辛くても乗り越える強さ

辛くても乗り越える強さ

仲良し4人組。今日もたくさん遊ぶぞ〜!


 2号にわたって「魔の2歳児(Terribble Two)」についてお話ししましたが、2歳児に臆することなく成長に沿った安心できる環境を与えることで、全精神を集中して興味のあることに取り組むので、むしろこういったイヤイヤ期もはつらつとあらゆることを吸収していく従順な反面も持ち合わせていると言えるでしょう。

 ある2歳児を持つお母さんは、子どもをお風呂に入れようとしていた時に「入りたくない」と泣き叫ばれたそうです。子どもが泣くからといって入浴の時間をずらそうとすれば、さらにこの状態から抜け出すことが困難になるので、「肝心な時にお母さんの言うことが絶対だということを示さなければ、いつまでも状況は変わらない」のだとアドバイスを送りました。このままうやむやに子どもの思うがままにすることで、「お風呂に入る」という1日の生活の時間設定や目的は達成できないままになります。

 子どもはやみくもに泣いて抵抗したのですが、お母さんはなだめることもせず、じっと子どもが泣き止むのを待ちました。しかし、放っておけばおくほど、泣き声も大きくなり、待っている間も気が気でなく、自分の方が何度も折れそうになったとお母さんが後で吐露していました。

 子どもが嫌がるからといって言う通りにしていると、どこまでも際限なく親を試すようになってきます。彼らが望んでいるのは、常に一貫した親の対応なのです。それを確かめるために無意識に反抗してみたりするのですが、そういう時こそお母さんは、頑として自分の考えは変わらないということを、言葉と態度で示してあげることが重要と言えます。

 その後、泣くだけ泣いた子どもは、お母さんの所にやってきて、お風呂に入ると素直になりました。それからは「イヤイヤ」と言う回数が目に見えて減ったそうです。泣き叫ぶ子どもを放っておくという行為は、お互いに耐え難い状況ですが、それを乗り越えたからこそ得られる親子の信頼関係がそこにあるのです。

 未発達な脳の成長もこうやって日々の実践が練習となり、それらの体験から学ぶのです。成長著しい2歳児だからこそ経験したことを理解し、脳も同時に発達していきます。なので、一つ一つの子どものサイン(No!)を単に手がかかると思わず、お母さんの言うことを聞かないといけないという主従関係をしっかりと身に付けさせ、健全な親子関係を築く学びの場と捉えることで、また一つ親子の成長のステップとなることでしょう。

子育ては親子の共同作業

 本当の意味での「子ども」を知ることは、お母さん自身の転ばぬ先の杖とでもいうのでしょうか。子育ての教本となり、多少気持ちを楽にしてくれるのかもしれません。イヤイヤ期をじっと耐えて我慢するだけではなく、その時期の発達に見合った欲求を満たしてあげることで、子どもは見違えるほどお母さんに協力的になったりするものです。その時期特有の自我を通そうとわがままを言ったりもしますが、あくまで成長過程の段階と受け止め、頭ごなしに「いけません」と叱るのではなく、「わかった。こういう方法だったらしていいよ」という風に理解を示してあげることで、子どもにもその姿勢(リスペクト)が伝わります。

 また、自分のことは自分でできる環境を与えることで、大きく自己の意識が変わるため、生活に取り組む言動から変化が現れます。さらに親子の関わり合いを深めることで、子どもと相反する関係ではなく、互いを良い方向に導き、成長を共に重ねる共同作業となるのです。

モンテッソーリ国際学園主宰 炭川 純代

 日本でモンテッソーリ教師の資格を取得。 1988年より幼稚園教諭として幼稚園に5年間勤務。 その後、更にモンテッソーリを学ぶために渡米。 American Montessori Society (AMS) 認定の幼および小学部の資格を取得し、Casa Montessori Schoolにて7年間勤務。 2003年にUCLAで心理学学士号取得。セラピストとして、自閉症児を支援し、障害を持つ子どもたちとその兄弟姉妹たちで結成したミュージカル“Miraclecats”のディレクターを務める。 2009年にCollege of St. Catherineにて教育学の修士号取得。 現在は、サンタアナ市に英語と日本語のバイリンガル教育の幼稚園、モンテッソーリ国際学園主宰。公益財団日本モンテッソーリ教育総合研究所実践講師。 Casa Montessori School 役員を務める。


【ウェブサイト】http://www.monteintel.com


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セルフイメージの重要さ〜vol. 5 〜へ
「友達親子」に潜む危険性 〜vol. 6〜へ
恐るべき2歳児とは 〜vol. 7〜へ
子は親の鏡⇄親は子の鏡 〜vol. 8〜へ


2016年4月号掲載