天井が高く黒を基調にしたモダンな店内

天井が高く黒を基調にしたモダンな店内


 牛肉大国のアメリカに本物の和牛を広めたいという使命を抱え、シンガポール、東京、イタリアに続く4店舗目として、焼肉矢澤が昨年11月にビバリーヒルズにオープンした。ほとんど口コミで広がりYelpで5つ星をキープするなど、連日予約で溢れかえる店内は賑わいを見せている。

 重厚感のあるドアを開けると天井が高くこじんまりとした店内。特注の鉄板を使用しているため煙が立ち込めることなく、黒を基調とした内装は高級感と落ち着きが漂う。

日替わり4種の希少部位

日替わり4種の希少部位

(左)ため息がもれるほど美しい和牛はタレか塩のお好みで

(右)ユッケ含む生肉3種盛り。LA店オリジナルのアペタイザーでチーズやトリュフが効果的に使われている


 日本で修行したシェフが、包丁のみですべてカットするという肉は内臓の部位以外、すべて日本からチルドで空輸。しかもA5ランクの格付けの最高級品質である。メニューはそれぞれの部位をアラカルトで選べるが、一人100ドルからのお任せコースが人気ということで、120ドルのコースを注文。本日のお任せは、3種のアペタイザーと4種の希少部位で構成される。

 アペタイザーは生肉3種盛り。和牛の生ハム、パルメザンチーズとトリュフオイル。サンタバーバラ産のウニとトリュフのスライスを載せたユッケ。和牛のヅケ、オリジナルソース添え。すべてLA店のオリジナルメニューで、日によっては若干異なる。3種それぞれ味わいがあるが、共通点はどれも口の中でとろけていくこと。この高品質な生肉はアメリカ人にもかなり高評価だとか。

 鉄板が温まるといよいよ焼き始める。上質の牛タンは微妙にサシが入っている。焼いた時にベストな味を引き出すごま油、軽めの塩コショウが肉の旨味を引き立たせ、塩ポン酢を軽くつけて口の中に運ぶと、その抜群のハーモニーに一瞬言葉を失う。続いてハラミ。ハラミは横隔膜の横の部位で赤身に近く、牛肉のなかでも低カロリーである。厚めの一切れに旨味が凝縮されており、しっかりした歯ごたえと肉の味わいを存分に堪能することができる。

スタッフの技が光るわずか3秒で返す看板メニューのサーロインの矢澤焼き

スタッフの技が光るわずか3秒で返す看板メニューのサーロインの矢澤焼き


 看板メニューのサーロイン、矢澤焼きはお任せのハイライト。目を見張るばかりの霜降り肉の薄切りは芸術的でさえある。この肉は、トレーニングを受けたスタッフが見事な手さばきで焼いて取り分けてくれる。卵スフレのような付けダレに絡めて食べると、すき焼き仕立ての濃厚さも決して脂っこくなく、一瞬にしてとろけてしまう絶品に思わず唸る。

 味が変わるということで度々、鉄板を交換。スタッフのサービスはきめ細かく端々に心配りを感じられる。

 希少部位の4種盛りはその日の仕入れによって異なる日替わりメニュー。この日はイチボ、シンシン、ミスジ、ザブトン。この名称だけでどこの部位かすぐに想像できるのは相当、肉好きなはず。赤身と霜降りのバランスの良いイチボは牛のお尻部分。3秒から5秒で片面が焼き上がり、柔らかい食感のなかに肉の甘みが光る。後ろ足の付け根の赤身がシンシン。生で見る限り結構なサシかと思いきや、さっぱりして柔らかい。前腕、3本の筋がある部位がミスジ。かなり薄めのカットであるが、しっかりと脂の旨味を感じることができる。そして寿司で言えば大トロにあたるザブトンは肩。厚めのカットで片面5秒焼くと、口の中でいつの間にか溶けてなくなるほどの霜降りである。甘すぎないオリジナルの焼肉ダレにほんの少し付けるだけで、さらに肉の旨味を感じることができる。

日本製の土鍋を使用。香り高い一番出汁をかけて食べる矢澤スペシャル

日本製の土鍋を使用。香り高い一番出汁をかけて食べる矢澤スペシャル


 シメは人気メニューの矢澤スペシャル。熱した土鍋の中にしぐれ煮にした牛肉とご飯、たっぷりのネギを焼き付けるように目の前で混ぜてからサーブしてくれる。そこにたっぷりの鰹節で取った一番出汁をかけ、わさびをちょこんと載せ、さながらひつまぶしのように食べる。出汁のきいた風味満点のあっさりとした和の逸品。

 そしてコースには含まれないが、オリジナルレシピのデザートも用意している。程よい甘みの杏仁豆腐に黒蜜をかけて、冷んやり滑らかな口当たりがクセになりそう。パンナコッタやチョコムースも人気が高い。

 現在シェフ、マネジャーら日本人5名と現地スタッフ15名で週6日夜のみ営業。今後、2階にプライベートルームも増設されるので、貸切パーティも可能。

 丁寧に和牛を扱い、アートにも見える美しい肉を常に最高の状態で提供できるように、スタッフ一同心がけている。これぞ本物の和牛を味わえる店としてきっと満足してもらえるはずだ。

焼肉矢澤 / Japanese BBQ Yakiniku YAZAWA

焼肉矢澤 / Japanese BBQ Yakiniku YAZAWA

住所: 9669 S. Santa Monica Blvd. #2 Beverly Hills, CA 90210
Tel: 310-275-2914
時間: 5:00pm〜11:00pm(火〜日)
    月曜日定休日
Web: http://yazawameat.us


取材・文=村山 房子
LA在住15年。会社員、フィットネスインストラクターと多忙な毎日でも自炊は欠かさず。
Foodieな日系人のだんなと猫2匹の明るいLAライフ。

撮影 = Atsushi "2GO" Miyoshi
日本でミュージシャンとして活躍していた経歴を持つ写真家。
LAに移り、音楽から写真へと表現方法が変わっても、精力的に活動中。

2016年6月号掲載