幾重にもなったコスチューム(着物)に身を包んで、それでいて動きは軽く見える。すべてを最小限に押さえて最大限の表現をする歌舞伎の真髄を研究したんだ」と語る。その結果は素晴らしい。彼の鋭い眼光と役作りに感心していたらその裏には歌舞伎の影響があったのだ。

キャラクターの裏の人間性を大切にしているのがファンを飽きさせない理由

キャラクターの裏の人間性を大切にしているのがファンを飽きさせない理由
©20th Century Fox


 アメリカン・コミックの映画化は1流の監督と俳優たちが関わるので知られている。『Iron Man』(2008年)にロバート・ダウニー・Jr.が、『The Incredible Hulk』(2008年)にマーク・ラファロが、『Wolverine』(2013年)にヒュー・ジャックマンが、『The Mighty Thor』(2015年)のロキに今をときめくトム・ヒドルストンが。そしてX-Menの主要キャラクター、プロフェッサーXにジェームズ・マカヴォイ(前作のトリロジーではパトリック・スチュワート)、マグニートにマイケル・ファスベンダー(前作はイアン・マッケラン)、ミスティークにジェニファー・ローレンスとアカデミー賞受賞&候補者ばかり。それだけでもアメコミ映画がアクションとCGIに加えて質の良いドラマを入れ込もうとしているのが伺える。プロフェッサーX役のマカヴォイがX-Menにはクラシックな演劇部分があって、結構シリアスな役作りを要求される時がある。深いエモーショナルな繋がりがあって、スパンデックスのタイツを履いて空中に浮かぶシーンがあるかと思えば人間同士の深い関わりもある。そのバランスにもがいている仲間を見るのが結構楽しいんだよ」と笑っている。

 突飛なコミックのストーリーとルックスだけでは終わらせない、キャラクターの裏の人間性を大切にしているのがファンを飽きさせない理由だろう。人間の弱さ、悲しさ、それを乗り越えるための努力と闘い、その上スーパーパワーを隠し持って悪い奴をやっつけてしまう痛快さもある。

 X-Menの一番最初の映画化は16年前で、今回と同じシンガーが監督した。当時、彼は35歳。29歳の時に『The Usual Suspects』(1995年)でセンセーショナルなデビューを果たし天才監督と呼ばれた。「僕は子供の頃から一種のミュータントだった」と笑う。グループに属せないアウトサイダー感に苛まれ続けていた彼は、他と違うパワーや才能を持って生まれたがゆえに蔑視され、仲間外れにされるX-Menのストーリーにいつも惹かれていたという。X-Menの世界感を彼ほど知り尽くしている監督はいないと言う。今のキャストで6年前にスタートしたX-Menトリロジー。プロフェッサーXのマカヴォイが「アンサンブル・キャストで、主役が1人という映画ではないので、待ち時間に共演者とオフ・カメラで親しくなるチャンスがあった。アンサンブル・キャストの場合、1人くらいうまくいかない共演者が出るものだけど、この映画に関しては皆仲良しでとても有意義な6年間だった」と振り返る。マグニートのファスベンダーも「本当に楽しい6年間だった。確かにトリロジー3本の契約後にスタートして、一応これが最後ということだけど、これから先のことは神のみぞ知るだよ」と再編成もありうる空気を漂わせていた。とはいえX-Menのキャストは超多忙の売れっ子俳優ばかり。ローレンスが「これから先2年間はスケジュールが詰まっていて何もできない」とため息をついていた。


中島由紀子

Yukiko Nakajima■ロサンゼルス在住の映画ジャーナリスト。ハリウッド外国人記者クラブのメンバーとして、20年以上に渡り、世界中でスターの取材を続けている。ゴールデン・グローブ賞への投票権を持つ、3人の日本人のうちの1人


2016年06月号掲載