現代版ターザンがジャングルへと舞い戻る

現代版ターザンがジャングルへと舞い戻る
©Warner Bros. Pictures

キャスト: アレクサンダー・スカルスガルド、マーゴット・ロビー他
監督: デヴィッド・イェーツ
上映時間: 109分
Rating: PG13(MPAA)
公開日:2016年7月1日全米ロードショー
配給会社: Warner Bros. Pictures

現代版ターザンがジャングルへと舞い戻る

現代版ターザンがジャングルへと舞い戻る
©Warner Bros. Pictures


 1912年に小説第1弾『Tarzan of the Apes』が出版されて以来、世界中の老若男女が親しんできた〝ジャングルの王者・ターザン〟シリーズ。出版された小説が21、ショートストーリーが21、漫画雑誌に掲載されたシリーズが26、そして1918年から2014年の約100年間にサイレント映画も含めてなんと200本の映画が作られたという。

 ターザンの本名はジョン・クレイトン/グレイストーク卿。彼が英国人貴族だという設定ゆえ、原作者がアメリカ人だと聞いて驚く人もいる。エドガー・ライス・バローズはアメリカがまだ植民地だった頃に移住して来た清教徒の子孫で「英国人100%のアメリカ人」(バローズの言葉)だが、このシリーズに時々登場するハイソサエティーを知っている家柄出身ということではないらしい。

 今回の『The Legend of Tarzan』(邦題『ターザン:Reborn』)ではスウェーデン人俳優のアレクサンダー・スカルスガルドがターザンを演じているが、彼は19人目のターザンだ。スカルスガルドは「ターザン映画は何本も作られているけど、今回の〝ターザン〟は今まで見たことがないものと言える。原作の逆を行っている感じの部分が僕は気に入った。原作はジャングルで生まれ、動物たちを家族や仲間としてワイルドに育ったイギリス人が、文明社会の形式を重んじる環境に馴染もうとすることからドラマが生まれる。そこには色々な確執やユーモアが生じ、自然とは?文明とは?と考えさせられる運びだ。だがこの作品はターザンが英国に戻り、ジョン・クレイトン/グレイストーク卿として暮らし始めて既に10年以上の年月が経ち、首相と一緒にお茶を飲むような立場になっている。そんな英国紳士としての日常からアフリカのジャングルに戻って行くんだ」と教えてくれる。果たしてグレイストーク卿は故郷アフリカのジャングルに帰り、自分の中に眠るワイルドで自由奔放なターザンを呼び起こすことができるのか?政府の要望でコンゴに戻るが、その裏には恐ろしい罠が仕掛けられていた、とその後の物語は展開する。

 監督はハリー・ポッター・シリーズの最後の4作を手掛けたデヴィッド・イェーツ。娯楽大作のなかにヒューマンドラマを入れ込んで深い映画に持ち上げるのが上手い。監督自身は英国人、ターザン役がスウェーデン人、ジェーン役がオーストラリア人のマーゴット・ロビー。『The Wolf of Wall Street』でレオナルド・ディカプリオの妻を演じて一躍注目を浴びた女優だ。そして自分の利益のためにターザンを騙し危険に陥れ、妻ジェーンを人質にしてターザンを苦しめようとする悪役には、オーストリア人のクリストフ・ヴァルツ。実在のアメリカ人ジョージ・ワシントン・ウィリアムズ役にサミュエル・L・ジャクソンなど、脇を固めるキャストも素晴らしい。

100年経っても色褪せない面白さ

100年経っても色褪せない面白さ
©Warner Bros. Pictures


 原作のなかでバローズが記述したターザンは、長身でハンサムでグレーの眼をした白人。日焼けしていて髪は長く、優れた運動神経の持ち主、となっている。いつも上半身裸のターザン役だから、スカルスガルドの鍛え抜かれた見事な肉体は、バローズの描写そのものだと言える。その上名優ステラン・スカルスガルドの息子といえば演技力も保証付きだ。

 スカルスガルドは7年も続いたテレビリーズ『True Blood』のなかでヴァンパイア役を演じたが、何回か全裸を見せたのでも騒がれた。そこでターザン役でも全裸を披露するのか?ということが話題になっていて期待しているファンも多いと聞く。「ヨーロッパでは役者が演技の一部として裸になるのに抵抗する人はいないけれど、意味無く脱いだらそれはただの露出狂だろう」と本人は笑う。

 ジャングルの中を走り回る、木から木へ飛び移る、高い絶壁から川へ飛び込むなどのCGIを使ったアクションの迫力。動物たちとの関わりや優しく平和なジャングルの中での友情の再確認、そして生死を懸けての闘い。30年代、40年代に色々な名ターザン・シーンを提供してくれたジョニー・ワイスミューラーはオリンピックで金メダルを5個も取った水泳選手だった。彼はどんなシーンでも腰みのしか付けていなかったが、今回のターザンは膝までのスパッツを履いていて腰みのは付けていない。時代の変遷でターザンのファッションも変わる。特に今回のターザンは英国ハイソサエティーからジャングルに戻って来たということで気品も漂っている。今までのターザンは英語がきちんと喋れなかったが、今回は貴族的なクイーンズ・イングリッシュまで喋るのだ。

 原作者のバローズはワイスミューラーのターザンには至って満足していたそうだが、製作側の会社(当時はMGM)が決めた「ユー、ジェーン、ミー、ターザン」という程度の低い台詞にひどく不愉快な思いをしていたと記録されている。今回のターザンはルックスも話す英語も英国紳士らしいから、バローズはきっと天国でほくそ笑んでいるに違いない。

 ターザンのストーリーが100年もの間存続し、様々な形で語り継がれる理由の一つは、時代に合わせて多少調整しても基本的なストーリーの面白さが変わらないということだろう。英国人として生まれた1歳の赤ちゃんが両親を失い、類人猿に育てられてターザンとしてジャングルの王者になっていくその過程も夢があってファンタスティカルだし、英国貴族の出身だというある種の現実的背景も変化させ、より面白みを加えることができる。これからさらに100年、人々に夢を与えてくれるだろう。


中島由紀子

Yukiko Nakajima■ロサンゼルス在住の映画ジャーナリスト。ハリウッド外国人記者クラブのメンバーとして、20年以上に渡り、世界中でスターの取材を続けている。ゴールデン・グローブ賞への投票権を持つ、3人の日本人のうちの1人


2016年07月号掲載