原発施設内に潜入取材

原発施設内に潜入取材

これだけの量で380円だ

 今回は、日本国としてのチャレンジの話をしよう。それは福島第1原発廃炉だ。震災から5年経ち、どんな状況か、敢えて専門用語は使わず、わかりやすく伝えたい。

 昨年9月4日、日本でヒットしたドラマ『下町ロケット』の放送が始まろうとしていた時、福島第1原発がマスコミに公開された。フリージャーナリストには2人分しか参加できる枠がなく、それ以上は抽選だったのだが、なんと2人しか応募がなく、俺も現場に行けることになった。

 原発事故収束3原則として、〝止める、冷やす、封じ込める〟がある。まだまだ先が見えない。今は、地下水の流入もあって、特に汚染水が溢れかえる状況だ。

 今回のメインは汚染水対策で、地下水も含め、原発施設周囲の地中内にコンクリートの壁を作ったり、井戸のように汚染水を汲み上げるシステム、貯水タンクの状況をモニターし汚染水を浄化するシステムができたという。まさに、汚染水バルブシステムの話だった。しかし、追いつかなくて、貯水タンクは果てしなくできていて、巨大な石油コンビナートがズラーッと並んでいる感じで、いつ満杯になってもおかしくない状況だった。

 現場で作業員の皆さんとすれ違うと、パツキンの人もいれば、強面の人もいる。『下町ロケット』に出ていた立川談春さんのような銀行員的な人もいるし、『半沢直樹』に出ていたモロ師岡さんみたいな人もいる。顔がみんな個性的で、しかもすれ違うたびに挨拶してくれるので、みんな芸人に見えてくる。道路工事の現場より明るい感じだ。しかも、外国人労働者がいない。昭和の建設現場みたいだった。特に食堂では、みんなと目が合い、見つめ合ってしまったのだ。年齢が俺世代で、「あれ、総裁じゃないか?」「総裁が視察に来ているぞ」と、自民党総裁みたいな扱いの会話が背中越しに聞こえた。同じ場所で食事もしたのだが、これが大変おいしく、量も多い!しかもすべての定食が380円だ。毎日ここで食べたいくらいだった。

潜入取材の準備は万全

潜入取材の準備は万全

 いよいよ施設内の取材に入るための着替えをした。何重もの手袋、靴下、保冷材入りのベスト、全身を覆う作業服、長靴の装着の仕方を東電の皆さんが丁寧に教えてくれる。空間線量が低くなったということで、以前は顔もフルフェイスでガッチリとカバーしていたのだが、マスクとゴーグルだけになった。

 施設内に入ると、持ってきたガイガーカウンターが100μSvでビービー鳴り、高台の上から1号機から4号機まで見下ろすと、建屋付近で800μSvが250μSvまで下がったというが、かなり被爆する。施設内は綺麗に様変わりしていた。瓦礫はかなり撤去され、4号機では1536本もの燃料棒を抜くことができて、新築のビルのようになっている。ただ事故の本丸である1~3号機はどうなっているのかわからない状況だ。建屋内には入れなかったが1~3号機の前でも作業はしていて、限られた状況の中で、現場は奮闘している。このパワーをうまく活用できると思った。

 普通の解体作業現場も行ったことがあるけど、何か違うなぁと思ったのは、特別な場所で働いているという自負を感じたことだ。俺と同じ世代、宇宙戦艦ヤマト世代なのではないかと。放射能除去装置・コスモクリーナーをイスカンダルに求め、スターウォーズのようにデスラーと戦うという、熱くアニメで見てきたのを現実でやっている感じだ。そう考えながら、ヘルメットを返却すると、なぜか松本伊代と書いたヘルメットがある。やはり、同世代の何かを感じさせる。

マスコミに公開した福島第1原発施設内を取材

マスコミに公開した福島第1原発施設内を取材


 事故当時、3000人だった作業員が今は7000人だという。そのなかからは、内部告発!みたいな人も出るだろうけど、皆さんの話を堂々とモザイクなしで聞きたい。会報誌があるというが、大メディアでも取り上げてほしいものだ。

 『下町ロケット』的に言えば帝国重工と佃製作所が組んでやれるチャレンジが何かあるはずだ。原発の冷却には水冷だけでなく空冷のヘリウムで冷やす方法もある。1号機に関しては水で冷やしながら、2号機はヘリウムで空冷をやるとか、様々なアイデアを2011年の東電合同会見で当時の細野豪志内閣府特命担当大臣に質問した。既に事故でどこが破壊されているかわからない状況で、水で冷却をしていくということは、汚染水という2次被害がさらに拡大する可能性があったからだ。もちろん、ヘリウムの冷却も空気中に汚染物質が出る可能性もあるが、空気中の不純物を取り除く技術が確立していくと思っている。

福島第1原発小野明所長による会見も行われた会議室にて

福島第1原発小野明所長による会見も行われた会議室にて


 また今回の小野所長の記者会見では作業ロボットも含め、色々な技術が開発されているのだから、1〜3号機の3カ所それぞれで失敗を恐れずチャレンジしてもいいのではないか、世界の英知を結集する研究所を作ってもいいのではと質問させてもらった。

 今の焼却技術は大変なもので、排煙も吸着してきれいな状態で排出している。ちゃんと焼却炉を作って、除染した大型の黒袋も100分の1の大きさにするなど、できることはいっぱいあると、元GEで福島第1原発の開発にも携わったInternational Access Corporation(IAC)の上級原子力コンサルタントの佐藤暁さんにも聞いた。福島の社員わずか数人の会社が調査ロボットを実際に作っているのを見ている。まさに、『下町ロケット』の佃製作所だ。

 原発事故は空、海、土に、目に見えない放射能が広がる〝静かな非常時〟〝見えない非常時〟だ。しかも、長期にわたりジワジワくるので、非常時だけど、平常時みたいな意志決定システムになる。見えないから国民は不安で非常時感覚で冷静な議論ができない。なので、現場はチャレンジできる非常時意志決定システム、国民は平常時の冷静に見るシステムになることがベストだ。ぜひ、米国からも注目していてほしい。

大川興業 総裁 大川豊氏

大川興業 総裁 大川豊氏

Yutaka Ookawa■1962年2月14日東京生まれ。明治大学商学部に在学中、「ラブアタック」「プロポーズ大作戦」「パンチDEデート」などのテレビ番組に出演。83年、学ランのパフォーマンス集団「大川興業」を結成。ナンセンスな笑いを提供する一方で社会情勢や政治的な内容を取り入れた過激なパフォーマンスで人気となる。就職活動で153社の試験に落ち、85年に自ら大川興業株式会社を設立。自分で自分に内定を出し、代表取締役に就任した。テレビ、舞台を中心とした小劇団的な活動で全国ツアーを行い、時代を先取りするストーリー展開で世間を賑わす。週刊プレイボーイを始め多数連載。政財界人との対談や、北朝鮮、イラク、9.11直後のNYなど世界の現場にも足を運ぶ。大学時代から重ね続けている借金をネタに雑誌「ぴあ」に連載したコラム「金なら返せん!」が人気を博す。芸能事務所の代表取締役としては、江頭2:50や阿曽山大噴火などを世に送り出している。


2016年5月号掲載