ゴルフから学べるマーケティング術とマインドマネージメント

ゴルフから学べるマーケティング術とマインドマネージメント

PGAツアーとは北米地域における男子プロゴルフツアーを運営する団体およびそのツアー名。試合数は年間40以上にものぼる

 アメリカでは1年中PGAツアーが開催されていますが、日本でもゴルフシーズンが始まりましたね。マスターズ・トーナメントのようなメジャーな大会が始まるとアマチュア界でもシーズン到来とばかりに数多くの試合が開催され、各地で盛り上がっています。

 今号はゴルフから学ぶマーケティング術などについて話したいと思います。

 アメリカでは日本と比べ物にならないくらいゴルフの大会(ツアー)が数多く開催されています。そしてそれを支援するスポンサーも名だたる会社が名を連ねていますが、メジャー大会の一つである米PGAツアーは試合数、賞金総額、放映権料や入場料などの収益規模では世界中にゴルフツアーが数あるなかでもダントツと言えるでしょう。もともと米PGAツアーはCBSやNBC、そしてゴルフチャンネルでしか放送されていなかったので、人気スポーツが既に確立していたアメリカではまったくといっていいほど注目度が低い存在でした。一時期はタイガー・ウッズ選手のスキャンダルや成績不振、そしてリーマンショックが引き金となって、スポンサー探しに苦戦していた不遇の時期もあったのだとか。今では、若手選手の登竜門のような売り出し方やプロモーションには目を見張るものがあります。

 リッキー・ファウラー選手やローリー・マキロイ選手などを起用したCMが話題を呼びましたね。そこからヒーローが生まれ、試合までのカウントダウンでファンの高揚感を最高潮に持っていく話題作りは見事なまでの演出です。もちろん、彼らは実力ある選手ですが、タイガーのように圧倒的実力を誇っているかというと、そうではありませんでした。でも彼らの人気を煽ることで話題性を誘い、スポンサーシップをも獲得してきたのです。

 では、その人気って勝手に出てくるものなのでしょうか?いいえ、実際にはなかなか難しい。だからこそ米PGAツアー(主催者)側がその火付け役として仕掛けているのです。特にゴルフでは、服装からすべての物にPUMAやNIKEなどのスポンサーが付くので、若手の人気プレイヤーともなれば全面に押し出していくことは、両者にとってプラスとなっていることでしょう。大切なのは、注目される大会になること。スター選手がもてはやされ、人気や注目が集まることで視聴率も比例して上がり、米PGAツアーの存在価値も高まり、そこでプレーすること自体が、世界中のプロゴルファーの夢と言われるまでに発展していきました。

 日本では1973年(女子ツアーは88年)からツアー制度が取り入れられましたが、米PGAツアーとは異なり興行的にうまくいっておらず、このままの運営状態ではいずれ破綻する可能性が高いと言われています。同様に日本のプロ野球界でも、スポンサーが付かないからテレビで放映しないというのが現状なのかもしれませんが、たとえ一時的に赤字になったとしても露出を増やしてファン(ゴルフであればギャラリー)を巻き込んでいかない限り、人気の陰りはくい止められないと思うんです。

 私たちが子供の頃、読売巨人軍の試合は全国で放映されていたため、いまだに当時の選手の名前をフルネームで口にすることができるくらい、鮮明に覚えていますよね。それがちびっこの憧れや目標となり、人気と共に競技人口が増えて時代を独占してきました。米PGAツアーはこれらをやってのけ、今ではすっかり持ち直しました。

 特に日本の球界は学ぶべきポイントが多々あると思います。人気が出る→資金が集まる→スポンサーが付く→良い選手がもっと集まるという風に好循環になっていくようなビジネスモデルを作らなければならない。タイガーのようなスター選手の出現をただ他力本願的に待つことなく、主催者側から仕掛けていって成功したビジネス(興行)モデルと言えるのではないのでしょうか。

日本人向きの競技とは

 ゴルフは日本人が世界で上位を狙えるスポーツだと私は思います。ですが、ゴルフ界における日本人選手の活躍は韓国人選手が台頭しているのに比べると、残念ながら押され気味ですよね。ここでお伝えした通り、ゴルフは体格やパワーが求められる競技ではなく、メンタルで勝負が左右されるので、特にコツコツと反復練習ができる日本人には最適なスポーツです。今やヨーロッパからゴルフの本場と言える場所に成り代わったアメリカで、日本から腰を据えて海外トーナメントに積極的に出場する若手選手の出現に期待したいですね。

ゴルフは精神修業!?

ゴルフは精神修業!?

2014年男子賞金ランキングで1位、15年は2位に輝いたローリー・マキロイ選手はどんなショットを打っても一喜一憂せず、平常心を保っている


 以前から週に3〜4回はラウンドしていることを話題にしていますが、ゴルフを始めて一番鍛錬していることは何でしょうか?巧みなパターの技を磨くわけでもなく、スイングのフォームでもありません。私にとっては一糸乱れぬ精神力と集中力を保つことなのです。

 野球の場合、攻撃と守りのイニングが交互にあるので、そのタイミングで精神モードのオンとオフを切り替えたり、ウォーミングアップをして肩をならし、一気に気持ちを高めて本番に持っていくことなどは、そう意識しなくてもできていたように思います。しかしゴルフでは、仮に1ホール目から気持ちを最高潮に持ってきて、2ホール目もかろうじて調子を保てたとしても、3ホール目くらいから一気に崩れてしまうこともあります。ゴルフをプレイする上で最も重要とされるのは平常心を心がけること。そのためプレイ中も、バーディーパットが決まった時などは素直に喜びを表現しても良いでしょうが、悪かった時には絶対に怒りをあらわにしてはダメなんです。

 ここ数年の私の試合成績は、とても安定しているのですが、これは技術や腕が上がっただけではなく、プレイ中の精神状態が落ち着いてきたからだと自分なりに分析しています。世界的にゴルフ人気は高く、アマチュアでもプロをも凌ぐようなスコアを叩き出している人は、そこかしこにいます。優れた技能と飛距離を誇る人はあまたといるのでしょうが、そのなかで群を抜くような戦績で世界で活躍するプロになれる人と、アマチュアに留まる人との違いは何でしょうか。

 プロのツアーを観ていて思うことは、タイガーやマキロイのようなトップ中のトップは、大事な一打を外して悔しがっている場面をたまに目にする時もありますが、基本的には、どんな大舞台であってもいつも冷静に平常心でプレイしています。パーで決めても小さなガッツポーズだけであったり、ボギーを叩いても、パターが入らなくても涼しい顔で怒りの表情は見せないんです。スコアを考えて一喜一憂するのではなく「残念だけど、やることはやった」、それで終わりにして、次の一打に向けて真っ先に気持ちを切り替えています。

 自分のミスから気持ちまで引きずられないようにしなければ、どんなに優れた選手であっても、次のショットはやはりそれが引き金となって大きなミスを誘発することもあるのです。例えば、優勝争いをしているような時に外したパットを覚えていたりすると、次に打つ時にも失敗打の時の感覚が抜けず、イップスになってしまうことがあります。こういった感情の露呈が、ゴルフのような心理戦でもある競技では、足元から崩れていく要因にもなりえます。

 既に技量を備えているアマチュアであっても、プロとの大きな違いは、どんな条件であっても安定したスコアが出せることと、強靭な精神力を持っていることです。ゴルフは精神的にタフでないと、長続きしないスポーツです。誰にでもボールを当てることがすぐにできる競技なので、とっかかりとしては入りやすいかもしれませんが、ハマってしまうとやればやるほど奥が深いんです。

 常に自分自身と向き合い、悔やんだり、落ち込んだり、喜んだりしながら、窮地に追い込まれてもいいように精神鍛錬を積まなければゴルフは上手くなりません。普段の生活においても、すぐに怒りに直結するような気の短い人は、ゴルフはなかなか上達しませんから、私も日頃からマインドマネージメントとして平常心を保つことを心がけるようになりました。

 ゴルフは練習をしたらした分だけ自分に返ってくるので、私にとって嘘をつかない、心身ともに己を鍛えてくれるスポーツです。ゴルフを通じて、プレイだけでなく人生そのものを学んでいるのだと思います。

長谷川滋利/Shigetoshi Hasegawa

長谷川滋利/Shigetoshi Hasegawa

Shigetoshi Hasegawa■1990年のドラフトでオリックス・ブルーウェーブの1位指名を受け入団。プロ1年目の91年に12勝し最優秀新人賞を獲得。95年には12勝、防御率2.89の好成績を残し、オールスターゲームにも出場。97年1月、アナハイム・エンジェルスに入団、02年1月、シアトル・マリナーズへ移籍。03年はクローザーに起用され、63試合に登板し2勝16セーブ、防御率1.48。オールスターゲームにも出場した。06年1月、引退。現在は野球解説のかたわら、講演や執筆活動、自身のウェブサイト(www.sportskaisetsu.com)にコラムを展開中


●野球専用トレーニング施設
PTC Mazda(トラベルチーム)MAZDA社がスポンサーする18歳以下のトラベルチームを運営中
E-mail: PTCbaseball@msn.com

長谷川滋利さんの公式ウェブサイト: www.SportsKaisetsu.com
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2016年5月号掲載